訪問看護療養費における自己負担と支払の流れ

訪問看護療養費と自己負担

訪問看護を利用するためには、医療保険と介護保険の2種類の保険サービスがあることをご存じですか?医療保険は健康保険法、介護保険は介護保険法とそれぞれ違う法律で定められています。訪問看護もそれぞれの保険によって、対象となる利用者が異なります。もちろん算定方法も違うため、正しく把握しておかなければ適切なレセプト請求を行えません。しかし訪問看護を始めたばかりの人やこれから訪問看護で働きたいと考えている人にとって、違いを理解することはとても難しいことですよね。今回は訪問看護療養費の場合の自己負担についてお伝えします。しっかりチェックして、訪問看護の基礎知識を身につけましょう。

目次

訪問看護療養費とは

訪問看護療養費は訪問看護ステーションによる訪問看護を受けた際に、かかった費用について現物支給されるものです。居宅で療養している人がかかりつけ医師の指示にもとづいて訪問看護ステーションの訪問看護師から訪問看護を受けた場合、その費用が訪問看護療養費として現物給付されることが健康保険法で定められています。

(訪問看護療養費)
第八十八条 被保険者が、厚生労働大臣が指定する者(以下「指定訪問看護事業者」という。)から当該指定に係る訪問看護事業(疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)に対し、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者が行う療養上の世話又は必要な診療の補助(保険医療機関等又は介護保険法第八条第二十八項に規定する介護老人保健施設若しくは同条第二十九項に規定する介護医療院によるものを除く。以下「訪問看護」という。)を行う事業をいう。)を行う事業所により行われる訪問看護(以下「指定訪問看護」という。)を受けたときは、その指定訪問看護に要した費用について、訪問看護療養費を支給する。
(※引用元)健康保険法第88条

厚生労働省の基準と支給要件

訪問看護療養費が支給されるためには、厚生労働省が定めた基準と要件を満たしていなければなりません。
支給の対象者は上記の健康保険法第88条に該当している必要があります。つまり対象者は「疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者」です。また訪問看護療養費が支給されるのは、指定訪問看護事業者の訪問看護を受けた時です。指定訪問看護事業所とは介護保険法に基づき規定の設置基準・人員基準を満たした上で、各都道府県知事または市町村長から「指定居宅サービス事業者」の指定を受けた事業所を指します。

指定を受けていないと、訪問看護療養費の算定ができないので注意が必要です。介護保険法に基づく指定を受けると、健康保険法に基づく訪問看護事業の指定も受けたこととみなされるため医療保険での訪問看護も可能になります。

訪問看護療養費が支払われるまでの流れ

訪問看護を利用した際の訪問看護療養費が支払われるまでの流れは次のとおりです。

訪問看護療養費の仕組み

①利用者が保険者に保険料を毎月支払う
②訪問看護サービスを申し込み、訪問看護サービスを受ける
③利用者は訪問看護ステーションに請求された利用料(1~3割)を支払う
④訪問看護ステーションは保険者が委託している審査支払機関に請求をする
⑤審査支払機関は訪問看護ステーションに訪問看護療養費(7~9割)を支払う

 

利用者は自己負担額のみ支払い、残りの部分を訪問看護サービスとして受けるため、訪問看護療養費は現物給付となります。医療費の中に公費負担医療制度があります。医療費の全部または一部を国や自治体が負担する制度で、医療費助成制度の一つです。精神障害や難病、生活困窮者等の支援が必要な人が対象となります。公費負担医療制度を利用する際の自己負担割合は、全額公費負担や一部公費で残りは自己負担等さまざまです。利用者が公費負担医療制度の対象者であるかどうかと、自己負担割合がどれくらいになるかを確認しておきましょう。

保険と自己負担

訪問看護療養費が支給される場合は、医療保険で訪問看護を受けた時です。医療保険ですので、普段病院を受診した際と同じように自己負担額が発生します。自己負担額は次のようになります。

・未就学児 2割
・義務教育就学時~69歳まで 3割
・70歳以上75歳未満 2割 ※現役並みの所得がある人は3割
・75歳以上 1割 ※現役並みの所得がある人は3割

レセプト業務を行う際は、年齢や負担割合を把握しておくことが必要です。契約時に利用者の健康保険証のコピーを保管しておくと良いでしょう。また保険の有効期限切れにも気を付ける必要があります。

 

 対象となる年齢 

訪問看護療養費は医療保険ですので、基本的には全年齢が対象です。しかし、65歳以上で介護認定を受けている場合は、介護保険を使っての訪問看護が優先されるため注意が必要です。医療保険を使った訪問看護の対象者は、次のとおりです。

①40歳未満の方
②40~65歳未満の方
※条件 健康保険法第二条で定められている16特定疾病に該当しない場合、16特定疾病に該当する場合は介護保険を使用
③65歳以上の方
※条件 要支援・要介護に該当しない方、介護保険を利用しない方
④要介護・要支援の認定を受けた方
※条件 精神科訪問看護が必要な方(認知症を除く)、 病状の悪化等により特別訪問看護指示機関にある方、厚生労働大臣が定める疾病等(別表8)

介護保険を使用した際は、訪問看護療養費は算定できません。介護保険での算定を行ってください。

付加給付の支給

訪問看護療養費は、国で定められている法定給付です。加入している健康保険組合によっては、法定給付の他に付加給付が規定されていることもあります。付加給付はレセプトができてから給付金を算定する健康保険組合が多いので、訪問看護ステーションではそのまま医療保険で算定して構いません。付加給付の内容は健康保険組合によってさまざまですので、利用者から質問があった場合は保険組合に直接確認してもらうよう伝えることをお勧めします。

まとめ

今回は、医療保険における訪問看護療養費と自己負担についてお伝えしました。介護保険と医療保険では算定方法が全く違います。また、医療保険を使える対象者の種類等はさまざまで、自己負担額割合も利用者の状況によって変わってきます。訪問看護療養費についてしっかりと把握し、正しくレセプト請求を行えるようにしましょう。

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