訪問看護の入浴介助!訪問入浴との違いや注意点をまとめました

訪問看護の入浴介助!訪問入浴との違いや注意点をまとめました

訪問看護の役割の一つである療養上のお世話には、入浴の介助も含まれています。利用者が安全に入浴でき、身体の清潔を保て、精神面でも安らげる時間を提供したいですよね。今回は訪問看護の入浴介助について、訪問看護の入浴介助や訪問入浴との違い、入浴介助で注意するべきことを紹介していきます。

目次

訪問看護の入浴介助とは?

そもそも入浴を行う目的として挙げられるのは、清潔を保つ、リラクゼーション効果を得るといったものです。身体に何らかの障害がある方や認知機能が低下している方、入浴により症状が悪化する危険性がある方は、1人で入浴することが難しくなりがちです。入浴が難しくなると清潔が保てなかったり、抵抗力が弱まっている高齢者では尿路感染症などになってしまったりする恐れがあります。

また、身体を思うように動かせない利用者の場合は転倒するリスクや、1人では満足に身体を洗うことが難しいといったことが考えられ、これでは入浴によって爽快感を得たり、リラックスしたりといったことも困難になってしまうでしょう。訪問看護の入浴介助では、こうした方々が安心して入浴できるよう介助することを目指します。

どう違う?訪問入浴との違い

訪問看護の入浴介助!訪問入浴との違いや注意点をまとめました

ところで、訪問看護における入浴介助に関連してよく挙げられるものに、訪問入浴が挙げられます。訪問入浴は訪問看護と同様に介護保険制度内で利用できるサービスです。訪問看護の入浴介助は1人で利用者を介助することが多いでしょう。一方の訪問入浴は、利用者の自宅の浴槽は使用せずに、移動式の浴槽を自宅へ持ち込むことと、介護職員2人と看護師の3人で入浴介助を行う点が異なります。訪問入浴は要介護度1~5の方がサービス利用可能となっており、主に身体的な事情で自宅の浴槽で入浴ができない方が訪問入浴を利用します。

入浴介助が必要な利用者とは

では、訪問看護の入浴介助が必要なのは具体的にどのような方なのか見ていきましょう。

心臓に病気がある方

入浴を行うと心臓に負担がかかり、呼吸にも影響を及ぼすことがあります。そのため心臓病や呼吸器疾患を患っている方は特に注意が必要であり、看護師が介助を行う対象となります。主治医と連携を取り、心臓の状態や呼吸状態のアセスメントをしながら行うことで、異常の早期発見や万が一の場合における迅速な対応が可能です。こうした方の介助にあたる際は、心不全や呼吸困難時の対応、急変時の対応を学んでおくことをおすすめします。

立位や歩行が不安定な方

脳梗塞の後遺症や四肢切断などが原因で立位や歩行が不安定な方もいらっしゃいます。不安定な状態のまま1人で入浴を行うと転倒する危険性があり、狭い浴室内での転倒は頭部を打撲する可能性も高くなります。バリアフリーの住宅が増えてきましたが、昔ながらの浴槽(埋め込み式)の自宅もまだ多くあります。利用者の身体が安定するような介助方法を考え、介助しましょう。

認知機能の低下がみられる方

認知症を患っている方や高次機能障害を患っている方は身体が自由に動く方もいます。一方で、物の場所や危険な場所、衣類の着脱方法や入浴方法全般がわからなくなったりすることもあります。このような方の場合、身体的な介助は必要なくても、安全に入浴できるよう介助が必要だと言えるでしょう。加えて、介助の際は入浴にかかる動作の補助だけではなく、認知機能の変化や全身の皮膚の状態などにも目を配ることが望ましいでしょう。

リハビリ途中で動作に不安がある方

何らかの原因でリハビリが必要になった方は自宅での動作に不安を感じることもあります。そんなときは看護師が見守ることで、入浴における安心感を高めることができるでしょう。また生活の中で行うリハビリ(生活リハビリ)としても介入ができ、どの程度関節が動くようになっているのか、どのような動きが難しいかなどを観察できます。入浴は服の着脱や片足立ち、ボタンの留めはずしなどさまざまな動作が多く、生活で必要な動作のリハビリにも繋がることでしょう。

医療処置がある方

人工肛門(ストーマ)や表皮剥離(皮がはがれて傷になること)、在宅酸素療法など医療的なケアや管理が必要となる方も多くいらっしゃいます。酸素の管理やストーマ、表皮剥離の処置などは介護職員では行うことができません。そんなときに看護師が入浴介助を行えば、より効率よく処置を行えることが考えられます。また、異常を早期発見し、主治医へ早く報告することにも繋げられるでしょう。

入浴介助で注意するべきこと

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訪問看護として入浴介助で注意すべきことはどのようなことでしょうか。入浴介助で起こりやすい体調の変化や事故を見ていきましょう。

ヒートショック

ヒートショックは冬場に多く起こりやすいと考えられています。室温や湯の温度などの高低差が原因となり、血管の収縮と拡大を繰り返すことで、心臓に大きな負担を与えることにより、意識消失を起こすというものです。浴室は湿度も温度も高いですが、脱衣所へ出ると一気にそれらが下がります。この差により身体に大きなストレスが加わることで、自然と血管が細くなったり広がったりして、脳に酸素が回らず失神してしまうとされています。これらを防ぐには、まず脱衣所と浴室の温度をなるべく一緒にするようにしましょう。温度差を小さくし、適温に保つことで身体へのストレスを和らげる効果が期待できます。また浴室内で身体の水分をふき取ってから脱衣所に移動するとより効果的です。

溺水

溺水とはおぼれることをさします。湯船に入ったときに足を滑らせてパニックになり、おぼれてしまうケースや麻痺があり浮力で身体が安定せず、顔が湯に浸かっておぼれてしまうケースもあります。また急に意識がなくなり、沈んでしまうケースも考えられます。おぼれているところを発見したらすぐに身体を引き上げるか、持ち上がらない場合には顔を水面に出しましょう。慌てて湯船の栓を抜いてしまうと浮力が使えず、身体が持ち上がらなくなってしまうため注意が必要です。浴槽から引き上げたら意識の確認や呼吸、脈拍の確認をし、必要であれば救急隊の要請をします。

転倒

浴室内で転倒するケースも大いに考えられます。下肢の脱力で膝が折れてしまったり、浴槽をまたぐときに体勢が崩れたりなど、転倒に繋がる要因は至る所に存在していると言えます。手すりの位置や浴槽に入るまでの動線、利用者の入浴方法をあらかじめ確認しておき、予測できるリスクを把握しておきます。手すりが無ければ浴槽の淵を持つ、すぐに入浴チェアーへ座れるようにするなど物の配置を考慮しましょう。

脱水

高齢者は成人と比べて体内の水分量が少なくなり、また汗をかきにくく熱が身体にこもってしまう傾向にあります。体内の水分量が少ないと脱水、熱の発散ができなければ熱中症になってしまうリスクも上昇しますので注意が必要です。入浴前に水分補給をしておくことは脱水の予防になります。入浴後も一気に水分を補給するのではなく、時間をかけて飲んでもらうようにしましょう。

その他

以上のいずれも防ぐうえで、利用者から目を離さず、そばを離れないことが大切です。そのためには物品を前もって準備する、バイタルサイン測定をして状態を把握しておく、ならびに浴室の準備をあらかじめ整えることなどが重要となります。体調に異変が起きたときにどう行動するのかをあらかじめ決めておきましょう。

ケアにも役立つ!訪問看護専用電子カルテ『iBow』

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iBowは写真やファイルを紐づけできる「ファイル登録」機能を搭載しています。浴槽の出入り、身体を洗うこと、タオルで拭くこと、服を脱ぐこと、着ることなど入浴に関わる全ての動作はリハビリテーションとなります。そのため、「利用者それぞれのマニュアル」を「利用者ファイル」に登録することで入浴時の注意点、浴槽に入る手順などを登録することで言葉では伝えづらい情報も簡単に共有できて、誰が訪問しても判断に迷わず、利用者に一番適したケアを提供できます。

 

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まとめ

訪問看護の入浴介助では、訪問入浴と違って1人で利用者を介助することになります。何かしらの障害や疾患を抱えている方のため、細心の注意が必要になってきます。看護師が入浴介助を行ううえでは、入浴をすることで状態が悪化することを防ぐという目的に配慮するとともに、体調の急変が起きた際には適切なアセスメントと対応が求められると言えるでしょう。病院とは違い設備も整っていないため、利用者の状態をふまえて考えられるリスクには事前に備える必要があります。利用者の方が安心して入浴ができ、リラックスできる環境を整えましょう。

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