訪問看護における労働時間の適正化に向けての4つのポイント
「働き方改革」は国が推進している施策のうちの一つですが、慢性的な人手不足が深刻化している看護業界においても早急に取り組むべき課題であるといえます。また、2019年4月の労働安全衛生法改正によって、経営者はスタッフの労働時間を把握する義務あります。では労働時間とは何でしょう?今回は訪問看護の経営者に向けて、労働時間の定義と労働時間の適性化に向けての4つのポイントについて紹介します。
労働時間の定義とは?訪問看護における労働時間も把握しよう!
労働時間の定義
まず、労働時間の定義について確認していきましょう。労働時間とは、「使用者または監督者の下で労働に服しなければならない時間」のことです。厚生労働省は、労働時間について次のように定めています。
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労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間とは
※1日の勤務時間や休憩時間や休日以外に、「時間外労働協定」や「変形労働時間制」「フレックスタイム制」「みなし労働時間制」「年次有給休暇」についても定められています。
(※参考)厚生労働省「労働基準 労働時間・休日」
訪問看護における労働時間とは
訪問看護においてはステーション、利用者宅の相互間を移動する時間「移動時間」については、使用者が業務に従事するために必要な移動を命じ、その時間の自由利用がスタッフに保障されていないと認められる場合には、「労働時間」に該当します。一方で、スタッフの自宅からステーションへの通勤や退勤は労働時間には含まれませんので注意が必要です。
訪問看護の労働時間の実態と過剰労働により起こるリスクを知っておこう!
高齢化に拍車がかかる昨今、医療連携や地域包括ケアの充実化が促進され、医療提供の場が医療機関から在宅へと移行してきています。このような背景を受けて在宅看護のニーズが高まる一方で、訪問看護従事者数が十分に確保されていないことが問題となっています。訪問看護における労働時間の実態と、過剰労働により起こるリスクについて解説します。
訪問看護の労働時間の実態
2014年の※「訪問看護実態調査報告書」によると、フルタイム勤務(正社員)の訪問看護師の場合、1カ月間に81.9%のスタッフが超過勤務をしたことがわかっています。また、その平均超過勤務時間は13時間27分であり、超過勤務の業務内容の割合は「記録・報告書の作成」が69.2%と最も高く、次いで「緊急の訪問」が41.4%、「他職種・他機関との連絡調整」が39.8%となっています。この調査からわかるように、訪問看護師は記録作成や緊急訪問、24時間体制のオンコール対応による時間外労働を余儀なくされていることがわかります。
(※参考)公益社団法人 日本看護協会 医療政策部「2014 年 訪問看護実態調査 報告書 」
過剰労働により起こるリスクとは
過重労働を行うことにより次のような問題をおこす可能性があります。
■ さまざまな健康問題の一因となる可能性がある
過剰労働は、労働時間の身体的・精神的負荷を大きくするだけでなく、勤務時間外における睡眠時間・休養時間・家庭での時間・余暇時間の減少を引き起こし、疲労が蓄積されやすい状況を作り出してしまいます。そのような状態では、身体や精神の機能が障害されるため、あらゆる疾患のリスクを高めてしまうかもしれません。
■ 医療ミスが発生しやすくなる
過剰労働は、医療ミスの可能性までも高めてしまいます。人手不足が問題となっている看護業界ですが、訪問看護においても、利用者へのケアや新人看護師などの教育など幅広い業務を少人数でこなさなければならない状況に陥っています。その結果、スタッフ一人ひとりの身体的・精神的負荷が増大し、インシデントやアクシデントなど、医療ミスの発生リスクが高まってしまいます。
労働時間の適正化にむけての4つのポイント
過剰労働によるスタッフの健康障害や医療ミスなどの安全衛生上の問題を防ぐためには、労働時間管理適正化を図る必要があります。「超過勤務」や「休日出勤」などの過剰労働を減らすための労働時間管理のポイントは次の4つです。
業務の効率化を図る
労働時間管理適正化成功のカギを握るのが、業務の効率化です。医療業界において、業務の効率化に必要な取り組みの一つとして「ICT導入」が挙げられます。病院やクリニックなどでは「電子カルテ」の導入が進む中、訪問看護においては、記録物や他職種との連携に必要な書類などが「紙媒体」で運用されているところがまだまだ多い現状があります。利用者の状態管理や記録、他職種との連携など訪問看護業務を電子媒体でおこなうことができれば、記録や報告などにかかる時間を大幅に削減することができます。事務作業の効率アップや時間短縮により、スタッフの時間外勤務の短縮はもちろんのこと、利用者と関わる時間を十分に確保でき、ケアの質を向上することにも繋がります。
「直行直帰」できる体制を整える
訪問看護においておすすめしたい働き方改革の一つが、「直行直帰」スタイルです。現在、ほとんどの訪問看護スタッフが、ステーションを起点として業務に当たっていることでしょう。ステーションから利用者の自宅へ向かい、訪問終了後は記録や報告などのケア以外の業務をおこなうために再びステーションへ戻るという流れをとっているステーションがほとんどではないでしょうか。「直行直帰」スタイルでは、ステーションを起点とした行動をやめ、自宅から直接利用者宅へ訪問し、終了後はそのまま自宅へ退勤という流れを作ります。移動にかかる時間を削減でき、その分業務を充実させることができます。
適切な業務指導
看護業務にかかる時間は、スタッフの経験や知識などにより大きく左右されるのが事実です。スタッフのなかには、要領良くテキパキと仕事をこなすスタッフもいれば、じっくり丁寧に考えてからでないと先に進むことができないスタッフもいます。後者は、自ずと超過勤務時間が長くなりがちです。そのような場合でも、「仕事ができないから残業代は出しません」と、残業代を支給しないのは違法となります。超過勤務が多いスタッフに対しては、管理者が本人と共にその理由と業務内容を把握し、改善策を考えていく必要があります。業務の効率化や時間管理のコツを教育することも、労働時間管理適正化に繋がります。
勉強会や研修会は勤務時間内に実施する
勉強会や研修会は勤務時間内におこなうことが原則ですが、実際は勤務時間外におこなわれていることが多いようです。実際に、2008年に日本看護協会が実施した※「時間外勤務、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査」では、75.5%ものスタッフが「時間外の院内研修に参加した」と回答しており、その長さは月平均約3.8時間にも上る結果でした。さらに、回答者の93%は時間外勤務として申告していない、つまり残業手当が支給されていないという結果でした。
(※参考)公益社団法人 日本看護協会「看護職の働き方改革の推進」
管理者や上司に「勉強会だから」「研修会だから」と時間外での勉強会への参加を余儀なくされてしまっては、スタッフは出席を断りづらく、精神的にも負担となります。勉強会などへの参加を業務として命じる場合には、できる限り勤務時間内におこないましょう。やむを得ず勤務時間外の開催となる場合は、スタッフに必ず時間外勤務として申告させ、残業手当を適切に支給する必要があることを覚えておきましょう。
時間外労働をなくす訪問看護専用電子カルテ『iBow』
労働時間の適正化において訪問看護業務を効率良くおこなうことが必要です。そのためにもICTを活用してはいかがでしょうか?iBowを活用することで次のようなメリットがあります。
- タイムリーな記録による速やかな情報共有が可能
- 過去の記録や計画書などがどこにいても即座に確認できる
- 日々の訪問看護記録がiBowレセプトに連動するため、レセプト業務の効率化を図ることができる
- 記録~請求業務までのすべてをステーション以外の場所で完結できる
iBowでは、いつでも・どこでも簡単に必要な情報の確認や、各種記録・報告ができます。従来はステーションでしかおこなえなかった業務も、ステーション以外の場所で効率的におこなえるようになるため、事務処理の時間を大幅に短縮できるだけでなく、直行直帰スタイルの実現も可能となります。スタッフの負担も軽減されることでしょう。
> デモンストレーションでiBowの使用感を確認する
訪問看護の複雑な労働時間の管理にiBow KINTAI
勤務表やスケジュールの作成を手書きで行うと、勤務形態に合わせて作成する必要があり、時間がかかります。また、タイムカードを使用している場合、事務所での管理になるため、直行直帰ができない、オンコール対応での管理が難しい、など訪問看護の複雑な勤務の管理に悩んでいるステーションも多いのではないでしょうか。
訪問看護専用勤怠管理サービス「iBow KINTAI」なら、スタッフの出退勤や勤務状況を一括管理ができるため、勤怠の確認や勤務表がソフト内で作成できます。その日の出勤者と訪問スケジュールが連動しているため、日々のスケジュール作成も容易です。いつでもどこでもスタッフの勤務状況が確認できるので、打刻漏れの防止や、超過残業時間の把握も可能になります。打刻した時刻から残業時間、休日のオンコール出勤も含めた勤務時間の合計を自動で計算するので、給与計算もラクラクです。また、自宅や訪問先から、iPhoneやiPadを使って出退勤打刻ができるので直行直帰やテレワークにも便利です。
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※本サービスの一部について、特定の契約者に限り利用できる有料版があります。
※1事業所50人以上の場合は有料版となります。
まとめ
今回は、訪問看護における労働時間の実情と、働きやすい職場作りに必要な労働時間管理方法について紹介しました。訪問看護師の労働環境を改善するためには、人手不足を補うことももちろん重要ですが、離職者を増やさないためにも、業務の効率化や指導体制の見直しなどを図り、スタッフ一人ひとりの業務負担を軽減することが重要です。働き方改革の一環で、まずはiBowの導入を検討してみてはいかがでしょうか。また、労務管理をおこなう上で大切な労働時間の把握に関する「勤怠管理」の記事もあわせて読んでみてください。