訪問看護で新設 口腔連携強化加算とは? 2024年介護報酬改定
2024年度の訪問看護の介護報酬改定について、特に重要な項目についてピックアップし、数回に分けて詳しく解説します。今回は介護報酬で新設された「口腔連携強化加算」について、算定料や対象者、算定要件などをみてみましょう。
口腔ケア強化となる経緯
口腔内を正常・清潔な状態に保っておくことは高齢者の健康に密接に関連します。例えば、歯垢は細菌の塊であり、虫歯や歯周病の直接的な原因と言われています。それ以外にも歯垢内の細菌が関与していると思われる主な全身疾患として「感染性心内膜炎」「敗血症」「虚血性心疾患」「誤嚥性肺炎」などがあげられます。
こうしたことから、高齢者のADL/QOLの維持・改善を目的に、専門家による適切な口腔ケアの実践を報酬で評価する動きが近年強まっています。今回新設された口腔連携強化加算とは、歯科専門職と連携して利用者の口腔衛生状態や口腔機能の評価を行い、歯科医療機関やケアマネジャーへ情報提供をすることで算定できます。その新設に際しては、以下のような観点で議論が行われてきました。
- 医療・治療が必要な状態の高齢者でも、治療が行われていない現状がある
- 特に在宅療養者においては、治療が行われていないことが多い
- 訪問サービスや短期入所サービスは、口腔に問題がある利用者の把握や歯科医療機関との連携に関する評価がない。
- ケアマネジャーが利用者の口腔に関する情報提供を歯科医師にした割合は約3割。情報提供しなかった理由で最も多いのが、「歯科医師に伝えるべき情報を取得していないため」
- 歯科医師や歯科衛生士に相談しやすい環境があると、介護事業所側で口腔の健康状態を評価するアセスメントの実施が容易になる可能性があるとした報告があった
(要介護)口腔連携強化加算とは?
種類及び算定料
1回50単位(月1回まで算定可能)
単位数 | |
口腔連携強化加算 | 50単位/回 |
対象者
看護師やリハビリテーション専門職等から口腔の健康状態の評価を受けた利用者
算定要件
- 看護師等が実施した口腔の健康状態の評価結果について、利用者からの同意を得て歯科医療機関とケアマネジャーに情報提供している
- 診療報酬の「歯科点数表区分番号C000」に記載されている「歯科訪問診療科の算定実績」がある歯科医療機関の歯科医もしくは歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、訪問看護事業所からの職員の相談等に対応する体制を確保する。また、その旨を文章等で取り決めている
- 以下の3点のいずれにも該当していない
・他の介護事業所が同じ利用者に対して、口腔・栄養スクリーニング加算を算定している(栄養状態のスクリーニングを行ない、口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)を算定している場合は除く)
・指定居宅療養管理指導事業所が歯科医師・歯科衛生士が実施する居宅療養管理指導費を算定している。ただし、初回の居宅療養管理指導を行った月を除く
・他の介護事業所が同一利用者に対して口腔連携強化加算を算定している
(要支援)口腔連携強化加算とは?
種類及び算定料
1回50単位
単位数 | |
口腔連携強化加算 | 50単位/回 |
対象者
要介護口腔連携強化加算と同じ
留意点
届出
訪問看護における「口腔連携強化加算」の届出については、管轄する地方厚生(支)局に提出する必要があります。書類の詳細は地方厚生(支)局のウェブサイトや、厚生労働省の関連ガイドラインに記載されています。所属する訪問看護ステーションの所在地によって、管轄する地方厚生(支)局が異なりますのでご注意ください。
口腔の健康状態の評価
算定要件にもなっている「口腔の健康状態の評価」については、以下のように定められています。
- 必要に応じて歯科医療機関の歯科医師や歯科衛生士に、口腔の健康状態の評価方法や在宅歯科医療の提供等について相談する
- 評価した情報については、歯科医療機関および利用者を担当するケアマネジャーに提供する
- 歯科医療機関への情報提供は、利用者・家族の意向、利用者の担当ケアマネジャーの意見を踏まえて連携歯科医療機関・かかりつけ歯科医等に情報を提供する
口腔連携強化加算に係る口腔の健康状態の評価及び情報提供書は、厚生労働省のWebサイトからダウンロード可能です。 - 評価の際は以下の確認を行う
- 開口の状態
- 歯の汚れの有無
- 舌の汚れの有無
- 歯肉の汚れや出血の有無
- 奥歯の嚙み合わせ状態(左右とも)
- 「むせ」の有無
- 「ぶくぶくうがい」の状態
- 食物のため込みや残留の有無
※最後の2項目は、利用者の状態に応じて確認可能な場合に限る
参考資料:厚生労働省「介護保険最新情報vol.1217リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」P43~P45
- 通知「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」や、「入院中及び在宅等における療養中の患者に対する口腔の健康状態の確認に関する基本的な考え方」(日本歯科医学会)などを参考とする
- 必要に応じてケアマネジャーを通じて主治医にも情報提供等の必要な対応を行う
- 算定する事業所はサービス担当者会議等を活用の上決定し、口腔の健康状態の評価を継続実施する
電子カルテiBowは報酬改定にも対応
電子カルテ「iBow」は、令和6年度の介護・診療報酬改定に対応しています。訪問看護ステーションのニーズに応じた機能が搭載されており、日々の記録からレセプト作成までの業務を効率化します。報酬改定に伴う変更点やオンライン請求・資格確認に対応予定です。さらにiBowのカスタマーサポートは、システムの使い方だけでなく、加算や制度についての相談も受け付けているため、診療報酬改定直後でも安心して利用できます。
最後に
ここで紹介した報酬改定に関する各種情報は、厚生労働省がホームページ等で公開しています。これに加えて解釈通知なども適時発表されていますので、こまめにチェックし、常に最新の、正確な情報を得るようにしましょう。