介護業界最新動向18

介護業界最新動向18

本コラムでは、訪問看護業界の最新動向を取り上げます。今回から令和8年度の診療報酬改定に伴う訪問看護事業所経営への影響について考察します。

人材確保のための賃上げやDXを推進
2026年訪問看護の診療報酬改定解説

2026年2月13日、診療報酬改定を議論していた中央社会医療協議会(中医協)が2026年6月に実施予定の診療報酬改定案の答申を発表しました。今回の改定で特に訪問看護に関するテーマは大きく以下の4点に集約できます。

① 看護師を含めた人材不足への対応策としての賃上げの推進
② DXなどによる経営効率化の促進
③ 過剰訪問・囲い込みの抑制など、訪問看護の適正化
④ 医療機関との連携、地域における医療確保・地域包括ケアシステムの推進

これらの重点課題を踏まえ、今回の改定で具体的にどのような新設・変更が行われたのか、主なポイントを順に解説していきます。

 

物価対応料の新設

昨今の諸物価の高騰は、訪問看護事業に限らず経営上の大きな課題となっています。それに対応するため、今回の診療報酬改定では「物価対応料」が新設されます。訪問看護については、区分番号02を算定している利用者が対象の「訪問看護物価対応料1」と、区分番号04を算定している利用者が対象の「訪問看護物価対応料2」の2種類となります、また「1」はさらに月の初日訪問が対象の「イ」と、月の2日目以降が対象の「ロ」に分けられます。具体的な報酬額は以下の通りです。

区分番号02 訪問看護物価対応料1 イ.月の初日の訪問 60円
ロ.月の2日目以降の訪問 20円
区分番号04 訪問看護物価対応料2 20円

1件当たりの報酬額は決して多くはありませんが、利用者の状態などに関係なく全ての訪問に適用されますので、訪問件数が多い事業所にとって経営上のインパクトは大きいものになると思われます。また、訪問看護を含めた物価対応料については、物価の上昇に段階的に対応することを目的にしていますので、2027年9月以降は2倍に引き上げられる予定です。

DX推進を評価する加算の新設

DXなどによる経営効率化促進に向けた加算では「訪問看護医療情報連携加算」が新設されました。医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、ケアマネジャーなどがICTを用いて記録した診療情報を活用して、訪問看護事業所が計画的な訪問看護を実施した場合、月に1回限り1,000円が算定できます。

これは報酬増だけでなく、看護師をはじめとする職員の労務負担軽減や働き方改革にも寄与しますので、結果的に人材不足の解消につながることも期待できます。ただし、この加算は、既存の「在宅患者連携指導加算」を算定している月は算定対象となりません。どちらの多職種連携スタイルが自身の事業所に適しているのかなどといった点を、事前に判断しておく必要があると言えそうです。

オンライン診療をサポートする「訪問看護遠隔診療補助料」も新たに設けられました。夜間や休日に利用者の体調が急変した場合などは医師がすぐに駆け付けられないことも考えられます。そうした緊急事態に医師の指示の元で看護師が居宅を訪問し、タブレット端末などを通じて診療をリアルタイムで補助することで算定できます。報酬額は月1回限りで2,650円です。これまでは医療機関側で算定されていましたが、今回の改定で訪問看護事業所側の報酬として算定することが可能になりました。

機能強化型訪問看護管理療養費の引き上げ

訪問看護の適正化に関しては、訪問看護管理療養費の引き上げが大きなポイントと言えます。具体的には、月の初日の訪問の場合で機能強化型訪問看護管理療養費1は13,230円から13,730円に引き上げられます。同様に2や3も約3.5〜4%のアップとなります。また、新たに4の区分(9,000円)が新設されました。機能強化型訪問看護管理療養費4の算定要件は以下の通りです。

1、 常勤の保健師、助産師、看護師、准看護師の数が4以上
2、 機能強化型訪問看護管理療養費1の施設基準(1)のロを満たしている
※指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準第二条第一項に規定する看護師等のうち。6割以上が同項第一号に規定する看護職員である
3、 24時間対応体制加算を届けている
4、 別表七または八、及び精神障害を有する者のうち重点的な支援が必要な者への訪問看護について相当な実績がある
5、 退院時の共同指導及び主治医の指示に係る保険医療機関との連携について相当な実績がある
6、 地域保険医療機関、訪問看護ステーションまたは住民などに対する研修及び相談への対応や関係機関との連携について相当な実績を有する

また、月の2日目以降の訪問の場合に関しては、区分が大きく見直されました。これまでは単一建物居住者は「20人未満」「20人以上」の2区分でしたが、「20人未満」「20人以上49人以下」「50人以上」に細分化されました。さらに後者の2つについては、月当たりの訪問日数が「15日以下」「16日以上24日以下」「25日以上」の3つに細かく区分されました。

単一建物居住者数 月当たりの訪問日数 算定料
単一建物居住者(20人未満) 3,000円
単一建物居住者(20人以上49人以下) 15日以下 2,500円
16日以上、24日以下 2,300円
25日以上 2,200円
単一建物居住者(50人以上) 15日以下 2,400円
16日以上、24日以下 2,200円
25日以上 2,000円

 

新報酬では、単一建物20人未満の場合は3,000円ですが、単一建物50人以上・月25日以上訪問した場合は2,000円となります。高齢者住宅入居者などへの訪問回数が多い事業所にとっては、今後もそれを継続していくかなど、経営上重要な判断が求められることも考えられます。高齢者住宅入居者への訪問という点に関しては、③過剰訪問・囲い込みの抑制など、訪問看護の適正化の観点から、サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームに併設される訪問看護事業所を対象にした「包括型訪問看護療養費」という仕組みが新たに設けられました。これは今回も改定の中でも一番重要なポイントになると言えますので、次回のコラムで詳しく解説します。

なお、今回の答申で中医協は、訪問看護について「包括報酬方式」が新設されたことなどを踏まえ、訪問看護事業所の経営状況などの把握や今回の改定の検証を行った上で、評価のあり方について引き続き検討すること」と意見を述べています。改定により事業所の経営状況などに大きな変化が見られた場合には、2028年の診療報酬改定、もしくは2027年の介護報酬改定で大幅な見直しや変更が行われる可能性もあるという点で注意が必要です。

まとめ

今回の診療報酬改定は、ICT活用に対する評価や物価高騰に対する支援などポジティブの部分がある一方で、高齢者住宅などへの訪問についてはより実態に即した評価体系へと適正化されるなど、メリハリがはっきりしている印象です。ポジティブな部分を十分に享受できるように新たな基準に合わせた運営体制を再構築していく取り組みが、今後の経営においては重要なポイントになりそうです。

また、今回紹介したのは、あくまでも中医協が答申した報酬改定案であり、6月にこの通りに改定されることが確定しているわけではありません。今後も厚生労働省の発表をはじめとする最新情報を常にチェックするようにしましょう。

西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリー転向。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に新聞・会報誌・情報サイトでのインタビューやコラム執筆で活動中。
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