訪問看護の未来を見据えて:業界最新動向#9

訪問看護の未来を見据えて:業界最新動向#9

本コラムでは訪問看護業界に関わる最新の動向を探っていきます。今回のテーマは特別養護老人ホームでのDX化とその効果に関して取り上げます。

特別養護老人ホームの93%が介護ソフト導入 DX化による働き方改革は人材確保の必須条件に

2025年3月7日、特別養護老人ホームの人材確保に関する調査簿結果が発表されました。特別養護老人ホームでは常勤1名の看護職員の配置が義務付けられていますので、看護師の募集・採用活動で訪問看護事業所と競合する可能性もあります。今回の調査は看護職員に限定した話ではありませんが、特別養護老人ホームの人材確保状況や採用戦略を細かく分析することで、訪問看護の採用活動のヒントになることも多いかと思いますのでご紹介します。

まず、職員の充足状況については69.0%が「不足」と回答しています。職員不足への対応策(複数回答)では「業務の見直し・効率化」が58.9%(1~7級地の場合)で2位となっており、DX化を含めた働き方改革に力を入れている施設が多いことが分かります。

では、実際にICT機器類はどの程度導入されているのでしょうか。「介護ソフト」については92.8%が「導入」、3.6%が「導入を検討している」と回答しています。記録・請求関係業務については、ほぼデジタル化されていると言ってもいいでしょう。また、実際に介護ソフトを導入している特別養護老人ホームに、その効果を聞いたところ(複数回答)、最も多かったのは「職員の負担が減った」の28.3%。ついで「施設内で連携しやすくなった」の27.8%、「業務上のミスが減った」の11.6%、「ケアの質が上がった」の10.1%となっています。「効果があったとは言えない」は3%以下となっており、ほとんどが何らかの形でプラスの効果を実感していることが分かりました。

特に「職員の負担が減った」は、人材募集を行う上で「残業ゼロ」「仕事と家庭の両立」などといったキーワードとして打ち出すことができます。看護師が職場選びをする上での重要な判断材料になるでしょう。もちろんこれは訪問看護でも同様です。

今回は、ほかにも「タブレット・スマートフォン」「見守り機器」「インカム」、そして移乗介助や入浴支援など各種ロボットについての導入実態なども調査していますが、訪問看護の場合は、特別養護老人ホームなどの施設と違ってこれらの機器の多くは導入できません。それだけに、ソフトの導入など、できる部分については確実にデジタル化をして、他の訪問介護、さらには他のサービス種別の事業所との差別化ポイントを明確に打ち出していく必要があるのではないでしょうか。なお、この調査は2024年12月から2025年1月に、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人のうち3,709法人にWebを通じて実施したもので、835法人が回答しています。

まとめ

多くの特別養護老人ホームで介護ソフトなどICT機器の導入が一般的になっています。こうした「働き方改革」は看護師を含めた職員の募集・採用後の定着などの面で大きなプラスになります。看護師不足が全国的に深刻な中で、訪問看護でも人材確保に向けたDX化は不可欠となるでしょう。

 

西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリー転向。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に新聞・会報誌・情報サイトでのインタビューやコラム執筆で活動中。
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