訪問看護におけるハラスメント!利用者や家族からのハラスメントの対処方法

訪問看護におけるハラスメント!利用者や家族からのハラスメントの対処方法

ハラスメントは、発言や行動によって相手を不快な気持ちにさせる行為です。近年、訪問看護師が利用者やその家族から受ける暴力やハラスメントの被害が深刻化しています。訪問看護の現場は利用者の自宅が主なため、利用者や家族からハラスメントを受けやすく、訪問看護師が申告しなければハラスメントが発覚しにくい環境にあります。そこで訪問看護ステーションを運営する経営者・管理者は、現場でのハラスメントにはどのようなものがあるのかを把握し、対処方法について考え、スタッフが安心して働ける環境をつくることが大切です。事前に対策方法を考えておくことでいざという時にトラブルを最小限に抑えたり、予防策を立てることにも繋がるでしょう。

今回はハラスメントの概要利用者からハラスメントがあった場合の対処法について紹介します。

目次

まずは概要を知ろう!ハラスメントについて

ハラスメントとは、人に対する嫌がらせといった迷惑行為のことをいいます。セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなど、ハラスメントには様々な種類がありますが、共通するのは言動や行動などで相手に不快感や不利益を与えることです。

ハラスメントは受けた人がハラスメントと感じた場合に該当します。しかし、雇用管理上の問題として対応する必要があるのか、などは主観だけではなく、実際にどのような言動を受けたか、一定の客観性を持って判断する必要があります。男女の認識の違いによりハラスメントが生じている面もあり、一定の客観性を持って判断するためには、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とすることが適当です。

知っておきたい!ハラスメントの種類

ハラスメントの種類は、主に下記の13個です。

  • セクシュアルハラスメント
  • パワーハラスメント
  • マタニティハラスメント
  • モラルハラスメント
  • ジェンダーハラスメント
  • 終われハラスメント
  • ソーシャルメディアハラスメント
  • テクノロジーハラスメント
  • カラオケハラスメント
  • アルコールハラスメント
  • エイジハラスメント
  • スモークハラスメント
  • リストラハラスメント

 

一般的認知度の高いのが、性的嫌がらせを意味する「セクシュアルハラスメント」や職場の上下関係を利用した「パワーハラスメント」、妊娠や出産した女性に対して嫌がらせを意味する「マタニティハラスメント」、言葉や態度などで精神的に苦痛を与える「モラルハラスメント」があります。他にも近年注目されている男女の性に関する固定概念や、差別意識による嫌がらせ行為である「ジェンダーハラスメント」や、飲酒を強要する「アルコールハラスメント」、年齢による差別・偏見を行う「エイジハラスメント」、本人の意思を無視して煙草などの煙を吸わなければならない空間に同席させる「スモークハラスメント」など多くのハラスメントが存在するため、経営者は一通り頭に入れておく必要があるでしょう。

また、ネット社会の発展が影響したハラスメントもあり、ソーシャルメディアに職場の人間関係を持ち込み利用する「ソーシャルメディアハラスメント」やITの知識がない人に周りくどくIT用語で悪意ある言動を行う「テクノロジーハラスメント」など、一見ハラスメントと気づきにくいものもあるのでその点も注意する必要があります。

ハラスメントの類型

ハラスメントと判断するためには、厚生労働省によるハラスメントの類型で確かめることができます。どのような行為がハラスメントにあたるのか知っておくことで予防にもなります。
(参考:厚生労働省「ハラスメントの類型と種類」)

パワーハラスメントの6つの類型

パワーハラスメントには、下記の6つの類型があります。

身体的な攻撃

身体的な攻撃は、殴る・蹴るといった暴力です。また、相手に物を投げつける、殴るような行為によって相手を威嚇し従わせようとすることも

精神的な攻撃

精神的な攻撃は、人前で大げさに叱ったり人格を否定したりなどの言動で相手を追い詰める行為です。

人間関係からの切り離し

人間関係からの切り離しは、集団から孤立するよう仕向けることです。

過大な要求

能力以上の労働を強要する過大な要求を行うことです。

過小な要求

過大な要求とは逆に仕事を与えない、あるいは雑務のみを行わせる過小な要求を行うことです。

個の侵害

職場外にも関わらず行動を監視したり、業務上で知った個人情報を他者に暴露するなどの行為を示します。

セクシュアルハラスメントの2つの類型

セクシュアルハラスメントには対価型セクシュアルハラスメントと環境型セクシュアルハラスメントの2つの類型があります。

対価型セクシュアルハラスメント

対象者が不快に感じる性的言動に対して否定した際、対象者に解雇や降格、減給といった不当な扱いをする行為です。

環境型セクシュアルハラスメント

性的な言動により対象者の就業環境が不快なものとなり、業務の能力発揮に悪影響を与えてしまうことを指します。例えば、一度セクハラの被害を受けると、また同じことをされるという不安が強くなり、就業意欲が低下してしまうことがこれに当たります。

マタニティハラスメントの2つの類型

マタニティハラスメントには、制度等の利用への嫌がらせ型と状態への嫌がらせ型の2つの類型があります。

制度等の利用への嫌がらせ型

不当な解雇や育児休暇などの制度の利用を阻害することをいいます。例えば、産休の取得について上司に相談したところ、「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言われたり、育児休業の取得について上司に相談したところ、「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」と言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になっている場合は制度等の利用への嫌がらせ型となります。

状態への嫌がらせ型

状態への嫌がらせ型は、妊娠や出産を理由に不当な解雇等の扱いや嫌がらせをすることを指します。 上司から「妊婦はいつ休むか分からないから、仕事は任せられない」と雑用ばかりさせられている、同僚から「こんな忙しい時期に妊娠するなんて信じられない」と繰り返し言われる、などは状態への嫌がらせ型に当たります。

特に注意!訪問看護で多いハラスメントとは?

訪問看護におけるハラスメント!利用者や家族からのハラスメントの対処方法

訪問看護の場合、利用者の自宅で看護を提供します。利用者のプライベートな空間に訪問看護師が出向く形になるため、ハラスメントが起こりやすい環境でもあります。訪問看護の現場ではどのようなハラスメントが多いのでしょうか?

身体的暴力

身体的暴力はなんと45.4%の人が受けたことがあるハラスメントとして回答しています。具体的にはコップを投げつけられる、手を払いのけられるといったものから蹴られる、叩かれる、つねられるとダイレクトな暴力があります。さらには首を絞める、服を引きちぎるといったケースもあります。
(参考:厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」)

精神的暴力

精神的暴力は61.8%の人が受けたことがあると回答しているハラスメントです。(参考:厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」)

具体的には大声を発する、怒鳴ると言った声で威嚇するものがあります。また、威圧的な態度で文句を言う、理不尽なサービスの要求などのクレームもあります。さらには土下座の強要や支払料金を床に並べ拾わせるなどの精神的暴力があります。

セクシュアルハラスメント

セクシュアルハラスメントは53.5%の人が受けたことがあるハラスメントとして回答していることが分かっています。(参考:厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」)

具体的には不必要に触る、抱きしめるといったものから、性的な話を持ち出す、卑猥な言動を行う、下半身を丸出しにして見せるという行為があります。

事前に把握しておこう!訪問看護で行うべき対策とは?

訪問看護におけるハラスメント!利用者や家族からのハラスメントの対処方法

訪問看護師に対するハラスメントは未然に防がなければなりません。しかし具体的な対策を知らないという管理者もいます。ここからは、どのような対策が効果的なのか見ていきましょう。

対策内容の公開

ハラスメントや暴力が起こる前に、被害に対しての対策内容を予め公開しておきましょう。どのような対応を行うのか契約書や重要事項説明書に対応内容を明記し、スタッフだけでなく利用者にも周知しておくことが重要です。

研修の開催

ハラスメントや暴力への対策の知識を持つことは、ハラスメントを受けた際の対応に役立ちます。またスタッフ間で差異なく知識を共有するために、研修を開催することが効果的です。研修内容には知識の得ることはもちろん、シミュレーションなども行うことができるため、実際のハラスメント発生時の予行練習を行うことも可能です。

複数人で対応

病院やケアマネージャーからの情報を得て、必要があれば2名で訪問看護を行うことも効果的です。1対1の場面ではハラスメントが起こりやすいですが2人で対応することでハラスメントの予防・被害を抑えることに繋がります。

情報把握

利用者のサマリーなどから得られる情報だけでなく、現在訪問看護師がどの利用者のもとに訪問しているか、訪問時間はどのくらいかなど把握しておくことも大切です。普段の行動を把握しておくで、異変を察知しやすくなります。

情報をきちんと管理しよう!訪問看護専用電子カルテ『iBow』

訪問看護におけるハラスメント!利用者や家族からのハラスメントの対処方法

訪問看護の場ではハラスメントを受けたことがあると回答した人が5割以上いることが分かっています。どのようなハラスメントを受けたのかといった詳細な情報は、後の対策や対処方法を実施する際に大切な資料となります。訪問看護専用電子カルテ『iBow』を利用すればタイムリーに記録をすることができるため、利用者とどのような話をし、どのような言動を受けたのか詳細に記録を残すことができます。

また、ネットワークで他の端末と繋がっているため、ハラスメント発生時、管理者はすぐに詳細な情報を把握することができます。詳細な情報の把握は、次にどのような行動を取ればいいのかにも繋がるためとても重要です。iBowを利用することで「報告、連絡、相談」の円滑化にもなり、ハラスメントの予防、対処に効果的です。

 

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まとめ

今回はハラスメントの概要とハラスメント発生時の対応について紹介しました。訪問看護の現場は利用者の自宅が主なため、利用者や家族からハラスメントを受けやすく、訪問看護師が申告しなければハラスメントが発覚しにくい環境にあります。ハラスメントを完全になくすことは難しいかもしれませんが、いざという時のためにもハラスメントの知識と対処法について確認しておきましょう。

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