訪問看護の同一建物減算(集合住宅減算)2024年度 報酬改定
2024年度の訪問看護の報酬改定について、特に重要な項目についてピックアップし、数回に分けて詳しく解説します。今回は訪問看護事業所と同一の建物に居住する利用者に対してサービス提供をした場合の報酬について見ていきましょう。介護保険では減算対象になるので注意が必要です。
同一敷地内建物等とは?
事業所と一体的な建築物、または同一敷地内や隣接する敷地にある効率的なサービス提供が可能な建物を指します。例えば建物の1階部分が事業所である場合や、事業所とサービス提供が可能な建物が渡り廊下などでつながっている場合などがこれにあたります。また、隣接する敷地に関しては同敷地内にある別当の建物や幅の狭い道路を挟んで隣接する建物などがこれにあたります。
【介護保険】同一建物減算(集合住宅減算)とは?
訪問看護ステーションと同じ敷地内にある建物や、多数の利用者が居住する集合住宅への訪問看護の提供については、看護師等の移動時間が短くて済むので効率が良くなります。介護サービスにおける介護保険給付の公平性を確保するための重要な制度となり、2024年の介護報酬改定では同一建物への訪問に関しては減算となりました。
種類及び単位数
下記減算要件の①、②に該当する場合は90/100、③に該当する場合は85/100
種類 | 単位数 |
① 訪問看護事業所と同一敷地内以外にある建物で、1月当たり20人の利用者が居住する建物の場合 | 90/100 |
② 訪問看護事業所と同一敷地内にある建物の居住者にサービス提供する場合で、下記③に該当しない場合 | 90/100 |
③ 上記②のうち、1月当たりの利用者が50名以上居住する建物の場合 | 85/100 |
種類及び単位対象者
- 事業所と同一敷地内に居住する利用者
- 20人以上利用者が居住する集合住宅等に居住する利用者
減算要件
1 訪問看護事業所と同一敷地内以外にある建物で、1月当たり20人の利用者が居住する集合住宅等の居住者にサービス提供する場合
2 訪問看護事業所と同一敷地内にある建物の居住者にサービス提供する場合で、下記③3に該当しない場合
3 上記②2のうち、1月当たりの利用者が50名以上居住する建物の場合
※訪問看護事業所と同じまたは隣接する敷地内にある建物、訪問看護事業所と同じ建物が「同一敷地」の概念に該当します。ただし、広大な敷地に複数の建物が点在しているような場合や、隣接する敷地であっても道路や河川などで隔たりがあって迂回しないと移動できない場合などは、結果的にサービスの効率化につながらないため、同一敷地内とはみなされず、減算の対象にはならないケースもあります。
留意点
① 減算対象となる建物の居住部分を運営する法人と、訪問看護事業所を運営する法人が別の場合でも減算になります。
② 2018年度より、従来の養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に加えて一般の公営住宅やマンションなども減算対象となっています。
③ 減算を適用する場合は、減算前の単位数で支給限度基準額の算定を行ないます。
【介護予防】同一建物減算(集合住宅減算)とは?
種類及び単位数
【介護保険】同一建物減算(集合住宅減算)と同様
種類及び単位対象者
【介護保険】同一建物減算(集合住宅減算)と同様
減算要件
【介護保険】同一建物減算(集合住宅減算)と同様
留意点
【介護保険】同一建物減算(集合住宅減算)と同様
【医療保険】同一建物居住者の基本療養費
医療保険における訪問看護では、同一建物居住者に対する訪問看護と、同一建物居住者以外に対する訪問看護では、算定する基本療養費の種類が異なります。同一建物居住者に対する基本療養費は下記の表の通りです。
基本療養費の種類 | 対象人数・回数・提供時間 | 算定料 |
訪問看護基本療養費(Ⅱ)イ | 同一日に2人・週3日目まで | 5,550円/1日 |
同一日に2人・週4日目以降 | 6,550円/1日 | |
同一日に3人以上・週3日目まで | 2,780円/1日 | |
同一日に3人以上・週4日目以降 | 3,280円/1日 | |
訪問看護基本療養費(Ⅱ)ロ |
同一日に2人・週3日目まで | 5,050円/1日 |
同一日に2人・週4日目以降 | 6,050円/1日 | |
同一日に3人以上・週3日目まで | 2,530円/1日 | |
同一日に3人以上・週4日目以降 | 3,030円/1日 | |
精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)イ |
同一日に2人・週3日目まで・30分未満 | 4,250円/1日 |
同一日に2人・週3日目まで・30分以上 | 5,550円/1日 | |
同一日に2人・週4日目以上・30分未満 | 5,100円/1日 | |
同一日に2人・週4日目以上・30分以上 | 6,550円/1日 | |
同一日に3人以上・週3日目まで・30分未満 | 2,130円/1日 | |
同一日に3人以上・週3日目まで・30分以上 | 2,780円/1日 | |
同一日に3人以上・週4日目以上・30分未満 | 2,550円/1日 | |
同一日に3人以上・週4日目以上・30分以上 | 3,280円/1日 | |
精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)ロ |
同一日に2人・週3日目まで・30分未満 | 3,870円/1日 |
同一日に2人・週3日目まで・30分以上 | 5,050円/1日 | |
同一日に2人・週4日目以上・30分未満 | 4,720円/1日 | |
同一日に2人・週4日目以上・30分以上 | 6,050円/1日 | |
同一日に3人以上・週3日目まで・30分未満 | 1,940円/1日 | |
同一日に3人以上・週3日目まで・30分以上 | 2,530円/1日 | |
同一日に3人以上・週4日目以上・30分未満 | 2,360円/1日 | |
同一日に3人以上・週4日目以上・30分以上 | 3,030円/1日 |
同一建物減算の背景
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅といった、住まいと介護を一体的に提供しない高齢者住宅では、ケアマネジャーがケアプランに組み込む介護事業所を自由に選択できることになっています。例えば「それまで使っていた訪問看護事業所を入居後も継続して利用する」ことも可能です。しかし、実際には、入居後は住宅運営者自身が手がける介護事業所や、関係の深い介護事業所のサービスの利用を求められるケースが見受けられ、「囲い込み」などと呼ばれていました。こうした囲い込みは、介護保険制度の基本的な考え方に反するだけでなく、必要以上のサービスの提供など不適切なケアプランの作成につながる可能性があります。こうした観点から、囲い込みを防ぐために訪問看護をはじめ、訪問介護や通所介護などに対して「同一建物減算」の考え方が導入され、報酬改定の度に対象範囲の拡大などが行なわれてきました。近年、高齢者住宅の中にはターミナル期の人や特定の疾患患者を入居対象とした「ホスピス住宅」などと呼ばれる物件が増えており、高い人気を博しています。こうした住宅では、訪問看護との密な連携が欠かせませんが、今後の同一建物減算の動向によってはビジネスモデルの見直しを求められる可能性もありますので、注意が必要です。
電子カルテiBowは報酬改定にも対応
電子カルテ「iBow」は、令和6年度の介護・診療報酬改定に対応しています。訪問看護ステーションのニーズに応じた機能が搭載されており、日々の記録からレセプト作成までの業務を効率化します。報酬改定に伴う変更点やオンライン請求・資格確認に対応予定です。さらにiBowのカスタマーサポートは、システムの使い方だけでなく、加算や制度についての相談も受け付けているため、診療報酬改定直後でも安心して利用できます。
最後に
ここで紹介した報酬改定に関する各種情報は、厚生労働省がホームページ等で公開しています。これに加えて解釈通知なども適時発表されていますので、こまめにチェックし、常に最新の、正確な情報を得るようにしましょう。