2024年度訪問看護の報酬改定 24時間対応体制加算
2024年度の訪問看護の介護報酬・診療報酬改定について、特に重要と思われる項目をいくつかピックアップし、数回に分けて詳しく解説します。今回は報酬改定で二区分化された「24時間対応体制加算」の対象者や算定要件などについて取り上げていきます。
24時間対応体制加算(医療保険)
種類及び算定料
利用者やその家族等からの電話等による連絡・相談に常時対応でき、必要に応じて緊急対応を行なえる体制の構築を評価するのが「24時間対応体制加算」で、月に1回まで算定できます。算定料はこれまで月1回6,400円でしたが、2024年度の診療報酬改定により24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取り組みを行っている場合に算定できるイ(6,800円)と、それ以外の場合が対象のロ(6,520円)の2区分となりました。
イ(月1回限り6,800円) | 24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取り組みを行っている場合 |
ロ(月1回限り6,520円) | 上記以外の場合 |
対象者
全ての人が対象となります
算定要件
まず、24時間対応体制加算の算定要件は以下の通りです。
- 利用者やその家族から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制の構築
- 必要に応じて緊急時訪問看護を行う体制の構築
- 地方厚生(支)局長に届出を行っている
- 訪問看護ステーションの体制について利用者に説明し、同意を得ている
- 利用者への説明に当たっては、訪問看護ステーションの名称・所在地・電話番号・時間外/緊急時の連絡方法について記載した文書を交付
- 利用者・家族からの連絡・相談に応じた場合や、緊急訪問看護を行った場合には、訪問看護記録書にその日時や内容、対応状況について記録
さらにイ(月1回限り6,800円)を算定する場合には、下記の1~6のうち、1または2を含む2つ以上の取り組みを行う必要があります。
- 夜間対応した翌日の勤務間隔を確保
- 夜間対応に関わる勤務の連続回数が2回まで
- 夜間対応後の暦日の休日を確保
- 夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫
- ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽
- 電話等による連絡・相談を担当する者への支援体制確保
算定に際しての留意点
算定に際しては、以下の点に注意してださい。まず、この加算は1人の利用者に対して、1つの訪問看護ステーションだけが算定可能です。他の訪問看護ステーションから算定可能な状況で訪問看護を受けていないか確認しましょう。次に、1人の利用者に対して、介護保険の緊急時訪問介護加算と同じ月に算定することはできません。他の訪問介護ステーションから緊急時訪問介護加算を算定する訪問看護を受けていないかどうかも要確認です。そして、医療資源の少ない地域では、2つの訪問看護ステーションが連携することで加算要件を満たす形で届出をするケースもあります。しかし、この場合には1つの訪問看護ステーションでのみ算定が可能です。
24時間対応体制加算に関するQ&A
厚生労働省から、加算について以下のようなQ&Aが発出されています。
(引用元:厚生労働省|疑義解釈資料の送付について(その1)訪看―3~訪看―5|)
問11 24時間対応体制加算の24時間対応体制に係る連絡相談に支障がない体制を構築している場合における、電話等による連絡及び相談に対応する際のマニュアルについて、①相談内容に応じた電話対応の方法及び流れ、②利用者の体調や看護・ケアの方法など看護に関する意見を求められた場合の看護師等への連絡方法、③連絡相談に関する記録方法、看護師等以外の職員への情報共有方法等を記載することとされているが、この3点のみ記載すればよいのか |
回答.「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和6年3月5日保発0305第12号)で示した①から③までは、マニュアルに最低限記載すべき事項であり、訪問看護ステーションにおいて必要な事項を適宜記載すること |
問12 24時間対応体制加算の24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組の「夜間対応」について、利用者又はその家族等からの訪問日時の変更に係る連絡や利用者負担額の支払いに関する問合せ等の事務的な内容の電話連絡は含まれるか |
回答.含まれない |
問13 24時間対応体制加算の24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組のうち「夜間対応した翌日の勤務間隔の確保」とは、具体的にはどのような取組が該当するか |
回答.例えば、夜間対応した職員の翌日の勤務開始時刻の調整を行うこと等が考えられる。勤務間隔の確保にあたっては、「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)(平成20年厚生労働省告示第108号)等を参考に、従業者の通勤時間、交替制勤務等の勤務形態や勤務実態等を十分に考慮し、仕事と生活の両立が可能な実行性ある休息が確保されるよう配慮すること |
問14 24 時間対応体制加算の24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組の「夜間対応」は、「当該訪問看護ステーションの運営規程に定める営業日及び営業時間以外における必要時の緊急時訪問看護や、利用者や家族等からの電話連絡を受けて当該者への指導を行った場合」とされており、また、「翌日とは、営業日及び営業時間外の対応の終了時刻を含む日をいう」とされているが、例えば、勤務時間割表等では営業時間外から翌日の営業開始時間までの対応に備えている場合であって、「夜間対応」をしたが当該夜間対応が日付を越えずに終了し、その後夜間対応がなかった場合は、どのように取り扱えばよいか。 |
回答.夜間(午後6時から午後10時まで)、深夜(午後10時から午前6時まで)の時間帯に夜間対応を行った場合は、対応が終了した時間にかかわらず、営業時間外の業務を開始した日の翌日の勤務間隔の調整を行う必要がある |
問15 24 時間対応体制加算の24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組の「夜間対応」について、「翌日とは、営業日及び営業時間外の対応の終了時刻を含む日をいう」とされているが、対応の終了時刻は残業時間を含めた終了時刻を指すのか。それとも残業時間に関わらず勤務表に掲げる終了時刻を指すのか |
回答.残業時間を含めた終了時刻を指す |
問16 24 時間対応体制加算の24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組のうち、「訪問看護師の夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫」とは、具体的にどのような取組が該当するか。 |
回答.例えば、夜勤交代制、早出や遅出等を組み合わせた勤務体制の導入などが考えられる。 |
問17 24 時間対応体制加算の時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組の「夜間対応」について、「原則として当該訪問事業所の運営規程に定める営業日及び営業時間以外における必要時の緊急時訪問看護や、利用者や家族等からの電話連絡及び当該者への指導等を行った場合等」とされているが、運営規程において24時間365日を営業日及び営業時間として定めている場合はどのように取り扱えばよいか |
回答.24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組を行っている場合については、持続可能な24時間対応体制の確保を推進するために、看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制が整備されていることを評価するものである。夜間・早朝の訪問や深夜の訪問に係る加算における夜間(午後6時から午後10時まで)、深夜(午後10時から午前6時まで)、早朝(午前6時から午前8時)に計画的な訪問看護等の提供をしている場合を夜間対応とみなした上で、24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組を行っている場合には当該加算を算定して差し支えない |
問18 24 時間対応体制加算の24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組のうち、「夜間対応に係る勤務の連続回数が2連続(2回)まで」について、連絡相談を担当する者の急病等により、やむを得ず夜間対応が3連続以上となってしまった場合、直ちに厚生(支)局に届出をし直す必要はあるか。 |
回答.夜間対応に係る連続勤務が3連続以上となった日を含む、1か月間の勤務時間割表等上の営業時間外に従事する連絡相談を担当する者の各勤務のうち、やむを得ない理由により当該項目を満たさない勤務が5%以内の場合は、当該項目の要件を満たしているものとみなす。なお、当該勤務時間割表等上の営業時間外について、運営規程において24時間365日を営業日及び営業時間として定めている訪問看護ステーションにおける取扱いは問7を参照されたい。 |
看護業務の負担軽減の取り組みの背景とは?
今回、こうした改定が行われた背景には、今後高齢化がさらに進展し、医療・介護ニーズが増大・多様化する中で、訪問看護については「質」と「量」双方の充実が必要との考えからです。これまでの中央社会保険医療協議会などの議論の中でも、一部の訪問看護ステーションについて「24時間対応に消極的」「医療ニーズが高く特別な管理を必要とする者に対応していない」「スタッフの多くをリハビリテーション専門職が占め、日中に軽度者への訪問リハビリ提供が業務の中心になっている」など問題視する意見がありました。また、24時間・365日対応、医療ニーズの高い利用者への対応を行っている訪問看護ステーションでは「看護職員の精神的・身体的負担の大きさ」「夜間・休日対応が可能な看護職員の不足」などの問題が指摘されていました。
こうした中で、訪問看護ステーションについては、24時間対応など質の高いところをより評価する方向性が今回の改定では示されたと言えます。また、24時間対応のためにはそれを支える看護職員の負担軽減が急務であることから、そこをより評価する形となりました。
電子カルテiBowは報酬改定にも対応
電子カルテ「iBow」は、令和6年度の介護・診療報酬改定に対応しています。訪問看護ステーションのニーズに応じた機能が搭載されており、日々の記録からレセプト作成までの業務を効率化します。報酬改定に伴う変更点やオンライン請求・資格確認に対応予定です。さらにiBowのカスタマーサポートは、システムの使い方だけでなく、加算や制度についての相談も受け付けているため、診療報酬改定直後でも安心して利用できます。
最後に
ここで紹介した報酬改定に関する各種情報は、厚生労働省がホームページ等で公開しています。これに加えて解釈通知なども適時発表されていますので、こまめにチェックし、常に最新の正確な情報を得るようにしましょう。