訪問看護と労務~入社時に提示する労働条件とは?~

訪問看護労働条件

 

新しい職員を採用する際に、労働条件を提示することは企業の義務です。訪問看護ステーションの開業が初めての方や、今後開業を検討している方にとって、具体的にはどんなことを提示すればよいのか、ご存知の方は少ないのではないでしょうか。

今回は、訪問看護ステーション開業が初めての方や、今後開業を検討している方に向けて、人材を採用する時に提示しなければならない労働条件について、多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長・シニアフェロー/公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタントと様々な分野でご活躍されている幸田 千栄子 様に解説いただきます。

労働条件の明示について

労働基準法第15条第1項には、「使⽤者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃⾦、労働時間その他の労働条件を明⽰しなければならない。」と規定されています。労働契約締結の際の労働条件の明示は、正社員のみならず、契約社員(期間の定めがある労働契約)やパート・アルバイト従業員の雇入れに際しても当然必要となります。明⽰すべき事項は労働基準法施⾏規則第15条第1項に規定されております。
>(※参考)厚生省令第二十三号 労働基準法施行規則

1、労働契約の期間

2、就業場所、従業すべき業務に関する事項

3、始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休⽇、休暇労働者を⼆組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項

4、賃⾦(退職⼿当及び臨時に⽀払われる賃⾦等を除く)の決定、計算及び⽀払いの⽅法、賃⾦の締切り及び⽀払の時期、昇給に関する事項

5、退職に関する事項(解雇事由を含む)

6、退職⼿当の定めが適⽤される労働者の範囲、退職⼿当の決定、計算及び⽀払いの⽅法、退職⼿当の⽀払いの時期

7、臨時に⽀払われる賃⾦(退職⼿当除く)賞与及びこれらに準ずる賃⾦、最低賃⾦額に関する事項

8、労働者に負担させるべき⾷費、作業⽤品その他に関する事項

9、安全及び衛⽣に関する事項

10、職業訓練(研修など)に関する事項災害補償、

11、災害補償、業務外傷病扶助に関する事項

12、表彰及び制裁に関する事項

13、休職に関する事項

について明⽰しなければなりません。また、これらの内1~5(4の内、昇給に関する事項を除く)については書⾯の交付により明⽰しなければなりません。1〜5を記載した労働条件通知書の雛形を⽤意しておくことをお薦めします。⼜、昇給と6以降については、⼝頭でも良いことになっていますが、採⽤した⽅が仕事をし始めて、改めて感じたり疑問に思ったりすることも出てくることもあるかと思いますので、実際を正直に説明することが⼤切です。この時点で納得して⼊社いただくことが、離職防⽌になります。
>(※参考)厚生労働省 労働条件通知書

訪問看護ステーションの人員基準

訪問看護ステーションを開業する際、⼈員基準として通常型では、保健師、看護師⼜は准看護師2.5名以上が必要であり、1名は常勤管理者でなければなりません。1.5名はパート職員でも可能です。採⽤時働く時間を契約する際には、常勤換算(勤務延べ時間数を事業所の⼀般常勤職員の所定労働時間で割って、パート職員の⼈数を⼀般常勤職員の⼈数に換算した数値)します。

今後の仕事量の⾒通しを加味して決定することをオススメします。尚、雇⽤契約書に上記の明⽰すべき事項が記載されていれば雇⽤契約書兼労働条件通知書となります。

 

幸田 千栄子 様

多摩大学医療・介護ソリューション研究所 副所長・シニアフェロー
公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタント

輸送用機器メーカーにて人事・人事企画・採用・教育・女性活躍推進・秘書などに従事。2000年公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了し、公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。2009年5月から1年間、サービス産業生産性協議会スタッフとしてコンサルタントと平行して任にあたり、サービス産業の生産性向上PJに参画すると同時に顧客満足度・従業員満足度調査開発・設計を行う。

 

今回は、入社時に提示する労働条件について解説いただきました。入社時に労働条件の理解にズレがあると、後々離職に繋がることにもなりかねません。新しい職員を採用する際は、求人票を含む労働条件通知書の記載内容に、漏れがないかをしっかりと確認しましょう。

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