訪問看護と労務~男性の育児休業が取りやすくなる~
国として労働力の確保・維持を図る手段の1つとして、働き続ける女性を増やすことと同時に、男性育休の取得促進が必要とされています。今回は男性の育児休業について多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長・シニアフェロー/公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタントと様々な分野でご活躍されている幸田 千栄子 様に紹介いただきます。
女性の育児休業取得は83%と高いものの、男性は7.4%と依然として低い数字にとどまっています。かつ、男性の育児休業の取得日数は、8割が1ヶ月未満となっています。そこで、育児休業を取りやすくすることを目的として育児休業法が改正されました。
1. 育児休業改正法のポイント
(1)出産時の育児休業を新設(2022年10月1日施行予定)
男性版産休と言われています。子どもの出生後8週間以内に4週間までの育児休業を取得できます。また、この4週間を2回に分けて取得することが可能です。
(2)休業の申し出が2週間前までに(2022年10月1日施行予定)
従来は1ヶ月前までに申し出をしなければなりませんでしたが、2週間前となりました。
(3)育児休業が2回に分けて取得可(2022年10月1日施行予定)
育児休業を2回に分けて取得できるようになります。出産時の育児休業と合わせると4回に分割して取得できます。
(4)育児休業制度の周知や個別の取得意思の確認義務化(2022年4月施行)
配偶者の妊娠・出産を申し出た社員に対して、育児休業制度を説明周知し、個別に取得するかどうかの意思を確認することが義務になります。
2. 取得しやすくするには
性が育児休業を取得できない理由は、職場が取得しづらい雰囲気だからと、会社や上司・職場の理解がなかったから、という理由が上位に上がっています。これは、女性の育児休業が始まった時の、取得しにくい理由と同じです。男性・女性にかかわらず会社や上司・同僚の理解がないと休めないのです。具体的にどのような対応をすれば良いのでしょうか?
(1)経営者・上司の勧め
本人の意思を確認することが義務化になります。時に、経営者や上司が「是非取得してください。」と心から伝えてください。ある組織の例です。
Aさんは大変忙しい職場で周りの方に申し訳ないし、仕事上でよく思われない(評価が下がる)のではと考えており、育児休職をとるつもりは全くなかった。
上司:「お子さんが生まれたんだね。おめでとう。いつ休む?」との声かけ。
Aさん:「今忙しい中で、私が抜けては皆さんにご迷惑をおかけするので、特に休むつもりはありません。」
上司:「今は忙しいけど、私がフォローするから1年の間に必ず休んで下さい。人事部からも言われているんだよ。奥さんといつが良いか相談して、休む時期を連絡してください。」
と言うようなやり取りで上司が強く背中を押しました。その後、奥さんと相談し、実家から戻ってくる時期に、1週間育児休業を取得しました。出社したAさんは
Aさん:「休ませていただきありがとうございます。本当に良かったです。妻にも感謝されました。今後は、効率的に働いてなるべく早く帰って子供をお風呂に入れたいと思います。次の子供が授かった時にも取得させていただきたいと思います。」「子供が毎日成長していることを実感でしたこと、妻の大変さが本当にわかりました。」とも話していらっしゃいました。
目先は大変でも長い目で見て頑張って取り組むことで、個人にとっては勿論のこと、組織にとっても、組織への感謝の気持ちが、例えば離職防止に繋がるなども考えられます。組織にとっても個人にとっても良い取り組みと確信しています。
(2) 休業中の仕事のフォロー・配分検討(代替えの人の手配・現スタッフでフォロー等)
経営者は、休業中のスタッフが気持ちよく休むためにも、利用者のためにも仕事をどのように配分するかということを考えなければなりません。休業した場合、雇用保険から休業前賃金の67%の休業給付金が支給されます。ステーションの人数規模や休業期間にもよりますが、休職中に限定して代替えの方を採用して働いていただくことも可能です。短期間であれば、現状のスタッフでやりくりすることも考えなければなりません。基本的には、女性が育児休業取得する場合と同じ対応となりますが、特に休業する方が一人で担っている特別な仕事や対応があれば、休業を申し出たときに、「仕事上で特別に配慮することがあるか」を本人も確認して対応します。また、職場のスタッフには、お互い様の気持ちを持って、協力いただくようにお願い致します。
男性の育児休業取得促進は、これからです。男性も女性も働きやすい職場作りをお互いに協力して進めましょう。
幸田 千栄子 様
多摩大学医療・介護ソリューション研究所 副所長・シニアフェロー 輸送用機器メーカーにて人事・人事企画・採用・教育・女性活躍推進・秘書などに従事。2000年公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了し、公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。2009年5月から1年間、サービス産業生産性協議会スタッフとしてコンサルタントと平行して任にあたり、サービス産業の生産性向上PJに参画すると同時に顧客満足度・従業員満足度調査開発・設計を行う。 |