訪問看護と労務~残業は勝手にできない – 上司の指示(業務内容と残業)が必須 –

残業は勝手にできない

残業という言葉を私たちは日常的に使いますが、厳密な定義は、私たちのイメージと少し違っています。今回は、残業について、多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長・シニアフェロー/公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタントと様々な分野でご活躍されている幸田 千栄子 様に紹介いただきます。

 

労働時間は、労働基準法で定められており、1週40時間、1日8時間であるところは前回も記載した通り皆さん、ご承知のことでしょう。
> 訪問看護と労務~1日労働時間とは~
では、それ以上に労働する場合にはどのような定めがあるのでしょう。

1日8時間を超えて労働する場合

訪問看護師の仕事をされている方々にとっては、利用者の急変などにより定められた通りの労働時間で業務を行える日ばかりではないでしょう。さて、その場合はどの様にしたら良いでしょう?原則、管理者が判断して、8時間を超えての労働を指示することになります。従って、基本的にスタッフは事前に管理者に承諾を得ることが必須です。(やむを得ない場合は事後承認の可能性もある)

また、法律で定められた労働時間の限度1日8時間及び1週40時間、法律で定められた休日、毎週少なくとも1回を超えて労働させるには、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定) の締結をし、所管の労働基準監督署長への届出が必要です。

月45時間、年360時間の時間外労働の上限を超える場合

時間外労働(休日労働を含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となります。臨時的な特別な事情があって労使が合意する場合( 特別条項) でも以下を守らなければなりません。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て1ヶ月当たり80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度

 

労働者の健康を守る

働く時間の上限を設けている理由は、働く人の健康を守るためです。
過労死ラインは「発症前1ヵ月間に100時間」「発症前2~6ヵ月間平均で80時間」の時間外・休日労働だとされています。時間外・休日労働が月80時間を超過し、疲労の蓄積が認められる労働者に対して、本人の申し出により産業医などの医師による面接指導を実施することが法律で定められています。時間外・休日労働が50時間以上の場合は面接指導を受けてもらうなど、法律よりも時間を少なめに設定する独自の基準を設けるなど、管理者の責任として、部下の心と体の健康の維持に注意を払って働く環境を整えましょう。働く個人個人は、期待に応えたいという思いや、上司に言われたらやらざるを得ない状況もあるでしょう。しかし、健康あっての労働です。働くことから得られることは収入だけでなく、働き甲斐や社会貢献など多いのですが、働き過ぎてはそれもできなくなってします。

 

幸田 千栄子 様

多摩大学医療・介護ソリューション研究所 副所長・シニアフェロー
公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタント

輸送用機器メーカーにて人事・人事企画・採用・教育・女性活躍推進・秘書などに従事。2000年公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了し、公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。2009年5月から1年間、サービス産業生産性協議会スタッフとしてコンサルタントと平行して任にあたり、サービス産業の生産性向上PJに参画すると同時に顧客満足度・従業員満足度調査開発・設計を行う。

 

 

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