訪問看護におけるコンプライアンスって何?必要な取り組みは?
企業や組織の経営において重要な「コンプライアンス」。経営者や管理者はもちろんのこと、スタッフにも必ず知っておいてほしい内容です。今回は、コンプライアンスという言葉の意味や、コンプライアンス違反となる事例、また医療界におけるコンプライアンスについて細かく紹介します。
まずは確認しよう!コンプライアンスとは?
コンプライアンスとは、直訳すると「法令遵守」となり、社会秩序にのっとって公正・公平に業務を行うことを意味しています。しかし、企業に対する社会的責任の重要性が高まりつつある近年では、単に法令だけでなく、「社会の規範や倫理観から外れていないか」といった、より広い意味で使われます。ハラスメントや情報漏洩など、企業を取り巻くさまざまな問題が発生している現在、法令厳守だけでなく、「法律・法令などで明文化されていないことでも社会倫理に従って正しく判断し企業経営を行うこと」が求められるようになっています。
知っておこう!こんなことをすると「コンプライアンス」違反になる
日本でよく見られるコンプライアンス違反としては、以下のものが挙げられます。
- 個人情報漏洩
- 労働問題
- 不正経理
- 横領や備品持ち出しなど個人の問題
- 著作権侵害
- ハラスメント
「個人情報保護に関する法律」という法律の存在からも、近年は、消費者が個人情報の管理やプライバシーの保護に関して敏感になってきている風潮があることがわかります。それに伴い、個人情報漏洩はコンプライアンス違反として取り扱われ、昔と比較して社会の目が厳しくなりました。個人情報を漏洩させた企業や医療機関などは社会的信用を失い、経済的にも多額な損失を被ります。企業や従業員は、どんな場所で勤務していても、どんな職種であっても、守秘義務を徹底する必要があることを忘れないようにしましょう。
上限を超えた残業や賃金の未払いなど、労働基準法違反となるような劣悪な労働環境が問題となっています。そのような企業は「ブラック企業」と呼ばれるようになり、コンプライアンス違反として問題視されています。労働環境の悪さは、時に心身の健康上の問題につながるなど、無視できない問題です。
日本では長年にわたって不況が続いており、経営困難に陥る企業も少なくありません。そのような事情のなかで企業が経済的不安を抱え、架空の売り上げを計上したり、本来売り上げとして計上することが禁じられている自社株売却益を売り上げとして計上したりといった不祥事が後を絶ちません。本当は赤字であるにも関わらず、黒字を装って投資家からの投資を受けるなどの不祥事がニュースに取り上げられることがあります。
企業単位だけではなく、従業員個人による不祥事もコンプライアンス違反となります。企業のお金や収入印紙、備品などを無断で持ち出し私用で利用した時点で「横領」となり、立派な犯罪です。
ほとんどの企業で、日々の業務で利用する「文章」や「イラスト」。知らず知らずのうちにコピーして使用してしまうなど、著作権侵害となってしまっているケースがあります。データなどは、慎重に取り扱う必要があることを覚えておきましょう。
近年、「セクハラ」「モラハラ」など、ハラスメントという言葉を耳にすることが増えています。企業内はもちろんのこと、お客さまや利用者との間に生じるいじめや嫌がらせもすべて「ハラスメント」としてコンプライアンス違反となります。
一般企業とは違う?医療従事者におけるコンプライアンス
医療機関では、組織が遵守すべき事項として倫理規範が定められているはずです。内容は医療機関により異なりますが、「患者の心理的・経済的・社会的側面を理解し、最適な医療を提供する」「患者の人権・プライバシーを尊重し、インフォームドコンセントを徹底する」といった内容は必ず組み込まれているかと思います。そして、医療現場におけるコンプライアンス違反には以下のようなものがあります。
- 労働問題
- 個人情報やカルテ、臨床検査データなど各種データの改ざん
- 医療事故の隠ぺい
- 個人情報漏洩
これらのコンプライアンス違反を起こさないためには、医療従事者一人ひとりとしても、常に組織の倫理規範を意識し、健全な態度で責任を持って行動する必要があります。看護師においては、「日本看護協会の倫理綱領」を遵守する必要があります。そして、訪問看護の分野においては、特に「情報管理」の徹底が求められます。近年のICT化が推進に伴い、訪問看護師の「直行直帰」スタイルが浸透し、訪問看護ステーションを経由せずに勤務を終えることが多くなりつつあります。電子媒体を用いて「どこでも」「いつでも」看護記録をおこなえるのは利点である一方、個人情報を適切に管理しないと「誰でも」簡単に情報にアクセスできてしまうという問題点があります。パスワードやIDなどの管理を徹底しましょう。
ココは注意!利用者におけるコンプライアンス
医療者だけでなく、利用者や患者にもコンプライアンスが求められます。この場合、「患者が医師や看護師など医療者の指示に従い治療を受けること」を意味し、具体的には以下のようなものがあります。
- 服薬遵守
- 行動制限遵守
「服薬遵守」とは、薬の量・回数・タイミングについて医師の指示を守り正確に服薬することです。医師は、薬物の効能を最大に発揮させ副作用を抑制するために、患者や利用者一人ひとりに合った処方をおこなっていますので、服薬遵守ができない場合、さまざまな弊害が生じてしまいます。日本では、特に慢性疾患の患者や利用者において、コンプライアンス不良が目立ちます。患者が服薬遵守をするためには、医療従事者の働きかけも重要です。
疾病や障害を抱える患者・利用者には、入院中あるいは自宅療養中の生活について「禁煙」「禁酒」「運動制限」「塩分制限」「水分制限」などあらゆる制限が設けられます。これらも、すべて状態の悪化予防や改善を目的としています。よりよい医療のためには、医療従事者と患者・利用者の双方がコンプライアンス遵守を徹底することが重要です。
ステーションで「コンプライアンス」を守る体制をつくるには?
ステーション全体としてコンプライアンス違反を起こさないようにするには、次のことを意識しましょう。
- コンプライアンスマニュアルを作成する
- コンプライアンスに関する相談窓口を設ける
- コンプライアンスに関する教育を行う
- 内部監査を実施する
順に解説します。
スタッフ個人個人が「何を」「どのように」守れば良いのかを具体的に認識できるよう、コンプライアンスマニュアルを作成し、内容の周知徹底を行いましょう。物事に対する考え方や価値観は人により異なるため、「知識不足により知らず知らずのうちにコンプライアンス違反をしていた」という事態を防ぐためにも、何がルール違反になるのかということを明確に示しておくことが何よりも重要です。マニュアルの作成だけでなく、コンプライアンス遵守の重要性や、違反した際の罰則などについても合わせて伝達できるとなお効果的です。
従業員が悩んだり困ったりした際に気軽に相談できる「コンプライアンスに関する相談窓口」を作り、相談しやすい環境、風通しの良い社風を整えることが大切です。
マニュアルや相談窓口を作っただけでは、従業員一人ひとりの意識は変わりません。コンプライアンスについて身近なものとして捉えてもらうためにも、研修やセミナー、学習会などによって知識を共有し、日々の業務のなかで意識付けできるように促すことが必要です。一度の開催で終了とするのではなく、定期的に開催することをおすすめします。
コンプライアンスが遵守されているかを確認するためにも、内部監査は必須であるといえます。情報セキュリティーやハラスメントなどの問題は、場合によっては従業員によってもみ消されてしまうこともありますので、定期的に監査を行い、必要に応じて従業員に適切なフィードバックや指導を行う必要があります。
訪問看護におけるコンプライアンス遵守を促進!訪問看護専用電子カルテ『iBow』
訪問看護におけるコンプライアンス遵守を促進するためには、訪問看護専用電子カルテ『iBow』の利用をおすすめします。訪問看護の現場では、個人情報を扱う場面が多々ありますが、「iBow」は、厳重に管理しなければならない個人情報をデータ化し、クラウドで安全に管理しているシステムです。スタッフ一人一人にパスワードとIDが設定されているので、情報漏洩やカルテの改ざんも防ぎます。また、iBowは「電子カルテの3原則」と政府が定める「3省2ガイドライン」を遵守した、訪問看護専用の電子カルテです。iBowで撮影した利用者様の写真はiPadやiPhoneの端末には残りません。全てクラウド上で保管されるため、万が一、端末を置き忘れても安心です。
まとめ
今回は、企業や組織運営において重要な「コンプライアンス」について紹介しました。
コンプライアンスについて理解ができておらず、知らないうちに違反してしまう、あるいは職場が相談しにくい環境にあり、気づいていてもそのままになってしまっていると未然に防げたものが原因で違反になることがあります。「うちはスタッフも少ないし、コンプライアンスまで手が回らないよ」と思っている管理者・経営者の方もいるかもしれませんが、相談しやすい環境を作る、コンプライアンスに関する知識を共有するといった小さなことからでも取り組むことができます。まずは自社でできそうな施策を確認し取り組んでいきましょう。