2024年度訪問看護の介護報酬 改定ポイントのまとめ
2024年6月から、訪問看護の新介護報酬が適用されます。今回の報酬改定の内容について、改めて詳しく整理してみましょう。今回は全体としてはプラス改定となりました。サービス提供時間にもよりますが、基本単位は訪問看護ステーションの場合で1~3単位、病院又は診療所の場合で1~2単位(いずれも1回につき)引き上げられました。また、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスと連携する場合は、月に7単位の引き上げとなっています。 介護予防訪問介護についてもほぼ同様で、1回につき1~3単位のプラスとなりました。
加算・減算について
さて、今回の改定では様々な加算について、新設や算定要件の変更が行われました。重要なものをいくつかピックアップします。
専門管理加算(新設)
まずは専門管理加算(250単位/月)の新設です。緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門・人口膀胱ケアに関する専門研修を受講するか、特定行為研修を修了した看護師が、訪問看護実施に関する計画的な管理を行った場合に算定可能です。専門性の高い看護師が関与することで、医療ニーズが高い利用者に適切な訪問看護を提供するのが狙いです。
訪問看護 | 250単位/月 |
介護予防訪問看護 | 250単位/月 |
初回加算
円滑な在宅復帰に向けた医療と介護の連携促進を目的に、初回加算に月350単位の新区分(Ⅰ)が設けられました。新規に訪問看護計画を策定し、退院や施設からの退所当日に訪問看護を実施した場合に算定できます。これまでの初回加算は、初回加算(Ⅱ)となり、単位数も変わりません。
訪問看護 | 初回加算(Ⅰ):350単位/月 |
初回加算(Ⅱ):300単位/月 | |
介護予防訪問看護 | 初回加算(Ⅰ):350単位/月 |
初回加算(Ⅱ):300単位/月 |
ターミナルケア加算
ターミナルケア加算の月2,500単位への引上げも実施されました。これは介護保険の訪問看護でのターミナルケアと医療保険でのターミナルケアの内容が同様であることから、整合性を図ったものです。算定要件については従来通りです。
ターミナルケア加算 | 2,500単位/月 |
遠隔死亡診断書補助加算(新設)
遠隔死亡診断書補助加算(150単位/回)が新設されました。離島などに住む利用者が死亡した場合に、看護師が情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助を行った場合に算定できます。ただし、看護師は所定の研修を受ける必要があります。
遠隔死亡診断書補助加算 | 150単位/回 |
業務継続計画未策定減算(新設)
加算だけではなく、減算も新設されました。まずは業務継続計画未策定減算です。感染症や災害発生時でも事業の継続を可能とする計画、いわゆるBCPが策定されていない場合に所定単位数の100分の1が減算となります。ただし訪問看護については2025年3月31日までの期間、経過措置が適用されています。
高齢者虐待防止措置未実施減算(新設)
利用者への虐待行為やその再発を防止するための委員会の設置や指針の整備、研修の実施などが行われてない行われていない場合に適用される高齢者虐待防止未実施減算も新設されました。減算率は業務継続計画未策定減算と同様です。
訪問看護 | 所定単位数のー1/100 |
介護予防訪問看護 | 所定単位数のー1/100 |
また、利用者の身体拘束については、ほかの介護サービスと同様に「利用者の生命や身体の保護など止むを得ない場合を除き行ってはならない」「行う場合は、その事由や拘束した時間・方法、その間の利用者の心身の状況などについて記録すること」が義務化されました。
理学療法士等の減算(新設)
訪問看護事業所の役割に基づくサービス提供を促進する観点から、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の訪問回数が看護職員の訪問回数を超過した場合の減算(1回当たり8単位)も新たに盛り込まれました。また、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算をいずれも算定していない場合にも適用されます。
人員や設備、運営等の基準についての見直し
人員配置基準が定められている職種について、①個人情報を適切に管理している、②利用者の処遇に支障が生じない、の2点が満たされていることを前提に、テレワークが認められます。
訪問看護における24時間対応体制の充実
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)は、2024年度の介護報酬改定において新設され、訪問看護ステーションが提供する場合に600単位が適用されます。この加算は、緊急時に対応する訪問看護サービスを評価するものです。また、事業所の24時間対応体制の構築については、以下の要件を全て満たせば、利用者や家族からの連絡・相談を受ける担当者は看護師等でなくてもよくなりました。
- 看護師等以外の職員が連絡相談に対応するマニュアルを整備
- 緊急訪問の必要性の判断を保健師または看護師が速やかに行える体制と、緊急訪問可能な体制の整備
- 連絡相談を担当する看護師等以外の職員の勤務体制・勤務状況を管理者が明確化
- 看護師以外の職員が連絡相談を受けた際に、保健師または看護師へ報告する。また、報告を受けた者はその内容を訪問看護記録所に記載
- 前記①~④について利用者・家族に説明し、同意を得る
- 連絡相談を担当する看護師等以外の職員を都道府県知事に届け出
そして、退院時共同指導については、指導内容を文書以外の方法で提供することも可能になるなど、柔軟性が図られています。
緊急時訪問看護加算(Ⅱ)について、訪問看護ステーションにおける単位数は574単位です。緊急時訪問看護加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは単に単位数の差だけではなく、(Ⅰ)にはより高度な対応体制が求められます。(Ⅰ)は600単位で、訪問看護ステーションが24時間体制で高度な緊急対応サービスを提供できる場合に適用されるため、包括的な緊急対応が評価されます。
緊急時訪問看護加算(Ⅰ) | 600単位 | 新設 |
緊急時訪問看護加算(Ⅱ) | 574単位 | 従来の緊急時訪問看護加算 |
特別加算地域、中山間地域等における小規模事業所加算、中山間地域
特別加算地域、中山間地域等における小規模事業所加算、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算について、「過疎地域の持続発展の支援に関する特別措置法」に規定されている過疎地域が、算定対象地域に含まれることが明確化されました。 また特別地域加算については、自治体からの聴取などに基づき、追加・削除などの見直しを実施しました。
電子カルテiBowは報酬改定にも対応
電子カルテ「iBow」は、令和6年度の介護・診療報酬改定に対応しています。訪問看護ステーションのニーズに応じた機能が搭載されており、日々の記録からレセプト作成までの業務を効率化します。報酬改定に伴う変更点やオンライン請求・資格確認に対応予定です。さらにiBowのカスタマーサポートは、システムの使い方だけでなく、加算や制度についての相談も受け付けているため、診療報酬改定直後でも安心して利用できます。
最後に
ここで紹介した報酬改定に関する各種情報は、厚生労働省がホームページ等で公開しています。これに加えて解釈通知なども適時発表されていますので、こまめにチェックし、常に最新の、正確な情報を得るようにしましょう。
今回の介護報酬・診療報酬改定では訪問看護では多くの項目での見直しがありました。今回の記事と合わせて報酬改定の概要をおまとめした記事をピックアップしました。ぜひ、こちらの記事もチェックしてみてください!