2024年度訪問看護の報酬改定 減算項目・体制見直し事項

2024年度訪問看護の報酬改定 減算項目・体制見直し事項

 2024年度の訪問看護の介護報酬・診療報酬改定について、特に重要と思われる項目についてピックアップし、数回に分けて詳しく解説します。今回は「身体拘束等の適正化の推進」「人員配置基準における両立支援への配慮」「『書面掲示』規制の見直し」及び、「業務継続計画未策定減算」「高齢者虐待防止の推進による措置未実施減算」「理学療法士による訪問看護の評価見直し」の6点です。 

目次

体制の見直し事項

身体拘束等の適正化の推進

 訪問看護でもほかの介護サービスと同様に、利用者の身体拘束については「利用者本人や他の利用者の生命や身体の保護などやむを得ない場合を除き行ってはならない」「行う場合は、その事由や拘束した時間・方法、その間の利用者の心身の状況などについて記録すること」が義務化されました。 訪問看護の現場では利用者の身体を拘束しなければならないケースが多いとは思われませんが、高齢者介護に携わる身としては主旨をよく理解し、意識付けを行っていくことが必要です。 

人員配置基準における両立支援への配慮

全サービスを対象に、職員が治療と仕事を両立できる環境を整備し、離職防止・定着促進を図る観点から、人員配置基準が緩和されます。具体的には以下の通りです。 

  1. 職員が育児・介護休業法等による育児・介護の時短勤制度を利用する場合に加えて、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける時短勤務制度等を利用する場合も、週30時間以上の勤務で常勤として扱うことを認める 
  2. 職員が「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱うことを認める 

 

母性健康管理措置による 短時間勤務  育児・介護休業法による 短時間勤務制度  「治療と仕事の両立ガイドライン」に 沿って事業者が自主的に設 
「常勤」(※)の取扱い: 週30時間以上の勤務で常勤扱い  ○(新設 
「常勤換算」(※)の取扱い: 週30時間以上の勤務で常勤換算での 計算上も1(常勤)と扱うことを認める  ○(新設 

 

※人員配置基準上の「常勤」及び「常勤換算方法」の計算においては、常勤の従業者が勤務すべき時間数(32時間を下回る場合は32時間を基本) 勤務している者を「常勤」として取り扱うこととしている。 

「書面掲示」規制の見直し

 事業所の運営規定の重要事項などについて、従来の書面表示に加えてウェブサイト上(法人のホームページ等又は情報公表システム 上)に掲載・公表することが2025年度より義務化されます。インターネット上で情報の閲覧が完結できるようにすることで、事業所運営の透明性向上を図るのが目的です。 

減算対象項目

業務継続計画未策定減算

 感染症や地震・水害などの災害発生時において、利用者に継続的にサービスを提供するための計画の策定が2024年4月1日より介護事業者に義務付けられました。これを実施していないと、所定単位数の100分の1が減算されます。  

 計画には、「非常時に訪問看護の提供を継続的に実施する」「非常時の体制での早期の業務再開を図る」の2点について、体制や具体的な内容を盛り込むことが求められています。また、計画を策定するだけでなく、それに従い定期的に研修・訓練を実施しなければなりません。 これらは届出をしないと減算対象となります。ただし訪問看護事業所は経過措置が設けられており25年3月31日までは減算が適用されません。同年3月15日までに届け出をしていれば大丈夫ですので、それまでに必ず対応をしておきましょう。

2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の拡大では、多くの企業や店舗が通常の事業を継続できなくなり、国民生活に大きな影響がでました。こうした中で企業・店舗にとっては業務継続計画(BCP)の策定が急務となっています。中でも医療機関や介護事業所は事業停止が利用者の生命に直結する可能性が高いことから、他業界に先駆けて策定が義務付けられました。 未策定の場合は、減算という直接的な損失だけでなく、利用者獲得や人材採用、資金調達など様々な面で影響が生じる可能性があります。早急に策定するようにしましょう。 

高齢者虐待防止の推進による措置未実施減算

 厚生労働省の取りまとめによると、2022年度の介護施設の職員等による高齢者虐待の件数は856件で過去最多となりました。また虐待に関する相談・通報件数も2,795件と過去最多となっています。こうした状況受け、全ての介護事業所に高齢者虐待防止のための措置を講じることが義務化されました。実施していない場合には、所定単位数の100分の1が減算となります。 では、どのような措置が必要なのでしょうか。具体的には以下の4つです。
 

  1. 虐待防止のための対策を検討する委員会の定期的な開催 
  2. 虐待防止のための指針の整備 
  3. 従業者に対する虐待防止のための研修の定期的な実施 
  4. 虐待防止のための担当者の配置
     

 こちらについても届出をしないと減算となります。届出は、介護給付費算定に関わる体制等状況一覧表に追加された「高齢者虐待防止措置実施の有無」欄に記入しますが、自治体によっては電子申請システムが可能なケースもあります。まずは確認してみましょう。

 

訪問看護 所定単位数のー1/100 
介護予防訪問看護  所定単位数のー1/100 

理学療法士による訪問看護の評価見直し

 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の訪問回数が看護職員の訪問回数を上回った場合に、訪問看護費が1回につき8単位減算される規定が新設されました。 また、介護予防訪問看護についても1回につき8単位の減算となります。12ヶ月を超えてこれを実施する場合には、これまでは1回5単位の減算となっていましたが、今後は8単位減算を算定している場合はさらに1回15単位の減算、算定していない場合は1回5単位の減算となります。訪問看護はその名の通り看護師が訪問することに意味があります。理学療法士等の訪問であれば訪問リハビリテーションなど他のサービスでも代用可能です。訪問看護の役割の適正化という観点から、今回の規定が設けられました。

 次の基準のいずれかに該当する場合に以下の通り減算となります。 

① 前年度の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること
② 緊急時訪問看護加算、特別管理加算及び看護体制強化加算をいずれも算定していないこと 

 

訪問看護 

理学療法士、作業療法士又は 言語聴覚士による訪問  緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算 
算定している  算定していない 
① 訪 問 回 数  看護職員≧リハ職    8単位減算(新設) 
看護職員<リハ職  8単位減算(新設)  8単位減算(新設) 

 

介護予防訪問看護費

理学療法士、作業療法士又は 言語聴覚士による訪問  緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算
算定している  算定していない 
① 訪 問 回 数  看護職員≧リハ職    8単位減算(新設)※ 
看護職員<リハ職  8単位減算(新設)※  8単位減算(新設)※  

※12月を超えて訪問を行う場合は更に15単位減算(新設) 

電子カルテiBowは報酬改定にも対応

2024年度訪問看護の報酬改定 減算項目・体制見直し事項

電子カルテ「iBow」は、令和6年度の介護・診療報酬改定に対応しています。訪問看護ステーションのニーズに応じた機能が搭載されており、日々の記録からレセプト作成までの業務を効率化します。報酬改定に伴う変更点やオンライン請求・資格確認に対応予定です。さらにiBowのカスタマーサポートは、システムの使い方だけでなく、加算や制度についての相談も受け付けているため、診療報酬改定直後でも安心して利用できます。

 

iBowについて問い合わせる

最後に

 ここで紹介した報酬改定に関する各種情報は、厚生労働省がホームページ等で公開しています。これに加えて解釈通知なども適時発表されていますので、こまめにチェックし、常に最新の正確な情報を得るようにしましょう。

今回の介護報酬・診療報酬改定では訪問看護では多くの項目での見直しがありました。今回の記事と合わせて報酬改定の概要をおまとめした記事をピックアップしました。ぜひ、こちらの記事もチェックしてみてください!

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