訪問看護の長時間加算とは【2024年度報酬改定対応】

訪問看護の長時間加算とは【2024年度報酬改定対応】

長時間訪問看護加算とは、通常の訪問看護の時間を超えてケアを提供した場合に算定できる加算です。医療保険と介護保険の両方で適用可能ですが、対象者や算定要件などに違いがあります。本記事では、医療保険と介護保険における長時間訪問看護加算を解説し、訪問看護ステーションにどのような影響を与えるかについてもご紹介します。

目次

医療保険における長時間訪問看護加算とは

医療保険における長時間訪問看護加算とは、1回の訪問看護の時間が1時間30分を超えた場合に適応されます。ここでは、医療保険における長時間訪問看護加算の種類と単位数、算定要件、注意点について解説します。

種類と算定料金

種類 算定料金
長時間訪問看護加算 5,200円/回

 

対象者

以下のいずれかに該当する利用者に算定が可能です。

1. 15歳未満の超重症児または準超重症児
2. 特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている者
3. 特別管理加算の対象者

超重症児または準超重症児とは

超重症児または準超重症児とは、運動機能が座位までで、各項目に規定する状態が6か月以上続き、指定された評価基準に基づくスコアが一定の範囲にある児童を指します。

・ 超重症児超重症児判定スコアの合計が25点以上
・ 準超重症児超重症児判定スコアの合計が10点以上25点未満

特別訪問看護指示書とは

特別訪問看護指示書は、主治医が頻回な訪問看護(週4日以上)の必要があると判断した場合に公布される指示書です。退院直後や急激な容態の悪化、末期の悪性腫瘍を除く終末期などの利用者に対して公布されます。指示書の交付期間は14日間で、原則月1回の交付が行われます。ただし、気管カニューレを使用している利用者や、あるいは真皮を超える褥瘡がある利用者の場合は、月2回の交付が可能です。

特別管理加算の対象者とは

特別管理加算の対象者とは、厚生労働大臣が定める特別な管理が必要な状態の者(別表8)です。こちらの記事で詳しく解説しています。

算定要件

算定するには、以下の項目をすべて満たす必要があります。

・ 1回の訪問看護の時間が1時間30分を超えること。
・ 訪問看護計画書および訪問看護報告書に、長時間訪問看護が必要な理由と内容の記載があること。

算定時の注意点

加算の回数

長時間訪問看護加算は、「特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている利用者」または「特別管理加算の対象者」に対して、週1回の算定ができます。

「15歳未満の超重症児または準超重症児」または「15歳未満の特別管理加算の対象児」に対しては、週3回まで算定ができます。

別の日に長時間訪問した場合

長時間訪問看護加算を算定した日とは別の日に、1時間30分を超える訪問看護を行った場合は、差額費用を「その他の利用料」として受け取ることが可能です。

医療保険における長時間精神科訪問看護加算とは

医療保険における長時間精神科訪問看護加算は、精神疾患を有する利用者に対して1日の訪問看護が1時間30分を超えた場合に適応されます。ここでは、医療保険における長時間訪問精神科看護加算の種類と単位数、算定要件、注意点について解説します。

種類と算定料金

種類 算定料金
長時間精神科訪問看護加算 5,200円/回

 

対象者

精神科特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている者

算定要件

算定するには、以下の項目をすべて満たす必要があります。

  • 1回の訪問看護の時間が1時間30分を超えること。
  • 精神科訪問看護計画書および精神科訪問看護報告書に、長時間訪問看護が必要な理由と内容の記載があること。

算定時の注意点

加算の回数

長時間精神科訪問看護加算は、週1回までの算定が可能です。

別の日に長時間訪問した場合

長時間訪問看護加算を算定した日とは別の日に、1時間30分を超える訪問看護を行った場合は、差額費用を「その他の利用料」として受け取ることが可能です。

介護保険における訪問看護の長時間訪問看護加算とは

介護保険における長時間訪問看護加算は、特別管理加算の対象となる利用者に対して1時間30分を超える訪問看護を提供した場合に算定できる加算です。

種類 単位数
指定訪問看護ステーション 300単位/回
病院または診療所 300単位/回

長時間訪問看護加算の単位数は、介護予防訪問看護も同じです。

対象者

要介護者または要支援者で特別管理加算の対象者

なお、特別管理加算の対象者(別表8)については、こちらの記事で詳しく解説しています。

算定要件

算定するには、以下の項目をすべて満たす必要があります。

  • 1時間以上1時間30分未満の訪問看護に引き続き訪問看護を行い、合計で1時間30分を超えること。
  • ケアプランと訪問看護計画書に、計画的な訪問看護として位置づけられていること

訪問看護報告書に実施した看護内容の記載があること。

算定時の注意点

資格が異なる場合

保健師、看護師、准看護師が訪問しても、同じ単位数を算定できます。

独自に設定した利用料との併用

訪問看護ステーションが独自に定めた利用料の支払いは受けられません

支給限度額

長時間管理加算は支給限度額に含まれる加算です。支給限度基準内でのケアプラン策定が必要です。

長時間訪問看護加算が訪問看護ステーションの運営に与える影響

長時間訪問加算は、訪問看護ステーションの運営にさまざまな影響を与えます。ここでは、長時間加算の課題とポジティブな影響について解説します。

長時間加算の課題

長時間訪問看護加算は一見、収益向上に思えますが、実際にはいくつか課題も抱えています。課題と対策について詳しく解説します。

訪問時間と報酬のバランス

長時間の訪問看護を行うと、加算がつくため収益アップにつながるように思われやすいですが、実際は長時間働けば働くほど報酬が十分ではないという課題があります。つまり、看護師が長時間訪問することによる「時間」と「報酬」のバランスが取れていないのです。加えて、看護師の労働時間が増えることで人件費がかさみ、結果としてバランスがさらに崩れるリスクもあります。

このような状況を改善するためには、訪問看護のケア内容を見直して効率化をはかり、優先度を明確にすることが重要です。また、他の加算と組み合わせることで、時間と報酬のバランス改善が期待できます。さらに、近隣の訪問先をまとめて訪問するルート調整や看護師のシフト調整による、労働時間の見直しも人件費の増加を抑える対策の一つです。これらを総合的に見直すことで、時間と報酬のバランスの改善が期待できます。

他のサービスとの調整

長時間訪問看護を提供するにあたって、他サービスの利用との調整が必要です。特に介護保険の場合、月の上限点数が定められており、ケアプランに基づいた看護を提供する必要があるため、ケアマネジャーとの連携が不可欠です。長時間の訪問看護の提供によって、点数を使うため、利用可能なサービス時間が制限され、サービス提供の柔軟性が低下する可能性があります。例えば、もともと介護士が入る予定だった時間を削らなければならなかったり、通所サービスの時間を短縮せざるを得なかったりといった影響が生じることもあります。

ポジティブな影響

長時間訪問看護加算には、課題がある一方で、ポジティブな影響もあります。ここではポジティブな影響について解説していきます。

看護の質の向上

長時間の訪問看護を行うことで、看護師はよりじっくりと利用者の状態を観察し、適切なケアを提供できるようになります。これにより、看護の質が向上し、利用者の満足度も高まります。長時間のケアが必要な利用者に対して、細やかな看護を提供できることは、利用者やその家族にとって大きなメリットです。また、家族の介護負担軽減やレスパイトの確保にもなります。

高度なケア技術の習得

長時間訪問看護加算の対象となる利用者は、医療依存度が高く、専門的なケアを必要とする場合が多くあります。そのため、看護師はさまざまな学びの機会を得ることができ、1人ひとりの知識とスキルが向上します。その結果、より質の高い看護を提供できるようになります。専門性の向上は、他の訪問看護ステーションとの差別化にも繋がり、ステーションの強みとなる大きなメリットです。

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まとめ

長時間訪問看護加算は、医療保険と介護保険の両方で適用される加算であり、対象者や算定要件を確認することが重要です。長時間訪問看護加算は報酬と時間の不釣り合いや人件費の増加などの課題もあります。対処するためには、効率的な訪問スケジュールやシフト調整が求められます。一方で、看護の質や専門性が向上し、利用者への質の高いサービス提供が可能となるでしょう。

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