訪問看護におけるダイバーシティの考え方③~障がい者雇用を考える~
「ダイバーシティ」という言葉を聞いたことがあるけれど、詳しい意味や考え方については、よく分からない方も多いのではないでしょうか。今回は、多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長・シニアフェロー/公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタントと様々な分野でご活躍されている幸田 千栄子 様にダイバーシティの概要や考え方について全4回にわたって解説いただきます。
第1回では、ダイバーシティの概要や歴史について、第2回ではダイバーシティの受容のステップについて解説していただきました。
> 第1回:訪問看護におけるダイバーシティの考え方①~多様性の受容とは何か?~
> 第2回:訪問看護におけるダイバーシティの考え方②~受容のステップ~
現在、障がいのある方の自立を支援しようと厚生労働省をはじめ、関係機関が様々な障がい者雇用の活動を行っています。訪問看護を経営している方の中には介護施設や就労継続支援など他事業展開されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。事業所の中には障がい者雇用枠で、事務や介護職員を雇用し、サービス以外の社会貢献事業をしている経営者の方もいます。今回はダイバーシティにおける障がい者雇用について解説いただきます。
障がい者雇用のルール
障害者雇用促進法において障がい者の雇用について決められています。障がい者の職業の安定を図ることを目的とする法律であり、障がいのある方に対し職業生活における自立を実現するための職業リハビリテーション推進について、また事業主が障がい者を雇用する義務をはじめ、差別の禁止や合理的配慮の提供義務などを定めています。
障がい者とはどの様な方を指すのでしょうか。※障害者基本法(昭和45年法律第84号)(定義)第二条この法律に置いて「障がい者」とは、身体障がい、知的障がい又は精神障がい(以下「障がい」と総称する。)があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう、と定義されています。次に、法定雇用率が決められています。※令和3年3月1日から引き上げられ、民間企業は2.3%となりました。対象企業は、43.5人以上の従業員を雇用している企業です。また、法定雇用率を満たさない事業主は、不足1人につき50,000円の障害者雇用納付金が徴収されます。(金額は変動。)逆に、法定雇用率を達成している事業主には一定の調整金が支給されます。
障がい者とは
①身体障がい者(身体障がい者手帳保持者。重度身体障がい者も含む)
②知的障がい者(療養手帳など、各自治体が発行する手帳の保持者。および知的障がい者と判定する判定書保持者。重度知的障がい者も含む)③精神、発達障がい者(精神障がい者保健福祉手帳の保持者)で、症状安定し、就労ができる
④精神障がいの特性・疾患があるが、症状安定し、就労ができる人(手帳を持たない人)
⑤それ以外の心身機能の障がいがあるが、手帳を持たない人
※(参考:障害者基本法(昭和45年法律第84号))
※(参考:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク LL021014障01)
障害者法定雇用率と障がい者雇用の工夫
介護・医療業界は、雇用人数により対象となる事業所が多くないかもしれませんが、今後、法定雇用率は上がると思われますし、対象事業所の従業員数も少なくなってくると思われます。そこで、障がい者雇用する時のために考えておきたいことは、チーム制を組んでフォローし合う仕組みを作って運用することです。障がい者の中には、短時間勤務の方が働きやすい方や、行動範囲が限定されるなど一部の業務の環境に対応しにくいなど、様々な方がいらっしゃるでしょう。チームでフォローし合う体制を作り、皆の知恵を絞ってフォローし合うことで、障がい者でなくても、個人の事情でお休みしたり、体調を崩した方が時間調整しながら気兼ねなく働けるなどの働きやすい環境を作り、離職防止に繋がります。
まとめ
最後に、なんのために事業をするのかと言えば、社会に貢献するためです。訪問看護の事業は素晴らしい社会貢献ですが、更に障がい者雇用についても考えていただきたいと思います。パラリンピックが終わりましたが、障がいがあっても生き生きと目標に向かってチャレンジする姿に感動しました。職場の中でも生き生きと活躍できる社会にしたいと思った方は少なくないでしょう。
幸田 千栄子 様
多摩大学医療・介護ソリューション研究所 副所長・シニアフェロー 輸送用機器メーカーにて人事・人事企画・採用・教育・女性活躍推進・秘書などに従事。2000年公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了し、公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。2009年5月から1年間、サービス産業生産性協議会スタッフとしてコンサルタントと平行して任にあたり、サービス産業の生産性向上PJに参画すると同時に顧客満足度・従業員満足度調査開発・設計を行う。 |
本シリーズ第3回では、障がい者雇用について解説いただきました。次回は「高齢者雇用」について解説いただきます。