訪問看護におけるコミュニケーションのポイント!雑談を取り入れよう!
看護師に求められる能力の一つに、「コミュニケーションスキル」があります。患者や利用者を身体的・精神的・社会的側面からサポートするためには、コミュニケーションを通して看護の対象者と信頼関係を構築する必要があります。訪問看護では、病棟看護と比較し一人ひとりの利用者と関わる時間が制限されているため、より効率的・効果的にコミュニケーションを図り、アセスメントにつなげる必要があります。
今回は、訪問看護において利用者に寄り添ったケアを提供するためのコミュニケーションのポイントと雑談の活用法、について紹介します。利用者とのコミュニケーションにつまずいている人の参考になるはずです。
目次 ■ 訪問看護師に求められる能力とは? ■ 利用者とのコミュニケーションが必要な理由! ■ ココが困る!訪問看護のコミュニケーションでつまずきやすいシーン ■ 苦手な方は参考に!コミュニケーションに役立つ5つのポイント ■ 業務に活用!信頼関係の構築は雑談から始めてみよう! ■ まとめ |
訪問看護師に求められる能力とは?
訪問看護師に求められる能力には、基本的な看護技術や知識は大前提として、コミュニケーション能力、観察力、行動力、アセスメント力、創作力などがあります。
中でも、コミュニケーション能力は欠かせません。訪問看護では、看護の提供場面が利用者の生活の場であることも、病棟看護との大きな違いです。利用者だけでなく、利用者の療養生活を支える家族とも、密にコミュニケーションをとる必要があります。利用者の生活スペースに上がって看護を提供するため、もちろん失礼のないように注意しなければなりません。「近すぎず遠すぎず」の適度な距離感が必要です。
利用者とのコミュニケーションが必要な理由!
先ほど記載した通り、訪問看護師が一人ひとりの利用者と関われる時間には限りがあります。訪問している間は、神経を研ぎ澄ませて利用者やその療養環境を観察しますが、その間の観察だけで利用者の全てを把握することは困難です。限られた時間の中で、利用者の体調や症状、治療状況はもちろんのこと、生活状況や家族のサポート状況まで幅広く情報収集し、より良い療養生活をサポートするためのアセスメントを行い、ケアにつなげるのが訪問看護師の役割であるからです。
そこで、コミュニケーションが重要になってきます。訪問看護師が行うコミュニケーションの目的は、楽しい会話というよりも、利用者や家族の気持ちを受け取り、苦しさを共有し、理解し合うことです。そのため、単に会話が上手というより、利用者に心から真剣に向き合って、利用者が発するメッセージを上手に受け取り、フィードバックすることが大切です。
ココが困る!訪問看護のコミュニケーションでつまずきやすいシーン
看護師は専門職でありプロであるため、対象者に合わせてコミュニケーションスキルを巧みに使いこなす必要があります。しかし、時には思うようにコミュニケーションをとることができず、困ることもありますよね。そこで、訪問看護においてコミュニケーションにつまずきやすい場面について、いくつか紹介します。
まず、「医療者」と「利用者」という立場や知識の相違による会話の食い違いについてです。訪問看護師は、医療知識が豊富で、日々の業務においても多数の医療専門用語を使用します。一方、利用者は一般人であり、医療用語には精通していません。また、疾患や治療について自分で一生懸命勉強してある程度知識がある利用者もいますが、そうでない利用者もいます。このように、知識量や立場の違いから、会話に食い違いが起こってしまうことがあります。
多くの医療ケアを行っている利用者は、訪問中の看護度も高くなるため、ケアに充てる時間がどうしても長くなりがちです。ケアをしながら効率的にコミュニケーションがとれることが理想ですが、例えば「人工肛門」「人口膀胱」「人工呼吸器」等、観察やケアに時間がかかる処置がある場合、なかなか思うようにコミュニケーションがとれないまま訪問時間終了となってしまうこともあります。
利用者には、さまざまな性格の人がいます。話すことが好きな人、反対に自分のことを積極的に話したがらない人もいます。看護師が頑張ってアプローチしても、利用者のもともとの性格や看護師に対する緊張・遠慮等から、必要な情報について聞き出せず、壁を感じることもあります。
苦手な方は参考に!コミュニケーションに役立つ5つのポイント
コミュニケーションで悩む場面について紹介しました。利用者に心の壁を感じたケースでは、特にコミュニケーションを難しく感じることでしょう。しかし、工夫次第ではコミュニケーションを充実させることが可能です。コミュニケーションのポイントを確認し、利用者へのアプローチを諦めないでください。
訪問看護師に、利用者とのコミュニケーションの上で大切にしてほしいのが「雑談」です。訪問看護師は、訪問中に利用者から得るべき情報が多数あり、どうしてもそちらに気を取られがちです。しかし、利用者からしてみれば、唐突に体調や悩みについて質問攻めに合ったら、答えづらいことでしょう。まず、訪問看護師は、利用者との信頼関係を構築することを第一に考えるべきです。人は誰でも、自分の信頼できる相手に「だけ」大切なことや胸の内を話したいと考えます。利用者にとって、訪問看護師が「何でも話せる」信頼できる相手となるように、まずは雑談を通して距離を縮めましょう。
利用者が話しやすい環境を整えるために、「ゆっくりと話せる時間を作る」ことが重要です。訪問看護師がせかせかと動いていたり、忙しそうな雰囲気を醸し出したりしてしまうと、利用者は言いたいことがあったとしても話しにくくなってしまいます。限られた訪問時間の中でコミュニケーションのためだけの時間を確保することは簡単ではありませんが、常に意識を持つだけでも違ってきます。まずはたった5分でも良いので、コミュニケーションだけに当てられる時間を作るように心がけましょう。
共感の姿勢を持ち、傾聴することも忘れてはいけません。利用者は、疾患や障害のこと、症状のこと、療養生活のこと等など、たくさんの不満や悩み、やるせない気持ちを抱えています。訪問看護師は、どんな些細なことでも利用者の話に耳を傾け、共感することを忘れないようにしましょう。
看護師としての視点から利用者の話を否定したり訂正したりしたくなることもあるかもしれませんが、まずは利用者が話してくれることに感謝し、受け止める姿勢を持ちましょう。また、あまり話すのが得意ではない利用者の場合、つい看護師が色々な話しをしてしまいがちですが、「聞くこと」を意識し、利用者から話しを引き出しましょう。
共感や傾聴はもちろん大切ですが、時には看護師自身が利用者に対して感情や思考の自己開示を行うことも必要です。利用者との間に信頼関係を築くには、お互いのことを知ることが重要になります。利用者のことだけでなく、看護師自身がどんな人であるのかを利用者に知ってもらえるよう努力しましょう。
立場の違いによる会話の食い違いは、療養指導等の場面では特に危険です。
食い違いを防ぐためにも、専門的な医療用語は出来る限り使わず、利用者が正しく理解できるような話し方を心がけましょう。
業務に活用!信頼関係の構築は雑談から始めてみよう!
先ほどのポイントでも説明した通り、コミュニケーションに苦手を感じている方は雑談から始めてみてはいかがでしょうか。しかし、一言に「雑談」といっても、なんでもかんでも話せば良いというわけではありません。天候や気温、髪型や服装等、利用者の体調や生活の変化につながるような話題から会話を広げていけると良いです。何を話してよいかわからない方は次のような話題を話してみるのも良いでしょう。
- 家族の話し(特に孫のことや子育て、家事など)
- 現役時代の仕事
- 青春時代のストーリー
- 健康に関する話
- 地域性のある話題
- 過去に行った旅行先
- 食べ物(好きな食べ物や普段食べているもの)
また、利用者の食生活について情報収集したい場合、唐突に「普段どんなものを食べていますか?」と聞くのではなく、「私はどうしても料理が苦手で、お惣菜ばかり買って食べてしまいます。〇〇さんはいかがですか?」といったように、自分の話をしてからオープンクエスチョン(開かれた質問)を取り入れます。そうすることで、利用者は訪問看護師に対して心を開きやすくなります。
まとめ
今回は、訪問看護におけるコミュニケーションのポイントと雑談の取り入れ方について紹介しました。利用者とのコミュニケーションが苦手と感じている方がこの記事を参考にまずは雑談から始めてみてはいかがでしょうか。
また、より良いコミュニケーションをとるためには利用者の情報を把握しておくことが大切です。訪問看護電子カルテ『iBow』を活用すれば日々の看護記録だけでなく、電話対応等の細かな情報まで記録に残します。全ての記録を訪問前や訪問中に確認できるため、より細やかなケアの提供が可能となり、円滑なコミュニケーションはもちろんのこと、看護サービスの質の向上にもつながります。利用者との信頼関係の構築のためにも、iBowを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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