訪問看護と労務~健康経営について考える~

訪問看護と労務~健康経営について考える~

スタッフの健康を経営側から考える「健康経営」という言葉があります。今回の記事では、健康経営について多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長・シニアフェロー/公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタントと様々な分野でご活躍されている幸田 千栄子 様に解説いただきます。

健康経営ということばを、ご存知でしょうか?初めて目にされる方もいらっしゃると思いますが、従業員一人ひとりは大切な存在であり重要な戦力です。健康で働きつづけられるように従業員の健康に配慮した経営について考えましょう。

1.健康経営とは

健康経営とは、アメリカの経営心理学者のロバート・ローゼンが提唱した概念で、企業の持続的成長を図る観点から従業員の健康に配慮した経営手法のことです。従業員の健康が企業及び社会に不可欠な資本であることを認識し、従業員への健康情報の提供や健康投資を促すしくみを構築することで、生産性の低下を防ぎ、医療費を抑えて企業の収益性向上を目指す取り組みをさします。

2.健康経営優良法人とは

(1)健康経営銘柄

経済産業省と東京証券取引所と共同で、企業による健康経営の取り組みを促進することを目指して、「健康経営度調査」の回答結果をもとに、1業種1社を基本として健康経営銘柄を選定しています。

(2)健康経営優良法人認定制度

経済産業省が健康経営の普及促進に向けて、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度です。

大規模法人部門(上位法人には「ホワイト500」の冠を付加する)と中小規模法人部門(上位法人には「ブライト500」の冠を付加する)があり、ロゴマークの使用が可能となります。認定されるには申請が必要です。

3.健康経営に取り組むには

まずは、自社の経営戦略の中に位置づけ「健康経営」に取り組むことを内外に公表しましょう。自社の従業員の健康に関する現状を分析・把握して課題をピックアップします。その課題を解決するための目標を設定して、具体的にいつまでにどのようにして目標を達成するか解決策を策定します。

例えば、(経済産業省健康経営優良法人2021小規模法人部門取り組み事例から)以下のような取り組みがあります。

  • 毎日朝礼時に「腰痛体操」と、従業員の健康状態の確認と報告の徹底を継続。
  • 定期健診の結果で再検査が必要な場合の受診勧奨に注力。
  • 女性の健康保持・増進に向け、婦人科健診の受診勧奨、妊娠中の女性労働者に対する業務上の配慮、女性特有のがん検診の費用補助制度(女性特有のがんの検診受診勧奨と検診費用の全額負担) に関する取り組みについて明文化し周知。
  • 「バースデー休暇」を設け、年次有給休 暇取得のきっかけとなるよう、共有カレンダーに全員の誕生日(月日のみ)を表記。

健診前30日間を「運動強化月間」とし、各自で決めた目標に基づいて「食事・運動・禁煙」等の取り組みを行う。楽しみながら健康的に標準 B M Iを目指すもの。結果により表彰も行っている。

事前に病気を予防する取り組みが健康経営ともいえ、社員を大切にする取り組みです。個人にとって健康で働けることは一番の幸せです。組織にとっては、一人の職員が病気になって休む場合には、皆でフォローすることになります。少人数の組織であればあるほど一人ひとりに分担していただく負荷が大きくなりますので、自組織にあった取り組みを始めてみましょう。

 

 

幸田 千栄子 様

多摩大学医療・介護ソリューション研究所 副所長・シニアフェロー
公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタント

輸送用機器メーカーにて人事・人事企画・採用・教育・女性活躍推進・秘書などに従事。2000年公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了し、公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。2009年5月から1年間、サービス産業生産性協議会スタッフとしてコンサルタントと平行して任にあたり、サービス産業の生産性向上PJに参画すると同時に顧客満足度・従業員満足度調査開発・設計を行う。

 

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