訪問看護の未来を見据えて:業界最新動向#5
本コラムでは訪問看護業界に関わる最新の動向を探っていきます。今回のテーマは指定訪問看護の提供に関して取り上げます。
訪問看護提供で厚労省が指針発表 「訪問日数等の一律化」は不可
10月22日、厚生労働省保険局医療課より地方厚生局と都道府県に対して「指定訪問看護の提供に関する取扱方針について」という通知が発出されました。主な内容は以下の通りです。
① 指定訪問看護は、利用者の心身の特性を踏まえて、利用者の療養上妥当適切に行い、日常の療養生活の充実に資するようにするとともに、漫然かつ画一的なものにならないよう、主治医との密接な連携のもとに看護目標及び訪問看護計画に沿って行うこと。
② 指定訪問看護の提供については、目標達成の度合いやその効果等について評価を行うとともに、訪問看護計画の修正を行い、改善を図る等に努めなければならない。訪問看護の日数、回数、実施時間及び訪問人数については、訪問看護ステーションの看護師等が訪問時に把握した利用者や家族等の状況に即して、主治医からの訪問看護指示書に基づき検討されるものである。訪問看護ステーションが個別の状況を踏まえずに一律に訪問看護の日数等を定めることや、利用者宅への訪問に直接携わっていない指定訪問看護事業者の開設者等が日数等を定めるといったことは認められない。
厚生労働省保険医療課 【事務連絡】指定訪問看護の提供に係る取扱方針について
利用者の状態にかかわらず一律に回数を定めて訪問看護を行っている事例等を受けて、今回の厚生労働省の通知では、こうした訪問看護の提供は「適切ではない」という判断を示した形となりました。
今回の通知で、特に重要なのは②の後半です。「たとえ訪問看護事業所の開設者であっても、直接訪問に携わっていなければ、訪問の回数や時間を定めることはできない」としています。訪問看護に限らず、介護・医療は「利用者個々の状態に応じたサービスの提供」でなければ意味がありません。通知では、この考え方が改めて示され「目標」などといった名目で会社・法人として一律サービス提供量を決めること自体に「NO」が突き付けられる形となりました。
ただし、目標の設定とその達成率は、事業所や管理者をはじめとする職員の評価・考査にも大きく関わります。仮に目標を設定できないとなったら、どのような評価判断を用いるのか、また職員のモチベーションをどのように維持していくのか、訪問看護事業者には新たな課題が突き付けられたといえます。
まとめ
以前にも、高齢者住宅に併設された訪問介護や通所介護で似たような問題が指摘されていました。結果として、これらの介護保険サービスは、同一建物減算が厳格化されるなどして、運営者にとっては経営の悪化につながりました。今回の件も、次回の介護報酬改定・診療報酬改定に影響を与えることが考えられます。訪問看護事業者としてはそれらを見据えた経営が求められます。また、今回の通知を機に、監査や指導を強化する自治体が増えることも考えられます。
西岡一紀(Nishioka Kazunori) フリーライター1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。 2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。 2019年9月退社しフリー転向。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に新聞・会報誌・情報サイトでのインタビューやコラム執筆で活動中。 |