訪問看護と労務~働き方改革の目的とは~

 

2019年4月1日より、働き方改革関連法案の一部が施行され、現在「働き方改革」は企業の規模に関係なく、重要な経営課題の一つとなっています。

今回は、訪問看護ステーションの経営をしている方や、マネジメントをしている方に向けて、働き方改革の目的について、多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長・シニアフェロー/公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタントと様々な分野でご活躍されている幸田 千栄子 様に解説いただきます。

働き方改革の目的とは

厚労省は働き方改革の目的を以下のように示しています。

「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
(※参考)厚生労働省「働き方改革」の目指すもの

日本の生産性を上げることを目指しています。

労働生産性の国際比較

日本の一人あたりの労働生産性は、OECD加盟諸国の中で26位です。

(※引用)公益財団法人日本生産性本部 労働生産性の国際比較2020年

かつて1990年台と、2000年の製造業だけを見ると日本は1位でしたが、その製造業も現在は16位です。一人あたりの労働生産性とは、GDP(国民総生産)を就業者数(又は就業者数×労働時間)で割ったものです。企業では、成果(付加価値)を社員数で割ったものとなります。労働生産性を上げるということは、一人ひとりが高付加価値を生む必要があります。その為には、多様な人が働ける環境を作る必要があります。多様な人が働きやすい環境は「全ての働く人が働きやすい環境」と言うことができます。働き方改革というと、現実的な残業時間を減らすことや有給休暇を取得することなど、実施レベルのことに目が行きますが、この多様な人が働ける環境を整え、一人ひとりが高付加価値を生む日本にしていくことを目的にしていることを理解して取り組んでいただきたいと思います。そのためには、付加価値を上げるか、少ない人数(労働時間)で今の仕事を実施するかの方法しかありません。訪問看護ステーションであれば、サービスの種類を増やすなどで付加価値を上げるか、そのサービスの質を落とさずに少ない人数(労働時間)で実施するかということです。

働き方改革の施策の1つである「残業時間削減」は、少ない労働時間で今の付加価値を生むことが、目的を実施するために重要な課題として国が主導して実施しているのです。

 

幸田 千栄子 様

多摩大学医療・介護ソリューション研究所 副所長・シニアフェロー
公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタント

輸送用機器メーカーにて人事・人事企画・採用・教育・女性活躍推進・秘書などに従事。2000年公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了し、公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。2009年5月から1年間、サービス産業生産性協議会スタッフとしてコンサルタントと平行して任にあたり、サービス産業の生産性向上PJに参画すると同時に顧客満足度・従業員満足度調査開発・設計を行う。

 

今回は、働き方改革の目的について解説いただきました。「働き方改革」はうまく進めることができれば、企業の生産性向上だけでなく、従業員モチベーション向上などにも繋がります。「働き方改革」を推進していくためにも、法改定のこまめな確認や、ICTの活用などを行い、労働環境を整えることが大切です。

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