2024年度訪問看護の診療報酬 改定ポイントのまとめ
まず、2024年度の診療報酬の改定率は0.88%のプラスとなりました。さらに、訪問看護については看護師等の処遇改善、DX推進による業務効率改善推進などを目的に、加算をはじめ様々な改定が行われました。
訪問看護ステーションの機能に応じ評価を見直し
24時間対応加算
これまで月1回6,400円だった24時間対応加算が、イ(月1回限り6,800円)、ロ(月1回限り6,520円)の2区分となりました。
イ(月1回限り6,800円) | 24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取り組みを行っている場合 |
ロ(月1回限り6,520円) | 上記以外の場合 |
イの算定要件は
1.夜間対応した翌日の勤務間隔を確保
2.夜間対応に関わる勤務の連続回数が2回まで
3.夜間対応後の暦日の休日を確保
4.夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫
5.ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減
6.電話等による連絡・相談を担当する者への支援体制確保
6項目のうち、1、2のいずれかを含む2項目以上を満たすことです。
また、以下の6項目全てを満たしていれば、看護師等以外の職員を、連絡・相談対応のための担当者に配置することが可能となりました。
1.看護師等以外の職員が連絡相談に対応するマニュアルを整備
2.緊急訪問の必要性の判断を保健師または看護師が速やかに行える体制と、緊急訪問可能な体制の整備
3.連絡相談を担当する看護師等以外の職員の勤務体制・勤務状況を管理者が明確化
4.看護師以外の職員が連絡相談を受けた際に、保健師または看護師へ報告する。また、報告を受けた者はその内容を訪問看護記録書に記載
5.前記1~4について利用者・家族に説明し、同意を得る
6.連絡相談を担当する看護師等以外の職員に関して地方厚生(支)局長に届け出
訪問看護管理療養費の改定
訪問看護ステーションの機能強化を図る観点から、訪問看護管理療養費 の要件及び評価が見直されています。
月の初日の訪問の場合はいずれも表の通り引き上げとなりました。また機能強化型訪問看護管理療養費1については「専門の研修を受けた看護師の配置」が新たに算定要件に加わりました。月の2日目以降の訪問の場合は、従来の1日3,000円が、1日3,000円の訪問看護管理療養費1と、1日2,500円の訪問看護管理療養費2に区分されました。訪問看護管理療養費1の算定要件は以下の通りです。
訪問看護ステーション利用者のうち、同一建物居住者の占める割合が7割未満で、「別表第7、第8に該当する者への訪問看護について相当な実績がある」「精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者のうち、GAF尺度が40位以下の利用者数が月に5人以上」のいずれかに該当する。なお、2024年3月31日時点で訪問看護事業を行っている場合は、同年9月30日までは訪問看護管理療養費1の基準に該当するものとみなす経過措置が設けられています。
退院支援指導加算
医療ニーズの高い利用者の退院支援を目的に退院支援指導加算の要件も見直され「1回の退院支援指導90分超」が「複数回の退院支援指導の合計90分超」となりました。
乳幼児加算
母子への訪問看護推進を目的に訪問看護基本療養費の乳幼児加算の見直しが、精神疾患を合併した妊産婦支援を目的にハイリスク妊産婦連携指導料に要件が追加されました。前者は、従来区分については単価を1日1,500円から1,300円に引き下げる一方で、超重症児など一定の条件を満たす場合については1日1,800円に引き上げました。後者は、多職種カンファレンスを2ヵ月に1回開催した場合に算定可能ですが、この多職種連携の対象に、患者を担当する訪問看護ステーションの看護師等が加わりました。
別に厚生労働大臣が定める者に該当する場合 | 1,800円/日 |
上記以外の場合 | 1,300円/日 |
緊急訪問看護加算
逆に減算になったのが「緊急訪問看護加算」です。従来の1日2,650円がイ、ロの2区分となり、月に15日以上の訪問を行った場合に適用されるロは2,000円となりました。また、算定要件として、緊急訪問を実施した場合は日時や内容の記録、加算を算定する理由について記載することが求められます。
緊急訪問看護加算 | 月14日まで | 2,650円/日 |
月15日以降 | 2,000円/日 |
人員や設備、運営等の基準についての見直し
訪問看護ステーションにおける管理者の責務の明確化
訪問看護ステーションの管理者ついて責務の明確化と人員・運営基準の見直しが行われました。これまでは、管理上支障がない場合は「同一敷地内にある他の事業所、施設等の職務に従事することが可能」という規定でしたが、「同一敷地内の」が削除されました。
虐待防止及び身体拘束等の適正化の推進
利用者の虐待防止・身体拘束の適正化の推進も図られました。「訪問看護の具体的取扱い方針」内に、以下の文言が追加されています。
①訪問看護の提供に当たっては、利用者等の生命・身体を保護するため、緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限することを行ってはならない、②身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為を行う場合に、その態様や時間、利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない
訪問看護医療DX情報活用加算
運営効率化の方策としては訪問看護医療DX情報活用加算(月50円)新設があげられます。訪問看護ステーションの看護師等が、オンライン資格確認により利用者の診療情報を取得し訪問看護の実施に関する計画的な管理を行っている場合に算定可能です。
訪問看護医療DX情報活用加算(新設) | 50円/月 |
算定要件
1.オンライン請求を実施
2. オンライン資格確認を行う体制の整備
3. 前記2の体制に関する事項と、質の高い訪問看護を実施するために十分な情報を取得・活用して訪問看護を行うことについてステーションの見やすい場所に掲示
4. 前記3の掲示事項について、原則ウェブサイトに掲載
※2024年3月31日時点で指定を受けている訪問看護ステーションは、25年5月31日までは4に該当するものとして扱われます。
レセプト情報の活用推進を目的に、訪問看護指示書・精神科訪問看護指示書の記載事項と様式が見直されました。具体的には「主たる傷病名」のところに「傷病名コード」の項目が追加されています。
訪問看護ベースアップ評価料
処遇改善を目的にした訪問看護ベースアップ評価料が新たに設けられました。算定要件は2024年度・25年度の職員の賃金改善にかかる計画を策定していることなどです。報酬は2段階制で、評価料Ⅰが1ヵ月780円。これによる見込額が対象者の給与総額の1.2%未満となる場合には、評価料Ⅱが上乗せされます。Ⅱの具体的な報酬額は規定の計算式に基づき10円~500円までの18段階となります。
スコア(計算結果) | 区分 | 算定料(※) |
0を超える | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)1 | 10円 |
15以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)2 | 20円 |
25以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)3 | 30円 |
35以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)4 | 40円 |
45以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)5 | 50円 |
55以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)6 | 60円 |
65以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)7 | 70円 |
75以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)8 | 80円 |
85以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)9 | 90円 |
95以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)10 | 100円 |
125以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)11 | 150円 |
175以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)12 | 200円 |
225以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)13 | 250円 |
275以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)14 | 300円 |
325以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)15 | 350円 |
375以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)16 | 400円 |
425以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)17 | 450円 |
475以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)18 | 500円 |
電子カルテiBowは報酬改定にも対応
電子カルテ「iBow」は、令和6年度の介護・診療報酬改定に対応しています。訪問看護ステーションのニーズに応じた機能が搭載されており、日々の記録からレセプト作成までの業務を効率化します。報酬改定に伴う変更点やオンライン請求・資格確認に対応予定です。さらにiBowのカスタマーサポートは、システムの使い方だけでなく、加算や制度についての相談も受け付けているため、診療報酬改定直後でも安心して利用できます。
最後に
ここで紹介した報酬改定に関する各種情報は、厚生労働省がホームページ等で公開しています。これに加えて解釈通知なども適時発表されていますので、こまめにチェックし、常に最新の、正確な情報を得るようにしましょう。
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