スタッフを守ろう!訪問看護におけるクレームストーカー!クレームストーカーの狙いと対策

訪問看護におけるクレームストーカー

訪問看護で多くの利用者と出会うなかで、電話口で執拗に文句をつけてきたり過度な謝罪を求められたり、つきまとわれたりした経験はありますか?もしかしたらそれはクレームストーカーかもしれません。「クレームストーカー」を発生させないためにも、利用者との距離が近くなりやすい訪問看護師では、利用者との適度な距離感をもちながら業務を行うことが重要です。しかし、クレームストーカーという言葉を初めて聞いた方もいるのではないでしょうか?

そこで今回は「クレームストーカーとは何か」「クレームストーカーの狙いは?対策は?」など、クレームストーカーについて紹介します。

目次

クレームストーカーとはなに?クレームの種類や狙い

まず「クレームストーカー」とは何なのか、クレームの種類や狙いを確認していきましょう。

 

 クレームストーカーとは 

クレームストーカーとは、商品やサービスに関する「苦情」を名目にして、接客業などの担当者にしつこくつきまとうことをいいます。明確な定義はありませんが、恋愛感情の好意の感情もしくはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足することを目的にしながら、担当者の異性(時に同姓)にしつこくつきまとう行為などがクレームストーカーの特徴です。

 

 クレームの種類 

クレームは、クレームの内容と要求の種類によって次のように分けることができます。利用者や家族のクレームがどの分類に入るかを分析した上で対応するのが望ましいでしょう。

  1. クレームの内容が妥当で、要求も対応可能なもの
  2. クレームの内容は間違っているが、要求は対応可能なもの
  3. クレームの内容は妥当だが、要求は対応不可能なもの
  4. クレームの内容は間違っており、要求も対応不可能なもの

 

 

 クレームストーカーの狙い 

クレームストーカーはターゲットとなった相手方に対して恋愛感情の充足などを目的としてクレームをつけている場合が多いです。一方で、金銭を目的としている場合やパーソナリティ障害などの精神疾患、交渉のプロセスとしてクレームをつけることそのものを楽しんでいる場合などもあります。

医療機関における特殊性とは?クレームストーカーの対応策

つきまといやストーカー行為などは「ストーカー行為等規制等に関する法律」(ストーカー規制法)で取り締まられていますが、クレームストーカーの場合は、表向きはあくまでクレームなので同法の適用になりにくいと考えられています。とはいえ、内容によっては同法以外の法律違反の適応になる場合やその他の法的手段を行える場合があります。

 

 医療機関における特殊性 

医療機関では、心身の病気で医療機関にかからなければならない患者と、忙しいなかで医療や看護を行う医療者の間で要求の程度に大きな差があります。そのため心理状態や医療情報量も異なっているので、行き違いが起きやすく、結果としてクレームにつながりやすいという現状があります。特に訪問看護は訪問する時間や日時の急な変更、遅刻などが頻繁に起こってしまう仕事です。また、利用者の自宅にお邪魔するため、利用者本人や家族の目があるなかで看護や処置を行わなければならないことから、声かけや言葉遣いの一挙手一投足をじっくりと見られている場合もあります。そのため、訪問看護では一つの行動がクレームにつながりやすく、また利用者宅で仕事をする特殊な職業なため、誰も助けを呼ぶことができない状況が生まれてしまう可能性が高まるというものです。

上述したように、クレームストーカーはあくまで顧客によるクレームとして判断されることが多いので、客観的に「恋愛感情」などの言質が本人から取れない限りストーカー規制法では対処できないというのが現実です。しかし、クレームストーカーへの対応を社員個人に任せてしまうのは会社としても大変危険です。もし、社員が業務中に事件に巻き込まれてしまった場合、社員に対しての安全配慮義務を怠ったとして損害賠償責任が生じる可能性があります。クレームストーカーへの対策としては、次のことを参考に組織として対応していくのが理想です。

 

 体制の構築 
訪問看護にとってクレームストーカーの発生は誰かの過失によるものではなく、避けられない事柄として考え、組織として体制づくりを構築していきましょう。実際に問題が発生した際に誰に伝えどのように対応していくかをマニュアル化するなどが挙げられます。

 

  具体的な事案発声の場合の対応策 
具体的な対応策として以下の項目に注意して対応してください。

・先入観をもたずに患者の話を聞く
クレームの分類のところでも述べましたが、クレームのなかには正当なクレームもあるので、クレーマーと決めつけて対応してしまうのは避けた方が良いでしょう。話がこじれてしまい問題の解決が難しくなってしまいます。

・交渉、話し合いを行う際は複数で対応する
相手が話した内容がコロコロ変わってしまったり、言った言わないというトラブルが発生しやすいため、交渉は複数で対応し書記役を決めておくと安心です。

・クレームの対象になる職員は原則として担当を変える
担当者がすべてを一人で抱え込まないよう、担当を兼行することが大切でしょう。担当を変更するのは悪質なクレーム対応に日々個人で対応していると、精神的に追い詰められ、対応者自身が心を病んでしまい、休職に追い込まれてしまうというケースも少なからず存在するからです。

・一貫した対応をして、それを記録する
相手とのやり取りは時系列で記録をつけて、担当者が変更となった時でも一貫した対応ができるようにしておくことが望ましいです。あらかじめ書式を作っておいたり、録音するなどの方法があります。相手の了解は必要ないですが、建設的に話を進めたい旨を説明し記録を取ると伝えることで相手を落ち着かせる効果もあります。

・不当な要求や行為に対しては警察や外部の専門家へ相談する
ストーカー規制法の対象とならないと判断される(確証がない)場合でも警察への相談や被害の申告をするのをおすすめします。クレーム行為のなかで、威力業務妨害罪や不退去罪、脅迫罪、恐喝罪、強要罪などの適応になる場合もあります。逮捕でなくとも厳重注意により事実的な効果があることもあります。また、裁判所で面会禁止などの仮処分が発令されるケースもあるため、顧問弁護士に相談するのも大切です。

・クレームが繰り返されるため、不当な要求を安易に達成させない
あいまいな態度はとらず、イヤならイヤと、はっきり拒否の姿勢を伝えましょう。下手に出てしまうと、相手は調子に乗ってしまい、さらに被害が酷くなる可能性があります。要求をされたとしても、それはけっして了承してはいけないものです。毅然とした対応を取り、無茶な要求をはねつけることが求められます。

・解決を急がない
相手の関心が他に移る、もしくは相手が諦めるまで交渉は根気よく続けていくことが必要です。解決を急ぐことで相手のつけ入る弱みを見せてしまう可能性があるためです。どうしても対応が困難な場合は、弁護士に対応を任せるなどの法的な手段の検討も考えていかなければなりません。

経営者は知っておこう!職員に対する義務

法律上、経営責任者は労働者の職場環境の安全に配慮する義務があります。これは労働契約法の第5条で定められています。この義務が果たされずに利用者や家族からの行為でスタッフの生命や心身が傷つけられた場合、安全配慮を怠ったとしてスタッフの被った損害賠償をする義務が発生します。現場任せにするのではなく、組織として医療スタッフを守っていくことが大切です。これはセクハラなどのハラスメント一般にもいえることです。特にセクハラに関しては男女雇用機会均等法の第11条で定められています。これは職場だけでなく、利用者やその家族からのセクハラについても医療機関側で処置を講じる責任があると解釈されています。クレームストーカーとまで呼べなくても、利用者による嫌がらせやいじめなどのハラスメント行為に対しても経営者は責任をもって対処しなければなりません。

まとめ

今回ご紹介した通り経営者には労働環境を整える義務があります。それにはクレーマーやセクハラ行為などが起きた際の体制づくりはもちろんですが、利用者の情報共有や日々の記録が大切です。利用者のわずかな変化や言動を記録に残し、誰でもすぐに確認できるような環境をつくっておくと、マネジメントと経営層もすぐに確認ができるようになります。

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