訪問看護でのクレーム対応!~原因と再発・発生予防策~
どんなサービスを提供するにしても「利用者からのクレームがない」ということはほとんどあり得ません。それは訪問看護の領域においても同様で、クレーム対応をする私たちスタッフ個人にとってはストレスの原因となり、一歩対応を間違えてしまうと、組織そのものの評価を大きく下げてしまいます。ですが「クレーム」というのは言い方を変えると「利用者の心の声」ともいえます。利用者の心の声を聞き適切に対応することで、今まで以上に満足してもらえるようになるでしょう。今回は、そんなクレームというマイナス要素をプラス要素へ転換できるような対応方法と予防策について紹介していきます。
目次 ■ 訪問看護におけるクレームとは?クレームの原因を知ろう ■ 発生時にはすぐ対応!クレームに合わせた5つの対処の流れ ■ クレーム前に対策を!事前の予防策 ■ クレーム対応に情報共有!便利な訪問看護専用電子カルテ『iBow』 ■ まとめ |
訪問看護におけるクレームとは?クレームの原因を知ろう
訪問看護などの医療関係におけるクレームとして多いのは、以下の5つになります。
- 期待したサービスを提供してくれない
- 実施内容と利用料が釣り合わない
- 訪問看護師が時間に遅れる
- 愛想がない、説明が雑
- 利用者のことを考えていない
これらのクレームは5つの欲求(①機能・品質欲求・②経済的欲求・③効率・便利性欲求・④愛情欲求・⑤尊厳欲求)からくるといわれています。ここでは5つのクレームの代表例と5つの欲求を関連させて、なぜこのようなクレームがくるのかを紹介していきます。
期待したサービスを提供してくれない
サービスの利用者は当然、質の高い医療や看護を求めています。そのため、利用者が求めている期待を下回った時にクレームとして私たちの元に返ってきます。具体的な例を挙げると、インスリンやその他薬剤の注射をする時にすごく痛い、ストーマ(人工肛門)の交換が下手ですぐにはがれてしまうなど技術のレベルが低いという声や、求めている情報を提示してくれない、安全の確保が十分ではないという声です。これらのクレームは、最先端で高度かつ安全な医療を提供してほしいという「機能・品質欲求」が満たされなかった際に発生するものです。こちらが適切なサービスを提供していても利用者にとって不満が残る内容であった場合、クレームになることがあります。
実施内容と利用料が釣り合わない
訪問看護で行う内容は、契約時間や利用者によって様々です。点滴の施行や入浴の介助など、目に見えて分かるような介入をする場合もあれば、内服確認や体調の確認といった目には見えない介入をする場合もあります。目に見えない介入の場合、利用者の中には何もしてもらっていないと感じ「なぜお金を払わなければいけないのか?」とクレームにつながるケースがあります。お金を払っているのだから何かしてほしい、何もしてくれないのにお金を払いたくないという「経済的欲求」が満たされなかった際に発生するクレームの代表です。これらは特に、サービスを受ける本人自身は訪問看護を必要と感じていないのですが、利用者の家族が心配をして訪問看護を導入している利用者宅に多く見られることがあります。
訪問看護師が時間に遅れる
利用者には利用者のスケジュールがあり、訪問看護師には訪問看護師のスケジュールがあります。1つ前の訪問でトラブルなどが起きた際には、次の訪問が遅れることもあります。病棟であれば他のスタッフが訪室すれば問題ないですが、訪問看護に至っては中々難しい現状があります。どんなに状況を説明しても、利用者の中にはその時間しか取れないという方もいるので、クレームにつながることもあります。他にも、施設への送迎をしてほしいのにしてくれない、掃除や買い物はしてくれないなど「効率・便利性欲求」に基づいた、サービスには含まれていないことを要求してくるというクレームもあります。
愛想がない、説明が雑
利用者の中には、訪問看護師による訪問を楽しみにされている方もいます。そんな状況の中でスタッフの対応が冷たいと、大きな不満につながることがあります。これらは、しっかりと時間をかけて大切に接してほしいという「愛情欲求」からくるものであり、スタッフの挨拶が雑、愛想がない、難しい言葉を並べて分かりやすく説明してくれないなど、利用者の感じ方にもよりますが親密な関係性を築けていない段階での言葉遣いや態度、相手の理解力を考えない説明などはすぐにクレームにつながります。
利用者のことを考えていない
利用者の中には自分の尊厳を非常に大事にされている方もいます。そんな「尊厳欲求」を傷つけられたと感じた際には深い悲しみを感じ、大きなクレームになることがあります。具体的には、さんざん訴えているのに話を聞いてくれない、訪問には来てくれているが自分のことを考えてくれているようには思えない、治療法や看護の計画が納得できないなどです。自分のことを大事に思ってくれていないと感じる態度や言葉が見られた時、もしくは、自分が納得できない時などが著明にクレームとして現れます。
発生時にはすぐ対応!クレームに合わせた5つの対処の流れ
冒頭でも紹介した通り、クレームというのは苦情ではなく利用者の心の声です。適切に対処できなければ信用を失うだけでなく、不信感やバッシングの対象となってしまいます。個人だけでその責任を負うことができればまだ良いかもしれませんが、所属する組織全体の印象を下げてしまうことがほとんどです。ですが逆に、適切な対処をすることができればそれまでより強固な信頼関係を築くことができます。そのための具体的な5つの対処方法を順番に紹介していきます。
謝罪する
どちらに非があっても、クレームが来るということは利用者にとって不利益なことが起きているということに間違いはありません。そのため、まずは不快な気持ちにさせてしまったことを謝罪する必要があります。クレームの内容が分かっているのであれば、できるだけ具体的に謝罪することで相手に伝わりやすくなります。
傾聴する
謝罪をしっかりとした上で、どんなクレームの内容なのかをしっかりと傾聴し原因の追究をしていきます。利用者がクレームを訴えてきている際には、感情が高ぶり、こちらの話が届かない場合がほとんどです。そのため、相手がどんなところに不満を感じ不快に思っているのかをしっかりと聞き出すことが必要になります。
アセスメントする
傾聴=情報収集をしっかりと行った上で、相手のクレームの原因は訴えてきた事象そのものを解決すれば良いのか、もしくは、ただ謝罪してほしいだけなのか、自己中心的な要求なのかを自分の中でアセスメントします。アセスメントの結果得られた結論を、相手の気持ちも考えながら自分の主張として伝えていきます。
一緒に解決策を考える
クレームを訴えてきている相手に対しては、いくら合理的に謙虚に話しても納得してもらえない場合があります。その時には、相手と一緒に問題を解決するという姿勢が有効です。解決策を考える段階で相手も巻き込むことで「自分が考えた解決策」となるため納得してもらえる場合が多く、なによりその後のクレームにつながりにくくなります。
感謝を伝える
最後に重要なのは、クレームに対して感謝をすることです。クレームを受ける側も内容によっては、非常にストレスを感じることもあります。ですがそこをこらえて、「改善できる点を指摘していただいてありがとうございました」と感謝の意を最後に伝えることで、相手からの印象を良くすることができます。表面だけ取り繕っても意味がないのでは?と思われるかもしれませんが、よっぽど理不尽なクレームでない限り、改善点を指摘していただいているという側面があります。加えて、感謝を伝えることは相手からの印象を良くするだけでなく、本当にそう思うことができれば自分のストレス軽減にもつながります。
クレーム前に対策を!事前の予防策
ここまで、訪問看護におけるクレームの原因やその対処方法について紹介してきましたが、クレームにおいて、再発・発生を防止するための「予防策」はとても大切です。利用者が不満を感じ、クレームを言ってくる場合は、感情的になっていることがほとんどで、どんなに適切な対応をしても聞く耳を持ってもらうことができない時もあります。 中には、こちらが適切な対応をしていても理不尽なクレームがくることもあります。クレームをなくすことは難しいかもしれませんが、事前に対策することでクレームを減らすことができます。ここではクレームの再発・発生の予防策について紹介します。
体制づくり
実際にクレームが起きた場合、どのようにクレーム処理をしているのか、責任者として誰が出るのか、日頃から取り決めておきましょう。クレーム対応をしていたら業務が回らなくなるようでは問題です。クレーム対応や謝罪が必要になった場合、すぐに謝りに行ける体制を整えておきましょう。また、一次対応でできること、できないこと、その権限についても、事前にステーションで基準を作っておくと対応もスムーズです。
利用者への対応をステーション内で統一する
「スタッフ全員が同じ対応を行うこと」が訪問看護を行う上では重要となります。例えば、スタッフによって対応が違う時に「この前のスタッフは対応していたのに今回はなぜしてくれないの?」と利用者は不満を持ってしまいます。そのため、細かなことですが、利用者からお茶を出された場合や訪問以外のサービス(片付けなど)を頼まれた場合、訪問時間を過ぎても引き留められた場合の対応方法を事前にステーション内で統一しておくことが大切です。
クレームはホウレンソウ(報告・連絡・相談)で共有する
クレームを担当者一人に抱えさせないことも重要です。一次対応の担当者が一人で全部終わらせる体制は、決して良いとは言えません。必ず上司や仲間とホウレンソウ(報告・連絡・相談)を徹底し、共有していきましょう。再発防止にもサービス向上にも役立ちます。報告の際、一次対応者は「自分は悪くない」と自己保身に走ったり「大変です!」と騒ぎ立てたりするばかりになってしまうケースもありますが、事実だけを報告するように日ごろから指導しておくと効果的です。結論から先に伝えるなど、報告の仕方を決めておくと良いでしょう。報告の仕方を徹底させておくと、利用者の事実確認の質も向上します。責任者も、報告を鵜呑みにせず、事実をきちんと把握するよう努めましょう。
クレーム対応に情報共有!便利な訪問看護専用電子カルテ『iBow』
クレーム対応や予防という観点からも情報共有というのは非常に重要ですが、訪問看護においては各地に訪問に伺うため、全員が集合して情報共有できる時間が限りなく少ないです。そんな訪問看護においては電子カルテシステム『iBow』が非常に有効です。
システムによってはタブレットで確認できる情報に制限があり、緊急時は限られた情報の中、利用者の対応をしなければいけないこともあります。また、電話対応など訪問記録以外の情報をステーション内の連絡ノートで管理している場合、情報共有不足や伝達忘れがクレームにつながる可能性もあります。
そこで、iBowは電話対応など、訪問記録以外の細かな情報までしっかり記録に残すことが可能です。クラウド型のシステムなので場所を選ばず最新情報を漏れなく・タイムリーに記録し、すぐに情報を共有することができ、活きた情報を組織内で共有することでクレーム対応のクオリティを上げ、信頼される組織を作っていくことができます。さらに、メンバー全員が把握すべき重要な情報は「未読情報」として各メンバーに通知され、確認漏れを未然に防ぐ機能も搭載されているため、クレーム対応のみならず訪問看護の質を上げることができる点も非常に魅力的です。
まとめ
今回は訪問看護におけるクレームの原因や内容、その対処方法について紹介してきました。利用者からのクレームを悪いものと捉えるのではなく、信頼関係構築のチャンス、改善点の発見と考えプラスに転換することで、必然的に適切な対応をすることができます。また、組織として統一したクレーム対応をするためには情報を共有できるシステムの導入が望まれます。iBowを活用しながら、利用者から信頼されるようなサービスを提供できるようにしていきましょう。
> 情報共有に便利なiBowの使用感をデモンストレーションでみる
また、様々な利用者と接する中で、電話口で執拗に文句をつけてきたり過度な謝罪を求められたり、つきまとわれたり「クレームストーカー」に発展する場合もあります。今回の記事を読んでいただいた方はこちらの記事もチェックしてみてください!
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