訪問看護における退院時共同指導加算・退院支援指導加算とは?【2024年度報酬改定対応】

退院・退所後の在宅療養をスムーズに進めるために重要な「退院時共同指導加算」と「退院支援指導加算」。病院や施設と訪問看護が連携し、利用者やその家族に適切な指導を行うことで算定が可能です。しかし、算定要件や回数、加算の適用範囲にはさまざまな注意点があり、適切な運用が求められます。本記事では、退院時共同指導加算と退院時支援加算を分かりやすく解説し、注意点についてもご紹介します。
医療保険の退院時共同指導加算とは?
医療保険の退院時共同指導加算とは、退院・退所する利用者やその家族に対し、訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く)が、入院・入所先の病院等の医師や看護師と共同で指導を行うことで算定できる加算です。「退院前」に指導することで算定が可能です。ここでは、医療保険における退院時共同指導加算の種類と単位数、算定要件、注意点について解説します。
種類と算定料金
種類 | 算定料金 |
退院時共同指導加算 | 8,000円/回
※特別管理加算の算定ができる利用者の場合、+2,000円/回を別途算定可能 |
算定要件
算定するには、以下の項目をすべて満たす必要があります。
- 病院や介護施設から退院・退所する利用者や、その家族に対して、病院等の主治医やその他の従業者と連携しながら、在宅での療養に関する指導を行うこと
- 文書で提供、あるいはビデオ通話や電子メールで行うこと
- 退院、あるいは退所後に訪問看護を行うこと
- 退院時共同指導の内容を訪問看護記録書に記録すること
算定の際の注意点
加算のタイミング
退院・退所後、初回に訪問した際の「訪問看護療養費」に加算します。
算定回数の違い
厚生労働大臣が定める疾病等の利用者※1の場合は2回算定可能。それ以外の利用者の場合は1回のみの算定です。
※1厚生労働大臣が定める疾病等の利用者(別表7)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
>訪問看護における別表7、別表8とは?
複数の訪問看護ステーションが関与する場合
1回しか算定できない利用者の場合、どちらの訪問看護ステーションが算定するかを主治医の属する医療機関に確認する必要があります。2回算定できる利用者の場合、それぞれの訪問看護ステーションで1回ずつ算定可能です。
ビデオ通話や電子メールでの指導
事前に利用者またはその家族の同意を取得する必要があります。ビデオ通話で個人情報を共有する場合には、プライバシー保護とセキュリティの観点から、利用者の同意を得ることが必須です。電子メールで指導を実施する場合は、送信後に利用者またはその家族が受け取ったことを確認してください。
医療情報システムを利用する場合
保険医療機関の電子カルテなどを含む医療情報システムと共通のネットワーク上の端末で共同指導を行う場合、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を遵守する必要があります。
介護保険の退院時共同指導加算とは?
介護保険の退院時共同指導加算とは、病院等から退院・退所する利用者やその家族に対し、訪問看護ステーション等※2の看護師等(准看護師を除く)が、入院・入所先の病院等の医師や看護師と共同で指導を行うことで算定できる加算です。「退院前」に指導することで算定が可能です。ここでは、介護保険における退院時共同指導加算の種類と単位数、算定要件、注意点について解説します。
※2訪問看護ステーション等とは、訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能居宅介護が該当します。
種類と単位数
種類 | 単位数 |
退院時共同指導加算 | 600単位/回 |
算定要件
算定するには、以下の項目をすべて満たす必要があります。
- 病院や介護施設から退院・退所する利用者や、その家族に対して、病院等の主治医やその他の従業者と連携しながら、在宅での療養に関する指導を行うこと
- 文書で提供、あるいはビデオ通話や電子メールで行うこと
- 退院、あるいは退所後に訪問看護を行うこと
- 退院時共同指導の内容を訪問看護記録書に記録すること
算定の際の注意点
加算のタイミング
退院・退所後、初回に訪問した際の訪問看護に加算します。
算定回数の違い
特別な管理が必要な厚生労働大臣が定める疾病等の利用者※3(特別管理加算の対象者)の場合は2回算定可能。それ以外の利用者の場合は1回のみの算定です。
複数の訪問看護ステーションが関与する場合
1回しか算定できない利用者の場合、どちらの訪問看護ステーションが算定するかを主治医の属する医療機関に確認する必要があります。2回算定できる利用者の場合、それぞれの訪問看護ステーションで1回ずつ算定可能です。
初回訪問加算と併用不可
介護保険の場合、初回訪問加算と退院時共同指導加算は併用できません。
ビデオ通話や電子メールでの指導
事前に利用者またはその家族の同意を取得する必要があります。ビデオ通話で個人情報を共有する場合には、プライバシー保護とセキュリティの観点から、利用者の同意を得ることが必須です。電子メールで指導を実施する場合は、送信後に利用者またはその家族が受け取ったことを確認してください。
医療情報システムを利用する場合
保険医療機関の電子カルテなどを含む医療情報システムと共通のネットワーク上の端末で共同指導を行う場合、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を遵守する必要があります。
※3特別な管理が必要な厚生労働大臣が定める利用者(別表8)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
医療保険の退院支援指導加算とは?
医療保険の退院支援指導加算は、医療機関から退院した利用者に対して、訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く)が、「退院日」に在宅で療養上必要な指導を行った場合に算定できる加算です。
算定対象者
- 厚生労働大臣が定める疾病等の利用者
- 特別な管理が必要な厚生労働大臣が定める利用者
- 退院日の訪問看護が必要であると医師の指示がある利用者
種類と算定料金
種類 | 算定料金 |
基本的な場合 | 6,000円/回 |
長時間の訪問を要する以下の対象者に90分以上の訪問を行った場合(1回の指導が90分以上、複数回の指導の合計時間が90分を超えた場合) ・15歳未満の超重症児または準超重症児 ・特別管理加算の対象者 ・特別訪問看護指示書に係る訪問看護を受けている対象者 |
8,400円/回 |
算定要件
算定するには、以下の項目をすべて満たす必要があります。
・病院や介護施設から退院・退所する利用者や、その看護を担う家族に対して、看護師が在宅で療養上の指導を行うこと
・退院日に行うこと
・退院日からの訪問看護指示書の交付があること
・指導の内容を訪問看護記録書に記録すること
算定の際の注意点
加算のタイミング
退院日の翌日以降、1回目に訪問した訪問看護の「訪問看護管理療養費」に加算します。
死亡または再入院した場合
利用者が1回目の訪問前に死亡・再入院した場合、死亡・再入院した日に退院支援指導加算を単独で算定できます。
算定できる訪問看護ステーションの数
1人の利用者に対して、1つの訪問看護ステーションのみが算定できます。
退院時共同指導加算と退院支援指導加算に関するよくある注意点
退院時共同指導加算を算定する際、介護保険と医療保険の併用や、退院支援指導加算と同時に算定してよいのか気になる方もいるでしょう。ここでは、退院時共同指導加算と退院支援指導加算に関するよくある注意点について解説します。
退院時共同指導加算は医療保険と介護保険の同時算定はできない
訪問看護では、医療保険と介護保険の同時算定はできないため、退院時共同指導加算もどちらか一方の算定になります。利用者の状態によって医療保険または介護保険が適応されますが、要介護認定を受けている方は介護保険の算定が優先されます。ただし、末期の悪性腫瘍や難病患者等、特別指示書の発行があった場合に限り医療保険の訪問看護が可能です。
退院時共同指導加算と退院時支援指導加算は同時算定できる
退院時共同指導加算と退院支援指導加算は、対象者の状態、指導を行う人、実施する日、指導の場所が異なるため、同時算定が可能です。退院時共同指導加算と退院支援指導加算の主な違いは以下のとおりです。
退院時共同指導加算 | 退院支援指導加算 | |
対象者 | 退院予定の人 | 退院した人 |
指導をする人 | 訪問看護ステーションの看護師等、入院・入所先の病院等の医師や看護師等 | 訪問看護ステーションの看護師等 |
指導日 | 退院前 | 退院日 |
指導をする場所 | 入院・入所施設 | 在宅 |
退院時共同指導加算の文書に書く内容
退院時共同指導加算に関する文書には決まった書式がなく、どのような内容を記載すればよいか迷うこともあるかもしれません。以下の項目をご参考ください。
- 実施日時
- 共同指導を行った者
- 退院後の療養指導および診療の継続指導
- 初回の訪問予定日時
文書は、利用者に提供するだけでなく、事務所内での保管も必要です。
iBowなら算定漏れを防ぎ計算の手間も削減
「iBow(アイボウ)」は、入力した利用者様の情報を基に算定することが出来る加算を一覧表示したり、自動計算してくれたりするので、加算の算定漏れを防ぐことが出来ます。基本的には「選択するだけ」で簡単に情報を入力することができます。また、入力した情報も、わかりやすく表示されるため情報確認・把握も簡単です。
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まとめ
退院時共同指導加算と退院支援指導加算は、退院後の在宅療養をスムーズに進めるために重要な制度です。退院時共同指導加算は、訪問看護ステーションの看護師が病院や施設と連携し、利用者がより良い療養生活を送れるよう支援するものです。退院支援指導加算は、利用者が退院後に初めて在宅で療養を開始する際、不安を軽減し安全に療養できるよう指導するために求められます。それぞれの加算の適用範囲や注意点を正しく理解し、適切に活用していきましょう。