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訪問看護“ここが知りたい”〜精神科訪問看護①〜

病気や障がいを持ちながらも、地域でその人らしく生活できるように支援するのが訪問看護の役割。
しかし、日々の実践のなかでは困難な事例を経験することも多いのではないでしょうか。
「訪問看護“ここが知りたい”」では、各分野のスペシャリストに日々の実践に役立つケアのポイントやスキルを解説していただきます。

 

 

取材・監修協力
寺田 悦子さん(株式会社円グループ)代表取締役
看護師・精神保健福祉士・介護支援専門員公立病院・民間精神科病院で10数年間看護師として勤務後、
1986年に友人たちと「共同作業所棕櫚亭」を開設。
1997年、多摩棕櫚亭協会ピアス・生活支援センターなびぃ勤務。
2005年NPO法人多摩在宅支援センター円を立ち上げ、
2012年2月に株式会社円グループを設立。
現在、立川、八王子、新宿等に訪問看護ステーションや相談支援事業所、
居宅介護支援事業所など計9事業所を運営。

 

入院から地域中心へと移行が進む精神科医療。その人が地域で安心して生活を送るために、訪問看護には大きな期待が寄せられています。しかし、精神障がいを抱えた人のサポートを行う看護師が不安や困難を感じることもあるでしょう。2回にわたってケースと対応を紹介します。

 

初回に訪問看護を拒否

 

初回訪問前のインテークが
訪問拒否を減らすポイントに

 

訪問看護すべてに言えることですが、病棟看護師が病室の患者さんのベッドサイドに行くのと、利用者の自宅を訪問することには大きな違いがあります。
病院は医療者にとっての「ホーム」であり、患者は、「患者らしく」対応してくれます。
一方、利用者の生活の場、つまり「ホーム」に行く訪問看護は「アウェイ」の立場です。
まずこの前提が違うことを意識することが大事です。

【ケース1】初回訪問時に訪問看護を拒否

退院後、訪問看護と訪問介護が入ることになった利用者。
訪問介護は受け入れたものの、訪問看護は初回訪問時に拒否されてしまった。

 

精神科訪問看護にとって最も重要なのが初回訪問であり、拒否を回避するうえでポイントとなるのが初回訪問前のインテークと医師の指示書から、十分な情報を得ておくことです。

 

訪問看護の受け入れに納得しているのかどうか

⇒初回訪問前にインテークを行うことで、利用者が訪問看護をどのようにとらえているかを把握でき、顔合わせをすることで初回訪問時の受け入れ拒否が減少します。インテークでは、本人が訪問看護を受けることを了承している、あるいはしぶしぶ受け入れを認めている、医師に言われたから仕方ないなど、容認の度合いも把握しておく必要があるでしょう。

 

なぜこの利用者に訪問看護の指示が入ったのか

⇒たとえば利用者が頻回に入退院を繰り返している場合、退院後の服薬管理ができていなかったり、独居で生活リズムが崩れたりすることがあります。特に入退院を繰り返す人の場合、入院形態も事前に確認します。

 

【精神保健及び精神障害者福祉に関する法律】に基づく入院形態

形態 対象 要件等
任意入院 入院を必要とする精神障がい者で、入院について本人の同意がある 精神保健指定医の診察は不要
措置入院/緊急措置入院 入院させなければ自傷他害のおそれがある精神障がい者 精神保健指定医2人の診断結果が一致した場合に都道府県知事が措置
(緊急措置入院は急速な入院が必要で、指定医1人の診断。入院期間は72時間以内に制限)
医療保護入院 入院を必要とする精神障がい者で、自傷他害の恐れはないが、任意入院を行う状態にない 精神保健指定医(または特定医師)の診察および家族等のうちいずれかの者の同意が必要
(特定医師による入院期間は12時間まで)
応急入院 入院を必要とする精神障がい者で、任意入院を行う状態になく、急速を要し、家族等の同意が得られない 精神保健指定医(または特定医師)の診察が必要で、入院期間は72時間に制限
(特定医師による入院期間は12時間まで)

●利用者の印象を決定づける初回訪問

精神科病棟では看護師が患者の食事状況や服薬などを管理しているため、特に長期入院の人や入退院を繰り返している人の場合、「せっかく退院したのにまた看護師が管理するのか」と、看護師の訪問を快く思わない人もいます。初回訪問を拒否される可能性も視野に入れて、より丁寧な対応を心がける必要があります。

 

・より丁寧な説明を
「ここに座ってもいいですか?」
「この椅子に荷物を置いてもいいですか?」 など
座る位置も利用者の対面がよいのか、斜め前がよいのかを見極め、座る前に同意を得るようにします。特に初回訪問時は看護師が行うことに対して丁寧に説明するようにしましょう。

・質問よりもメッセージを伝える
「何かお困りのことはありますか?」
「あなたの役に立ちたい」
「再入院をしないために訪問看護を使ってください」 など
「お薬飲んでいますか?」「食事はとっていますか?」など、身体状況や生活についての聞き取りではなく、訪問看護師として「利用者の役に立ちたい」というメッセージを伝えることが大事です。

 

MEMO:コミュニケーションで大事な「マッチング」

利用者、家族との関係を築くうえで、大切なコミュニケーション。そのきっかけをつくったり、話を引き出しやすくしたりするために大切なのが「マッチング」です。
とくに若い世代の利用者の場合、ゲームやアニメが会話のきっかけになることも少なくありません。訪問看護師と利用者の世代が離れるほど共通の話題が見つけにくくなるため、利用者と同世代の看護師をマッチングすることもひとつのポイントでしょう。

●利用者の「困りごと」からアプローチ

精神科訪問看護は、利用者にとって「何をしてくれる人なのか」が伝わりにくいものです。たとえば、冷え性が強くて困っている利用者と一緒に湯たんぽを買いに行ったり、食生活に問題がある人に宅配弁当のパンフレットを持参して昼食を頼んだりするなど、「困りごと」に対して一緒に取り組む姿勢が伝わると、受け入れてもらいやすくなるでしょう。

逆に看護師が上から目線で「指導」する姿勢がみえてしまうと、拒否が強くなりやすいといえます。初回訪問時の訪問看護師の態度によっては、利用者から担当者の変更を求められたり、次の訪問予定時間にわざと外出してしまったりすることもあります。特に拒否的な姿勢の利用者に対しては、訪問看護を受けることが利用者にとってよいものであるという印象を残すことが大切です。

 

MEMO:なぜ窓を締め切りにしているのか

初回訪問をした看護師が、家中の締め切られた戸を開けようとしたところ、利用者から訪問看護を拒否されてしまったケースがあります。
この利用者には幻聴症状があり、外部からの音を遮断するために暑い日でもすべての戸を締め切っていたのです。精神科訪問看護では、「何かおかしい」と感じた時点で「利用者の行動には何か理由があるのではないか」と考えることが大切です。

 

利用者の好きなものに着目する

 

ストレングス・アセスメントの視点で

会話のきっかけをつかむ

 

医療処置が少ない精神障がいの利用者を訪問する場合、どのようにコミュニケーションをはかればよいかわからない人は多いのではないでしょうか。

【ケース2】会話のきっかけがつかめない

精神障がいの利用者は医療処置がない人が多く、情報をとるにも会話のきっかけがつかめない。会話が続かなくて困っている

 

たとえば、精神科訪問看護を受けている利用者の場合、物を溜め込んだり集めたりすることが多く、自宅がいわゆる“ゴミ屋敷”になっているケースもみられます。看護師としては薬が散乱している状況などが目につき、指導したくなるものですが、まずは訪問看護師として信頼してもらうことが先決です。
部屋を観察すると、その人の関心が高いものを知ることができます。山の写真やカレンダーが多い、好きなミュージシャンのCDがたくさんあるという場合には、「山がお好きですか?」「好きな曲は何ですか?」と、利用者の関心の高いものに共感する姿勢を示す、ストレングス・アセスメントの手法を用いることでコミュニケーションがとりやすくなります。

 

KeyWord:ストレングス・アセスメント

利用者の夢や希望の実現に役立つ「ストレングス(強み)を活かすための情報収集。ストレングスに含まれるのは、特性、技能、才能、能力、環境、関心、願望、希望の8つとされている。言語的、非言語的コミュニケーションを通じて情報を得ながら、利用者とともにストレングスを見つけ出すなかでケアに活かすことができる。

病棟での看護は、患者の問題点に着目する「問題解決モデル」で看護を展開しますが、訪問看護で重要なのは、利用者が地域のなかでどのように暮らしたいのか、その思いに寄り添うことです。特に訪問看護では利用者ができないことに介入する視点ではなく、できること、強みを活かす視点に切り替えることが大切です。

 

●「なりたい自分」を後押しする

利用者が関心のあること、目標としていることに着目して、その実現に向けたサポートをするのが訪問看護師の役割のひとつです。利用者が「なりたい自分」に近づいていることを実感できるとモチベーション向上につながります。
精神障がいのある利用者のなかには、生活リズムや食生活の乱れで生活習慣病を合併している人が多くいます。退院後、ほとんど外出せずに体力が低下している人も少なくありません。たとえばマラソン大会に出ることを目標にしている利用者に近隣を散歩する、散歩の距離を延ばす、ジョギングコースを走るなど、段階をふみながら提案し、訪問看護師がときに励ましたり背中を押したりしながら一緒に取り組むことで、信頼関係も強くなり、会話も進むようになります。
運動が習慣づくことで体重も減少して病気になる前に着ていたジーンズがまたはけるようになったり、糖尿病のコントロールができたりと、さまざまな効果が生まれます。

 

MEMO:回復が早い若年層の利用者

精神科訪問看護の利用者は、若い世代から高齢者まで年齢層が幅広いのが特徴のひとつです。高齢者で介護保険を利用した訪問看護の場合、終了は看取りとなることが多いですが、精神科訪問看護では、利用者が社会復帰して終了になることもあります。特に若年層の利用者は退院後の回復が早いケースが多く、就労できるケースも多くあります。その過程を支えることができるのは、精神科訪問看護の醍醐味だと思います。

 

精神科訪問看護の役割

 

地域でその人らしく生活して

再入院を防いでいることが“成果”

 

次のケースは、訪問看護の現場でよく聞かれることです。多くの看護師は、「役に立ちたい」という思いが強いために、自身の看護に不安を感じることがあるのかもしれません。

 

【ケース3】訪問看護は役に立っているのか?

退院後、長く訪問看護を続けている利用者。再入院もなく地域のなかで生活が送れていて、身体状況にも変化がない。訪問看護が本当に必要なのか?

 

訪問看護は褥瘡のケアをしたり、排痰ケアをしたりと、在宅のなかで生活をする利用者を支えるうえで必要な医療的処置やケアのスキルを発揮しています。一方、精神科訪問看護では、精神疾患を持つ人であることを除けば身体的には特に問題なく、訪問看護が入る必要性が感じられないこともあるでしょう。

しかし、精神疾患を持つ人は薬を服用している人も多く、突発的な出来事や周囲からの刺激などにより心身のバランスを崩すリスクが高いといえます。病状悪化が懸念されるとき、適切なアドバイスや助言することが再入院を防ぐことにつながり、再入院せずに地域で生活が継続できていることそのものが訪問看護の“成果”です。

 

●諦めずに待つことで見える成果

たとえ訪問看護が入っても、利用者本人にすぐに変化がみられるわけではなく、半年、1年と時間がかかる人もいます。利用者自身が訪問看護を拒否していないのであれば、それは「訪問看護が必要だ」と感じているからであり、看護師は「諦めないで待つ」気持ちを持つことが大切です。
時間をかけてかかわっていくことで、たとえば統合失調症の利用者の発語が改善したり、希死念慮が強い利用者から前向きな言葉が聞けたり、最初は訪問看護を拒否していた人が看護師の訪問を「楽しみにしている」と言ってくれたりと、少しずつではあっても変化が感じられるようになります。

利用者が地域のなかで生活を続けるためには、自立が不可欠です。精神障がいのハンデはあっても、その人らしく生き、自立することを支えるのが訪問看護です。利用者は一人ひとり違うからこそ、地域で暮らす人を支援する看護の面白さがあると思います。

株式会社eWeLL

 

私たちは訪問看護支援システム『iBow(アイボウ)』の開発や販売、 サポートを行っております。「ひとを幸せにする」をミッションとして 掲げ、訪問看護に従事する医療関係者の皆様や、訪問看護を利用される ご利用者様のお役に立てるよう、サービスを提供しております。

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