訪問看護の別表8とは?状態や特例、保険適用ルールを網羅的に解説
訪問看護における別表8とは、厚生労働大臣が定める「特別な管理が必要な状態」の利用者を示す区分です。高度なケアが必要となる別表8に該当した利用者は、通常よりも手厚い訪問看護を受けることができます。利用者が別表8に該当するのか、保険の適用はどうなるのか、どのような看護が提供できるか、疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。今回は、別表8の定義や対象となる状態、2024年度改定で追加された3つの項目、該当時の特例や保険の適用ルール、別表7との違いまでをわかりやすく解説します。
別表8とは
訪問看護における別表8とは、厚生労働大臣が定める「特別な管理が必要な状態」の利用者を指す区分で、疾患名ではなく状態で判断されます。別表8に該当する利用者は、より高度なケアを必要とするため、複数回・複数名・長時間による訪問看護が認められます。そのため、訪問看護ステーションの運営や報酬体系にも影響を与える重要な区分となっています。厚生労働大臣が定める別表8の状態は以下のとおりです。
- 在宅麻薬等注射指導管理
- 在宅腫瘍化学療法注射指導管理
- 在宅強心剤持続投与指導管理
- 在宅気管切開患者指導管理を受けている状態
- 気管カニューレを使用している状態
- 留置カテーテル(胃ろう、膀胱留置カテーテル等)を使用している状態
- 在宅自己腹膜灌流指導管理
- 在宅血液透析指導管理
- 在宅酸素療法指導管理
- 在宅中心静脈栄養法指導管理
- 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
- 在宅自己導尿指導管理
- 在宅人工呼吸指導管理
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
- 在宅自己疼痛管理指導管理
- 在宅肺高血圧症患者指導管理
- 人工肛門を設置している状態
- 人工膀胱を設置している状態
- 真皮を超える褥瘡の状態
- 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している状態
2024年の報酬改定で別表8に追加された3つの状態
2024年度の診療報酬改定では、別表8に次の3つの状態が新たに追加されました。いずれも在宅で高度な薬剤投与を行う利用者に対し、医療従事者が投与の管理や副作用の観察、指導を行うものです。
在宅麻薬等注射指導管理
経口での麻薬服用が困難な利用者に対して、在宅でモルヒネやフェンタニルなどの麻薬を注射または持続皮下注で投与する際に実施されます。医療従事者が、投与量・副作用・残液・保管状況などを定期的に確認・指導し、悪性腫瘍や難病による疼痛緩和、心不全や呼吸器疾患の苦痛緩和などを目的とします。
在宅腫瘍化学療法注射指導管理
抗がん剤を注射または持続注入ポンプで在宅投与している利用者に対して行われる管理です。医療従事者は、投与の実施・副作用のモニタリング・管理計画の策定・説明・情報提供を行い、主治医の指示のもとで安全かつ継続的な化学療法を支援します。
在宅強心剤持続投与指導管理
重症の心不全などで、強心剤(例:ドブタミンなど)を持続皮下注射している利用者に対して行う管理です。医療従事者が、投与量・副作用・機器の管理・治療効果の評価などを定期的に行い、在宅での安定した循環管理を支援します。
3つの状態が追加された背景
3つの状態が追加された背景には、在宅医療の現場で進む医療の高度化と切れ目ない支援体制の必要性があります。がんや心不全、呼吸器疾患などの患者さんが、病院ではなく自宅で治療を継続するケースが多くなっています。特に、疼痛緩和や呼吸困難感緩和のための麻薬注射や、抗がん剤の持続注入、強心剤の皮下注射など、これまで病院で行われていた高度な医療行為を在宅で実施するニーズが増えていました。
しかし、従来の制度では、こうした在宅治療に対して十分な評価や算定項目が整っておらず、医療機関や訪問看護ステーションが対応しにくいという課題がありました。
そのため、2024年度診療報酬改定によって、新たに3つの状態が別表8に追加されました。在宅医療の現場では、より専門的な管理・観察・副作用対応が求められ、利用者が望む場所で最期まで療養できる体制がさらに整ったと言えます。
別表8に該当するとどんな特例があるのか?
別表8に該当するのは、真皮を越える褥瘡がある人や、人工肛門を設置している人など、特別な管理が必要な状態の利用者です。該当する利用者には、訪問回数や時間に制限されない柔軟なケア提供が認められています。なお、原則介護保険での介入になるため、特にケアマネジャーとの連携や他サービスとの調整が重要です。
別表8に該当すると、通常よりも手厚い訪問看護を行うことができます。また、看護の内容によっては加算の算定が可能です。
別表8に該当する特例
別表8該当による主な特例は以下のとおりです。
- 1日複数回の訪問看護が可能
- 1週間に4日以上の訪問看護が可能
- 複数名の看護師によるケアの提供が可能
- 必要に応じ長時間(1時間30分以上)の訪問看護が可能※
- 入院中の外泊時にも訪問看護が可能(2回まで)
- 退院日当日の訪問看護が可能
- 2か所以上の訪問看護事業所からサービスの提供を受けることが可能(最大3か所)
※長時間訪問は週1回まで、15歳未満の小児は週3回まで
別表8に該当する加算
| 特例 | 加算名 | 点数 |
| 複数名による看護師のケア | 複数名訪問加算(Ⅰ) | 30分未満 254単位/回
30分以上 402単位/回 |
| 複数名訪問加算(Ⅱ) | 30分未満 201単位/回
30分以上 317単位/回 |
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| 長時間(1時間30分以上)の訪問看護 | 長時間訪問看護加算 | 300単位/回 |
上記の複数名看護加算の点数は要介護状態を示しています。
複数名訪問加算(Ⅰ):看護師など有資格者2名以上。
複数名訪問加算(Ⅱ):看護師等+看護補助者の組み合わせ。
別表7と別表8の特例の共通点や違い
別表7と別表8は、いずれも手厚い訪問看護を特例的に認める制度です。共通して、1日複数回・週4日以上の訪問や、複数名によるケア、退院日に訪問できるなど、柔軟な対応が可能になります。ただし、異なる点もあるため違いを理解しておくことが大切です。
| 項目 | 別表7 | 別表8 |
| 1日の訪問回数 | 1日に複数回(2回・3回)訪問可能 | ケアプランに基づき複数回訪問可能 |
| 週の訪問回数 | 週4日以上可能 | ケアプランに基づき週4日以上可能 |
| 複数名訪問看護加算 | 算定可能 | ケアプランに基づき算定可能 |
| 長時間訪問看護加算 | 算定可能 | ケアプランに基づき算定可能 |
| 入院中の外泊時の訪問 | 入院中2回まで可能 | ケアプランに基づき入院中2回まで訪問可能 |
| 退院当日 | 退院支援指導加算あり | ケアプランに基づき訪問可能 |
| 2か所以上事業所からの訪問 | 原則2か所まで、週7日の訪問が必要な場合は3か所可能 | ケアプランに基づき最大3か所まで可能 |
別表7、別表8についてこちらの記事でも詳しく解説しています。
別表8に該当するかどうかの判断のポイント
別表8に該当するかどうかを判断する際は、該当一覧表と利用者の実際の状態を照らし合わせることが基本です。ただし、以下の点にも注意しましょう。
1.医師の指示書や診療情報の確認
医師から交付される訪問看護指示書や診療情報提供書には、該当判断に関わる情報が記載されています。
・ 特定の在宅指導管理名(例:在宅麻薬等注射指導管理など)
・ カテーテルやストーマの有無
・ 褥瘡の深さ(DESIGN-R®など)
上記の項目は、別表8該当かどうかを判断する際の根拠となります。
2.訪問時の観察と記録
実際の訪問では、看護師による状態観察とアセスメントが必要です。該当根拠となる状態(例:皮膚の状態、症状の変化など)は、訪問記録書に具体的かつ明確に記載しましょう。算定の裏付けとしても重要です。
3.迷ったときの確認体制
該当判断に迷う場合は、自己判断せず、主治医やケアマネジャーなど関係職種と必ず連携しましょう。多職種で情報を共有することで、誤算定の防止やより適切なケア提供につながります。
別表7と別表8の医療保険・介護保険の適用ルール
別表7や別表8に該当する利用者の場合、医療保険と介護保険のどちらが適用されるのか迷うことがあります。原則として、別表7は医療保険、別表8は介護保険の適用となります。別表8に該当し、介護保険が優先となる場合は以下のいずれかのケースです。
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なお、別表8は状態を示すものであり、別表8に該当するだけでは自動的に医療保険にはなりません。ただし、別表8該当者であっても、次のいずれかに該当する場合は医療保険での訪問看護が適用されます。
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別表8に該当しても条件によっては医療保険となるケースがあるため、指示書や利用者の状態の確認が重要です。保険適用については下記の記事で詳しく解説しています。
加算漏れも防げる!別表7・別表8の確認をもっとシンプルに
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まとめ
別表8は、在宅での医療がますます高度化する中で、利用者の「自宅で過ごしたい」という想いを支え、必要な看護ケアを継続的に提供するために設けられた制度です。2024年度の診療報酬改定では、麻薬注射・抗がん剤投与・強心剤持続注射といった医療行為を、在宅でも安全に継続できるよう評価が見直されました。別表8に該当する利用者は、長時間・複数回・複数名による訪問看護が認められるなど、より柔軟で手厚い支援を受けられます。一方で、原則として介護保険の対象となるため、ケアマネジャーとの情報共有や他サービスとの調整が欠かせません。制度を正しく理解・活用し、チーム全体で在宅療養の質をさらに高めていきましょう。


