(2020年度診療報酬改定⑤) 10の改定項目/訪問看護の改定で評価される項目
前回の記事では、訪問看護個別の改定項目10個の中から「機能強化型訪問看護ステーションの要件見直し」についてご紹介しました。今回は個別の改定項目10個の中でも「評価が上がっている項目」について、整理していきましょう。
前回の記事はこちら
診療報酬改定の基本方針
診療報酬改定の基本方針について確認しましょう。
○改定の基本的視点と具体的方向性の4つのセクション
1 医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進
2 患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
3 医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進
4 効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上
訪問看護に関わる項目は、セクション3(医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進)の質の高い在宅医療・訪問看護の確保の中にまとめられています。[質の高い訪問看護の確保]、ということで、訪問看護の提供体制の確保、利用者のニーズへの対応、関係機関との連携の推進という視点で次の8つの項目が挙げられています。地域包括ケアシステムを推進する観点から、在宅部門、訪問看護に関わる診療報酬は評価されるところが多くあります。
令和2年度診療報酬改定の概要 (在宅医療・訪問看護)P3 より
評価される項目
医療機関における質の高い訪問看護の評価
医療機関からの訪問看護を評価する加算が新設されました。より手厚い訪問看護提供体制を評価する観点から、訪問看護に係る一定の実績要件を満たす場合について、新たな評価が行われます。一定の施設基準では病院と他の訪問看護ステーションの看護師等との連携で24時間体制を確保した場合も認められています。今後は病院とステーションの連携も進むことが考えられますので、地域で過ごす利用者にとって、より安心できる環境を整えていけるのではないでしょうか。
算定の基準となる実績は、前年度の算定回数なので、今回実績を満たしていない医療機関は次年度に向けて積極的な取り組みを進めると良いでしょう。
(新) 訪問看護・指導体制充実加算 150点(月1回)
施設基準
(1) 当該保険医療機関において、又は別の保険医療機関若しくは訪問看護ステーションの看護師等との連携により、患家の求めに応じて、24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保し、訪問看護を担当する保険医療機関又は訪問看護ステーションの名称、担当日等を文書により患家に提供していること。
(2) ア~カのうち少なくとも2つを満たしていること。(ただし、許可病床数が400床以上の病院においては、アを含めた2項目以上) *前年度の算定回数
ア | 専門性の高い看護師による同行訪問
・悪性腫瘍の患者への緩和ケア ・褥瘡ケア ・人工肛門・人工膀胱ケア |
在宅患者訪問看護・指導料3 | 5回以上 |
イ | 小児への訪問看護 | 在宅患者訪問看護・指導料の乳幼児加算 | 25回以上 |
ウ | 難病等の患者への訪問看護 | 別表7の患者への在宅患者訪問看護・指導料 | 25回以上 |
エ | ターミナルケアに係る訪問看護 | 在宅患者訪問看護・指導料の在宅ターミナルケア加算 | 4回以上 |
オ | 退院時共同指導の実施 | 在宅患者訪問看護・指導料の在宅ターミナルケア加算 | 4回以上 |
カ | 開放型病院での共同指導の実施 | 開放型病院共同指導料(I)・(II) | 40回以上 |
専門性の高い看護師による同行訪問の充実
訪問看護基本療養費(I)のハ、訪問看護基本療養費(II)のハ、在宅患者訪問看護・指導料3同一建物居住者訪問看護・指導料3の算定要件の緩和
利用者のニーズに合わせた質の高い訪問看護の提供を推進するため、専門性の高い看護師による同行訪問についての要件が見直しされました。
・悪性腫瘍の鎮痛療法若しくは化学療法を行っている利用者
・真皮を越える褥瘡の状態にある利用者
・人工肛門若しくは人工膀胱周囲の皮膚にびらん等の皮膚障害が継続又は反復して生じている状態にある利用者
・人工肛門若しくは人工膀胱のその他の合併症を有する利用者
専門性の高い看護師(緩和ケア/褥瘡ケア/人工肛門ケア及び人工膀胱ケア に係る専門の研修を受けた看護師)による同行訪問について、算定できる範囲が広がりましたので、利用者のニーズに合わせて訪問看護を提供していきましょう。
小児への訪問看護に係る関係機関の連携強化
前回の改定で新設された訪問看護情報提供療養費1、2について、要件の見直しと対象の範囲の拡大がありました。医療的ケアを受けながら在宅で過ごす小児が増えていることもあり、訪問看護ステーションからの情報提供がとても有効であったという評価が、今回の対象拡大の背景にあるようです。
○自治体への情報提供の見直し
訪問看護情報提供療養費1
[算定対象]
(1)特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等の者
(2)特掲診療料の施設基準等別表第8に掲げる者
(3)精神障害を有する者又はその家族等
(4)15歳未満の小児
○学校等への情報提供の見直し
訪問看護情報提供療養費2
[算定要件]
訪問看護ステーションが利用者の同意を得て、当該学校等からの求めに応じて必要な情報を提供
対象者:別に厚生労働大臣が定める疾病等の利用者
情報提供先:保育所等、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、
中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部
算定頻度:利用者1人につき各年度1回に限り算定。
入園若しくは入学又は転園若しくは転学等により当該学校等に初めて在籍することとなる月については、当該学校等につき月1回に限り、別で算定可能。
これまでは、学校等の利用を始める時に1回だけ情報提供が認められていましたが、これからは子供の成長に合わせて、学年ごとに1回、情報提供が認められることになりました。医師側の情報提供も新設されたため、利用者の学校生活を学校側と共に主治医、訪問看護ステーションで支えていくことが求められます。(医療的ケア児に関わる主治医と学校医との連携 診療情報提供料(I))
訪問看護における特定保険医療材料の見直し
医療ニーズの高い在宅療養者への質の高い訪問看護の提供を推進するため、訪問看護において用いる可能性のある医療材料が、特定保険医療材料として算定可能な材料に追加されましたので、確認をしておきましょう。
次回は、今回の改定で評価が見直された項目、注意が必要な項目について説明していきます。
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2020年診療報酬改定は働き方改革のためのタスクシェア・タスクシフトやオンライン診療、関係各所との連携などが重点課題となり、地域包括ケアシステムを推進する観点から在宅部門、訪問看護に関わる診療報酬は高く評価されています。iBowお役立ち情報で2020年診療報酬改定について確認しましょう。
- (2020年度診療報酬改定①) 前半の課題整理における「在宅部門」の内容
- (2020年度診療報酬改定②) 訪問看護の改定項目<小児、看取りのニーズ、大規模化に期待>
- (2020年度診療報酬改定③) 訪問看護の改定項目<理学療法士による訪問看護、集合住宅、明細書>
- (2020年度診療報酬改定④) 10の改定項目/機能強化型訪問看護ステーションの要件
- (2020年度診療報酬改定⑤) 10の改定項目/訪問看護の改定で評価される項目
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