訪問看護におけるダイバーシティの考え方①~ダイバーシティとは何か~
「ダイバーシティ」という言葉を聞いたことがあるけれど、詳しい意味や考え方については、よく分からない方も多いのではないでしょうか。今回は、多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長・シニアフェロー/公益財団法人日本生産性本部認定 経営コンサルタントと様々な分野でご活躍されている幸田 千栄子 様にダイバーシティの概要や考え方について全4回にわたって解説いただきます。既にダイバーシティについて聞いたことがある方も、本シリーズを読んで、新しい気づきのきっかけになれば幸いです。
ダイバーシティとは
ダイバーシティの⾔葉はよく⽿にし、⽬にされると思います。では「ダイバーシティとは何?」と聞かれたらどのように答えますでしょうか?
ダイバーシティとは、ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity&Inclusion)を略しており、ダイバーシティは「多様性」を、インクルージョンは「受容」を意味します。従って、多様な⼈材を受容するということです。
この東京オリンピックのビジョンの1つに「⼀⼈ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」が掲げられています。「⼈種、肌の⾊、性別、性的指向、⾔語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる⾯での違いを肯定し、⾃然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩。東京2020⼤会を、世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共⽣社会をはぐくむ契機となるような⼤会とする。」と書かれています。「みまじゅんコンビ」で⾦メダルを獲得した卓球男⼥混合ダブルスのような「男⼥混合」競技が⽔泳リレーや柔道などの競技で始まったのは、このビジョンを具現化しているのです。
また、企業では、性別、年齢、国籍、障がいの有無といった個⼈の属性にかかわりなく、多様な⼈材の能⼒や発想、価値観を融合することで、組織の活性化を図り、企業の経営基盤や商品提案⼒を強化する取り組みをしています。
更に2015年9⽉の国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発⽬標)の5番⽬の⽬標に「ジェンダー平等を実現しよう」と取り上げられており、社会での取り組みも進んでいます。
ダイバーシティの歴史
歴史的には、1960年代のアメリカで⼈種や性別などによる差別的な⼈事慣⾏の撤廃を求める動きのなかで注⽬されるようになった言葉です。⽇本企業がダイバーシティという⾔葉を⽤いるようになったのは、2000年以降のことです。労働⼒⼈⼝の減少および構成の変化により、労働⼒確保が企業の課題となりました。これを解決するため、それまで労働⼒の中⼼と捉えていなかった⼥性やシニア層、障がい者、外国⼈などの雇⽤に着⽬する企業が増えたことから注⽬されるようになりました。
違いがある、マイノリティだからと受け入れないのではなく、個⼈個⼈によって違いがあるのは当然であり、それぞれの違いを個性として受け入れていこうという考え⽅です。
訪問看護の組織では、少数の男性看護師、⾼齢看護師や障がいのある看護師など働いていらっしゃると思います。また、対応する患者の病気そのものも多様であり、かつ、患者の体質や既に他の病気をお持ちであるなど、1⼈として⼀緒の⽅はいらっしゃらないでしょう。更に、認知症の⽅やLGBTsの⽅などもいらっしゃるでしょう。
医療・介護業界の方々は、常に病気の⽅に接しているので病気だけでなくその⼈を受容できていると思われますが、いかがでしょうか?
幸田 千栄子 様
多摩大学医療・介護ソリューション研究所 副所長・シニアフェロー 輸送用機器メーカーにて人事・人事企画・採用・教育・女性活躍推進・秘書などに従事。2000年公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了し、公益財団法人日本生産性本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。2009年5月から1年間、サービス産業生産性協議会スタッフとしてコンサルタントと平行して任にあたり、サービス産業の生産性向上PJに参画すると同時に顧客満足度・従業員満足度調査開発・設計を行う。 |
本シリーズ第1回では、ダイバーシティの概要や歴史について解説いただきました。次回は「多様性の受容のステップ」について解説いただきます。