訪問看護のレセプトの基礎、レセプトの流れと請求先は?
レセプト業務は訪問看護の仕事の中でも、最も重要な業務の一つでステーションの収入を支える大切な仕事です。レセプト業務を行うために資格は必要ありませんが、専門的な知識やスキルが必要になるため、介護保険制度や医療保険制度、介護保険請求や医療保険請求に対する理解を深めて業務にあたることが望まれます。そのようなレセプト業務に携わる事務員やこれから訪問看護の経営をしていく経営者の方に向けて、レセプト業務の基礎的な流れと請求先などをご紹介します。
訪問看護におけるレセプト業務とは?
訪問看護に要する費用は、2つに大別されます。一つは介護保険で行う訪問看護、もう一つは医療保険で行う訪問看護です。訪問看護にかかる費用のことを、介護保険では、「介護報酬(介護給付費)」といい、医療保険では、「訪問看護療養費」といいます。レセプト業務は、訪問看護ステーションが利用者にサービスを提供した報酬として介護報酬や訪問看護療養費を請求する業務です。訪問看護では、介護や診療のサービスを提供した場合、利用者に1〜3割の金額を請求し、健康保険や国民保険の適応範囲の7〜9割の金額を支払審査機関に請求します。支払審査機関は、国民健康保険団体連合会(以下、国保連)と社会保険診療報酬基金です。請求の期日は、サービス提供をした翌月10日のため、毎月1~10日はレセプトに必要な書類の準備し提出する必要があります。このレセプト業務は通常業務と並行して行うため、この時期は特に忙しくなります。
介護保険、医療保険の対象者
訪問看護では介護保険と医療保険、2つの保険が関わります。前述の通り介護保険・医療保険では請求先がそれぞれ異なります。また、通常介護保険・医療保険を併用することはできません。利用者さんの状態によって介護保険・医療保険どちらが適用となるかも異なるため、対象条件について把握しておきましょう。
介護保険が適用になる場合
介護保険の対象者は要介護・要支援認定を受けている人です。認定を受けるにはまず申請が必要になりますが、申請できるのは下記いずれかに当てはまる方です。
- 65歳以上の高齢者
- 40歳以上~65歳未満で特定疾病に該当
特定疾病は以下の16種類が選定されています。
特定疾患 |
|
原則、介護保険が優先されますが医療保険が適用となるケースもあります。医療保険が優先されるケースについて次項で詳しく触れていきます。
医療保険が適用になる場合
日本では国民がすべて医療保険に加入しているため介護保険の被保険者以外の方は医療保険の対象者となります。しかし、前述でも記載した通り、訪問看護においては介護保険の被保険者であっても医療保険が適用されるケースもあります。
医療保険が適応されるケース
- 特別訪問看護指示書の交付
- 厚生労働大臣が定める疾病等に該当する
特別訪問看護指示書は、病状悪化などから一時的に訪問回数を増やす必要があると医師が診断した場合に交付されます。特別訪問看護指示書交付から14日間は医療保険が適用となります。厚生労働大臣が定める特掲診療料の施設基準等別表第7号に掲げる疾病等に該当する場合も同様に医療保険が適用されます。
厚生労働大臣が定める特掲診療料の施設基準等別表第7号に掲げる疾病等者(別表7) | |
|
介護保険・医療保険の適用についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
訪問看護におけるレセプト業務の流れ
レセプト業務では、ステーション内で請求データを作成し、国保連や社会保険診療報酬基金に提出します。請求データに不備がある場合は、報酬の支払いが止まってしまったり、翌月以降になったりとステーションの運営に大きな影響があるので、提出前にしっかりと確認する必要があります。提出書類の作成は下記の流れで行います。
介護報酬の場合
1.指示書やケアマネージャーから交付されたサービス提供表を基にサービスを実施し看護記録を作成
医療行為を行う際には医師の指示書が必要となります。介護保険の場合、通常、ケアマネージャーから月末頃に翌月のサービス提供表が届きます。それを基にして翌月に訪問看護を提供します。また、利用者都合によりサービス提供表と異なる日時に提供した場合はケアマネージャーへ報告が必要です。
2.利用者の実績をレセプトシステムに入力
サービス提供を実施した翌月の月初に実績報告ができるようレセプトシステムへの実績入力を行いましょう。
3.ケアマネージャーにサービス実績を報告
毎月、月初に前月の実績をケアマネージャーへ報告します。レセプト請求の審査ではケアマネージャーが給付管理表に記載した単位数しか認められません。単位数がサービス提供表と実績で異なる場合は確認が必要です。
4.月ごとにレセプトシステムのデータと実績が合っているかを確認
レセプトシステムで訪問実績が出力されていますが、入力時のミスや入力漏れがないか提出前の最終確認をします。
5.CD-Rもしくは伝送データで国保連に提出
サービス提供を実施した翌月1日~10日までに国保連へ提出します。提出方法はCD-R、もしくは伝送のいずれかになります。
訪問看護療養費の場合
1.訪問看護指示書を確認
主治医からの訪問看護指示書にしたがって訪問看護を提供します。
2.保険証を確認
有効期間が切れていないかなども確認しましょう。
3.訪問看護療養費明細書は、利用者の実績を転記し作成
記録書Ⅱの内容をもとにレセプトを作成していきます。
4.月ごとにレセプトシステムのデータと実績が合っているかを確認
レセプトシステムで訪問実績が出力されていますが、入力時のミスや入力漏れがないか提出前の最終確認をします。
5.オンラインでレセプトを提出
2024年6月1日からオンライン請求が開始されました。現在は移行期間になっていますが2024年12月1日には義務化となります。まだ切り替えできていない場合は切り替えを行っていきましょう。
オンライン請求の準備についてはこちらの記事で解説しています。
介護報酬の請求と支払いの流れ
介護報酬の請求は、提供したサービスを1ヶ月単位で集計し、ステーションで作成した請求データを国保連に提出する流れになります。ステーションでは「介護給付費請求書」と「介護給付費明細書」を作成し、国保連に提出します。国保連では、居宅支援事業所から提出された「給付管理票」とステーションから提出した「介護給付金明細書」を突き合わせて審査し、介護報酬を支払います。支払日は、サービス提供した翌々月の27日になります。この審査で、「介護給付金明細書」と「給付管理票」に一致しない項目がある場合など不備がある時は、ステーションだけでなく、居宅支援事業所にも報酬が振り込まれないため、居宅支援事業所に迷惑をかける恐れがあります。
訪問看護療養費の請求と支払いの流れ
訪問看護療養費は、「訪問看護基本療養費」、「精神科訪問看護基本療養費」、「訪問看護管理療養費」、「訪問看護情報提供療養費」、「訪問看護ターミナルケア療養費」の5つで構成されており、利用者に提供したサービス内容によって加算を算定します。訪問看護療養費の算定ができ、金額が確定したら、利用者と社会保険診療報酬基金に請求書を送る流れになります。利用者に請求した金額は、ステーションが決めた期日で入金されます。社会保険診療報酬基金と国保連に請求した金額は、サービス提供をした翌々月の27日に支払われます。
訪問看護におけるレセプト業務で注意すべき点
レセプト業務はステーション運営において収入を支える大切な業務です。そのため、覚えなくてはいけないことがとても多いです。レセプト作成期間で特に注意したいこと4点紹介します。
注意点1 請求ルールが複雑・定期的な改定
前述の通り、訪問看護では介護保険・医療保険が関わってきます。基本は介護保険の適用ですが、医療保険が適用される場合や一定期間のみ医療保険適用など様々なパターンがあります。適用される保険は利用者の状況によって異なるため、誰がどの保険適用になるのか判断に迷うことも出てくるでしょう。診療報酬は2年毎、介護報酬は3年毎に報酬改定が行われます。制度改定は請求部分に大きく関わり、誤った請求は返戻につながります。制度や加算についての正しい知識を持っておくことが大切です。
注意点2 指示書や介護保険の有効期限
訪問看護の実施には主治医からの訪問看護指示書が必要になります。期限の記載がない場合、指示期間は1ヶ月です。指示期間が切れる前に必要に応じて主治医から訪問看護指示書を交付してもらいましょう。特別訪問看護指示書を交付された場合、指示期間は医療保険、指示期間終了後は介護保険と適用される保険が変わるので注意が必要です。また、特別訪問看護指示書の指示期間は14日となり月跨ぎが発生することもあるので、レセプト業務時に誤った算定にならないよう気をつけましょう。介護保険の適用には要介護認定が必要になりますが、この認定には有効期間があります。初めて要介護認定を受けた利用者の場合は認定の申請日から6ヶ月、要介護認定を更新した場合は12ヶ月と、利用者によって有効期間が変わります。
注意点3 不備があると報酬が支払われずに返戻
万が一、不備があった場合は返戻されます。レセプトのどこが誤っているのかを確認し、修正が必要となります。修正後、一朝一夕で承認されるわけではありません。承認されるまでに期間が空くため、介護報酬や診療報酬の支払いも遅くなります。特にステーション立ち上げ直後はステーション運営(給与支払など)に影響が出てきます。また、利用者の負担金についても誤っていた場合、返金対応や支払い依頼など対応が発生してきます。
注意点4 保険請求には有効期限がある
訪問看護基本療養費の請求は2年が有効期限となります。2年位内であれば請求漏れがあっても請求が可能です。誤請求による返戻は5年前まで遡って行われるので請求資料は、5年間は保管しておくのが望ましいです。
記録書作成~レセプト請求まで一気通貫!訪問看護専用電子カルテ『iBow』&『iBowレセプト』
弊社の訪問看護専用電子カルテ『iBow』では、日々の訪問看護業務で作成する訪問看護記録書Ⅱを作成することで、自動的にレセプト情報として訪問実績が反映されます。自動反映されるため、日々の訪問看護記録書Ⅱが正しく作成されていれば、「記録書と実績の突き合わせ」「予実管理」「指示書確認」「保険証確認」の業務がなくなり、今まで月初に集中していたレセプト業務の情報収集作業や、何度も行う多重の確認業務を大きく削減することができます。
また、iBowレセプトを活用することで不正請求を防ぐレセプト管理ができるので正しい訪問看護運営が可能です。さらに、安全なセキュリティ下で、どこでも業務ができることも特徴です。スタッフの直行直帰や事務員の在宅ワーク柔軟な働き方にも対応できます。訪問看護でのレセプト業務の効率化を図りたい方はぜひiBowレセプトを検討してみてください。
まとめ
今回はレセプト業務に携わる事務員や、これから訪問看護の経営をしていく経営者の方に向けて、訪問看護ステーションのレセプト業務の流れや請求先についてお伝えしました。レセプト業務は、訪問看護ステーションの収入を支える重要な業務で、入力ミスなど不備があると国民健康保険組合連合会(国保連)や社会保険診療報酬基金からの支払いが遅れるなど運営に大きな影響を与える仕事です。最新の注意を払って確認するなど、注意力が必要になりストレスがかかる仕事です。弊社のiBowなら、入力ミスや不備があった時のチェック機能があるため、ストレスなくレセプト業務を行うことができ、本来の看護業務に専念できる時間を創り出すことができます。
その他、iBowは日々の記録が各帳票と連動しており、データ上で整理されているます。そのため、サマリーなど緊急で必要な書類も各帳票と連動しているのでいざという時にもタブレットですぐに作成でき、帳票に転記する時間を短縮するだけでなく、転記ミスを防止します。その結果、管理者やスタッフの負担を軽減することが可能です。実際にソフトを導入した事業者から、「帳票作成と確認作業にかかる時間が大幅に短縮し業務が楽になった」という意見がありました。
効率よく業務を行い、本来の業務に専念できる環境をつくるため、iBowを検討してみてはいかがでしょうか。