パワハラ防止法が中小企業でも義務化!訪問看護でも知っておきたいパワハラの概要と対処方法

パワハラ防止法が中小企業でも義務化!訪問看護でも知っておきたいパワハラの概要と対処方法

パワハラには精神的なものや身体的なものがあり内容は様々です。パワハラは被害者に大きな心的ダメージを与えるだけでなく、離職やブラック企業のレッテルを貼られてしまったり、被害者から傷害賠償を請求されたりする可能性があります。内容によっては管理者の責任も問われてしまう可能性があるため、管理者はパワハラの内容や対処方法などについて理解し対応しておく必要があるでしょう。2020年には労働施策想像推進法(以下パワハラ防止法)が施行されたことで、会社はパワハラを防止する対策を行う義務が(大企業向けに)課せられましたが、2022年4月には中小企業もその対象として義務化されました。今回はパワハラの概要について紹介します。

目次

パワハラとは?定義と6つの行為類型について知ろう!

パワハラ防止法が中小企業でも義務化!訪問看護でも知っておきたいパワハラの概要と対処方法

パワハラの定義は厚生労働省でも明記されていますが、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。パワハラは一見、個人の受け取り方次第と感じてしまいそうですが、業務上の適正な範囲で行われている場合にはパワハラにはあたらないことになります。少しわかりにくいですが、無理のない範囲での仕事量や許容できる範囲での相手からの発言、態度などはパワハラに該当しない可能性があるということです。

パワハラの6つの行為類型

パワハラは傷害にあたる身体的な攻撃と脅迫や名誉毀損といった精神的な攻撃、仲間外れや無視といった人間関係からの切り離し、過大な仕事量の強要といった過大な要求、逆に簡単な仕事や仕事を与えないといった過小な要求、最後に私的なことに過度に干渉する個の侵害という6つの類型があります。

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること・仕事を与えないこと)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

また、これら6つの行為類型がパワハラの大部分とされていますが、これ以外は問題ないということではないため注意しましょう。

パワハラによる影響

パワハラが起こることによって、個人への悪影響だけでなく職場全体に悪影響が及ぶことも考えられます。具体的には被害者の労働意欲の低下や、その被害者や他のスタッフの離職、また、離職に伴う人手不足、そして人手不足による職場環境の悪化という悪循環が生まれる可能性があります。

他にも、被害者からの損害賠償請求の可能性や、パワハラが公になることによる、社会的評価の低下といった影響を及ぼすおそれもあるでしょう。

責任について

パワハラが起こった場合加害者だけでなく、会社もいくつかの法的責任を負う可能性があります。

1つ目が使用者責任です。雇用しているスタッフが加害者となった場合、使用者としての責任が生じることを指します。使用者責任は民法715条にもあり、監督責任を果たしていれば問題ありませんが、裁判になった場合、会社は責任を負わねばならなくなるケースがほとんどとなっています。

2つ目が不法行為責任です。パワハラが会社の意思に基づいて行われている場合、会社はこの責任を問われるおそれがあります。例えば、以前からパワハラを会社ぐるみで行っていた場合や、パワハラの可能性がみられたにも関わらず対策を行わなかった場合などが会社の不法行為責任になります。

3つ目が債務不履行責任です。会社と労働者は「雇用契約」を締結しています。雇用契約に付随する会社の義務として「職場環境配慮義務」(安全で働きやすい職場環境を提供する義務)というものがあります。会社が職場環境配慮義務を果たさなかったことでパワハラが発生したと評価できるケースでは、会社は被害者に対して、債務不履行責任に基づく損害賠償義務を負う可能性があります。

 

パワハラの内容にもよりますが、その発生時には最大でこれら3つの責任が争点となりうることを押さえておきましょう。

2022年4月に中小企業でも義務化!パワハラ防止法について

パワハラ防止法が中小企業でも義務化!訪問看護でも知っておきたいパワハラの概要と対処方法

年々問題視されているパワハラですが、2020年には労働施策想像推進法(以下パワハラ防止法)が施行されたことで、会社はパワハラを防止する対策を行う義務が(大企業向けに)課せられました。また、2022年4月には中小企業もその対象として義務化されました。

義務内容には「事業の方針を明確化およびその周知・啓発」、「相談に応じ、適切な対応をするために必要な体制の整備」「パワハラの事後の迅速かつ適切な対応」「併せて講ずべき措置」といった4つがあります。

事業主の方針の明確化およびその周知・啓発

事業主の方針の明確化およびその周知・啓発とは、パワハラの内容やパワハラを行ってはならないといった内容の方針を明確にし、スタッフが周知できるようポスターやチラシ、掲示板などに掲載するといった内容です。また、パワハラを行った者に対してどのような対処を行うかという内容を就業規則等の文書にし、スタッフ周知することも含まれます。さらに「啓発」については、方針等の啓発のために研修、講習等を実施することを指します。

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備とは、相談窓口を決め、相談する場所があることを周知することやパワハラ以外の内容も相談対応すること、面談での対応だけでなく電話やメールなど複数の方法で相談できる場を設けるといった内容です。さらに対応に関する仕組み、マニュアルの整備、担当者に対する研修の実施等、相談に対し適切に対応できる準備が必要になります。

パワハラの事後の迅速かつ適切な対応

パワハラの事後の迅速かつ適切な対応とは、パワハラが起こった場合、被害者と行為者の両者に事実確認を行うことを指します。確認が難しい場合はパワハラ防止法第30条の6にある調停の申請を行い、第三者機関の介入も検討します。

事実確認ができた場合は被害者へメンタルケアやその後の対応を迅速に行います。また、加害者に対しての処置も就業規則に沿って対応します。最後に再発防止としての事実の公表などを行います。また、公表の際は個人が特定されないよう配慮する必要があります。事実確認ができた場合、被害者に対する配慮のための適正な措置を講じる必要(例えば、心身不調の回復、部署の配置転換、被害者が被った不利益の回復に必要な措置等)と、再発しないよう適切な措置を講じる義務はありますが、「事実の公表」までは求められていません。

併せて講ずべき措置

併せて講ずべき措置とは、被害者や加害者などのプライバシーを保護するため必要な対応を行い、スタッフにも周知するという内容です。また、相談したことや事実関係の確認に協力したことなどを理由に解雇や不当な扱いをしない旨をスタッフに周知、啓発することも重要です。

どうするの?パワハラ発生時の対応

上司の立場で、部下からパワハラの相談を受けるケースがあります。代表や役員、管理職など、職場における上位の立場にあるとき、パワハラの被害相談に、誠意をもって向き合わなければなりません。部下からハラスメントの相談をされたときはまず、相談者の話を受け止める姿勢を示すことが大切です。さらに話を聞く場所も、第三者に知られないように個室で行うなどの配慮が必要です。

「相談してきているから何かしらの答えを出してあげなければ」という考え方を前提にしていると、対応を誤ってしまいます。相談での対応を間違ってしまうと、そこから人間関係にヒビが入ってしまうようなこともあります。相談を受けたときに頭ごなしに否定してしまう方もいるのですが、これも絶対にNGです。また、相談者を励まそうとした発言が、原因のすり替えになってしまうこともあります。ハラスメントを「仕事に必要な指導」「励まそうとしただけ」と安易に判断することはやめましょう。指導はあくまでも相手の成長を促すことが目的であるのに対し、ハラスメントは優位的地位や立場にある人が、相手を自分の思いどおりにしたいという気持ちがあります。相手のことを考えず、自身や組織の利益を優先するのがハラスメントに該当する行為といえるでしょう。また、ハラスメントは業務の範囲を超えていることも、指導と明確に違う点です。相談者の話を聞いた後、実際にどんな対応をするかは、相談者本人の意向を確認しましょう。相談者の話を聞き、意向を尊重しつつ、事実を確認したうえで慎重に対応していくことが大切です。パワハラ発生時にはまずはしっかりと現状を把握し、その上で物理的に距離をとり、安全を確保したり被害者へのケアを行ったりすることが必要となります。

まとめ

パワハラの内容には様々なものがあり、パワハラ発生時、管理者は使用者責任や不法行為責任、債務不履行責任の3つの責任が生じる可能性があります。近年パワハラ防止法も改定され中小企業においてもパワハラの防止が義務化されました。管理者はパワハラ防止法を理解し、普段から職場の環境を気にかけたり定期的な面談を行ったりするなどして、パワハラの発生を予防するよう務める必要があります。

パワハラ以外にもセクハラやモラハラなど様々なハラスメントがあります。iBowお役立ち情報ではハラスメントについてまとめた記事も掲載しています。こちらの記事もチェックしてみてください!
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