訪問看護ステーションがつぶれる理由とは?安定した運営を目指すために必要なこと

訪問看護ステーションがつぶれる理由とは?安定した運営を目指すために必要なこと

訪問看護の需要は年々高まっています。一般社団法人全国訪問看護事業協会の2024年度の報告によると、2024年4月1日時点で稼働している訪問看護ステーション数は17,329ヶ所と過去最高のステーション数になっています。一般社団法人全国訪問看護事業協会が調査を始めた2010年以降指定訪問看護ステーション数は右肩上がりで伸び続けていることから需要の高さがわかります。

参考:令和6年度訪問看護ステーション数 調査結果(一般社団法人全国訪問看護事業協会)

しかし、一方で廃業となる訪問看護ステーションも少なくありません。なぜ需要が高い中で廃業となってしまうのでしょうか。また、訪問看護ステーション運営を継続していくにはどのような対応・対策が必要なのか。今回は、訪問看護ステーションが廃業する原因や予防策について詳しく解説していきます。

目次

訪問看護ステーションの需要は?訪問看護が求められる理由

訪問看護ステーションの廃業理由と予防策に関して言及する前に、なぜ訪問看護ステーション数が2010年以降増加し続けているのか、訪問看護の需要について簡単に触れていきます。 

2025年問題

訪問看護の需要が高まっている背景には2025年問題があります。2025年は団塊の世代が後期高齢者となる75歳に達し、医療や介護の需要が急増することが見込まれている年です。また、厚生労働省による地域医療構想においても、病院病床数の見直しや在宅医療等の充実を目指す方針となっています。

このように国では2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを最期まで継続できるように、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を目指しています。今後も地域包括ケアシステムの構築に向けて、訪問看護師の役割や期待といった需要は更に大きくなっていくと予想されます。

2025年に向けて公益社団法人日本看護協会、公益財団法人日本訪問看護財団、一般社団法人全国訪問看護事業協会の3団体は「訪問看護アクションプラン2025」を立てています。「訪問看護アクションプラン2025」は訪問看護が目指す姿をまとめたものとなります。

「訪問看護アクションプラン2025」に関する詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。

【訪問看護アクションプラン2025】地域包括ケアシステムでの訪問看護の役割

以上のような理由から、今後も訪問看護ステーションの需要は高まっていくと見られています。

生存率は低い?訪問看護ステーションの廃業率

訪問看護ステーションがつぶれる理由とは?安定した運営を目指すために必要なこと

一般社団法人全国訪問看護事業協会の2024年度の調査によると2023年度中の訪問看護ステーションの新規開業数は2,437ヶ所、廃止数は701ヶ所、休止数は291ヶ所(1)と報告されています。休止数は2022年度には減少していますが、2021年度と2023年度をみると新規開業数と同じように廃止数も増加傾向にあります 

新規開業数 廃止数 休止数
2023年度(※1) 2,437ヶ所 701ヶ所 291ヶ所
2022年度(※2) 1,968ヶ所 568ヶ所 225ヶ所
2021年度(※3) 1,806ヶ所 490ヶ所 242ヶ所

(※1)一般社団法人全国訪問看護事業協会 令和6年度訪問看護ステーション数調査結果

(※2)一般社団法人全国訪問看護事業協会 令和5年度訪問看護ステーション数調査結果

(※3)一般社団法人全国訪問看護事業協会 令和4年度訪問看護ステーション数調査結果

 

この調査からわかるように新規開業数の半数近くのステーションが廃業または休止となっているのです。また、上記の調査報告によると、2023年度中の廃業または休止となっているステーション数が992ヶ所であり、2024年4月1日現在の訪問看護ステーションの届出数は17,808ヶ所です。

このことから訪問看護ステーションの廃業率は約5.6%であることが分かります。2022年度、2023年度ともに廃業率は約4.9%でしたが、2024年4月1日時点ではわずかに増加しています。

また2024年の中小企業庁白書では、2022年度の全業種の廃業率は3.3%と報告されています。このことから全業種と比較して、訪問看護ステーションの廃業率は高いといえるでしょう。

※参考:中小企業庁 中小企業白書2024第3章 第5節 企業の規模感異動と開廃業

なぜ訪問看護ステーションは廃業になってしまうのか

訪問看護ステーションがつぶれる理由とは?安定した運営を目指すために必要なこと

では、なぜ訪問看護ステーションが廃業になってしまうのでしょうか。大きく分類すると財的要因、人的要因、その他要因の3つあります。それぞれについて詳しく解説していきます。

①財的要因
└利用者獲得がうまくできない
└財務状況が改善しない
②人的要因
③その他要因
└法令遵守ができない

財的要因

まず、訪問看護ステーションを開業後、うまく利用者獲得ができなかったり、資金繰りに躓いてしまったりと、思っていた通りのステーション運営ができず、廃業となってしまうことがあります。なぜ、このように廃業となってしまうのか、はじめに利用者獲得と資金繰りの点から理由を見ていきましょう。

利用者獲得がうまくできない

訪問看護ステーションの売上は、主に診療報酬と介護報酬から成り立っています。これらの報酬は、実際に提供した訪問看護サービスの内容に基づいて計算されます。したがって、売上を増やすためには、まず看護師一人あたりの訪問件数を増やすことが重要です。

そして、訪問件数を増やすためには、まず利用者を増やす必要があります。つまり、より多くの人にサービスを提供することが、売上向上につながるのです。

開業後の利用者獲得で必要なことは、まずは関係各所に立ち上げた訪問看護ステーションを認知してもらうことです。ただ認知されるだけではなく、何かあった際に依頼先候補として思い出してもらえるような関係性を築いていきましょう。

一朝一夕でそのような関係性を築くのは難しいと思いますが挨拶の仕方やタイミング、連絡があった際の返信スピードなどそういった部分を意識することで徐々に関係性を築いていくことができます。

しかし、そういった認知のための営業に苦手意識があったり、訪問や事務処理等で時間がうまく作れなかったりして、依頼先候補として思い出してもらえるレベルまでの関係性が築けない場合、利用者を思ったように獲得することができなくなってしまいます。

利用者獲得ができず、訪問件数を増やせないと診療報酬や介護報酬による売上を上げることも難しくなります。それらが積み重なっていった結果、資金繰りに躓いてしまい、廃業せざるを得ない状況に陥ってしまいます。

財務状況が改善しない

新規に事業を始めるには開業資金が必要であり、外部からの資金調達ができたとしても、低い事業利益率のもとでは、借入金の返済が困難となります。

その結果、事業の拡大に踏み出せず、小さな規模での事業運営を続けざるを得ないパターンとなり、売上を上げることができず閉鎖の要因となります。また、訪問看護ステーションの売上の大部分を占める介護保険や医療保険、各種公費などへのレセプト(診療報酬請求)が極めて複雑であり、正確な請求が難しいことから、事業者は知識不足による算定もれなどで折角実施した看護の報酬が得られないことが頻発しています。

多くの人が、給与が良い職場で働きたいと考えるでしょう。そのため給与を高く設定することで、人員確保がしやすくなります。しかし、訪問看護ステーションを運営するにあたって人件費が最も経営を圧迫しているのも事実です。

厚生労働省が出している令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要によると令和4年度の訪問看護ステーションの決算における、訪問看護ステーションの収入に対する給与費の割合は74.6%※と報告されています。また、同資料から令和2年度、令和3年度の収入に対する給与費の割合を見ると、年々割合が増えているのがわかります。

決算時期 収入に対する給与費の割合
令和4年度(2022年)決算 74.6%
令和3年度(2021年)決算 73.9%
令和2年度(2020年)決算 72.3%

参考:厚生労働省 令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要

人材を定着させるために無理に給与を上げてしまうと、経営難となりステーションの運営が成り立たなくなってしまうでしょう。そのため、限られた人数の中で売上を確保していくには一人当たりの生産性を上げ、正しい請求で報酬を得ることがより重要となってきます。

人的要因

訪問看護師の人員不足は、訪問看護ステーションの運営に大きく関わっています。訪問看護事業所が自治体から指定を受けるための条件の一つに、人員基準があります。人員基準では、常勤換算で2.5人以上の看護師や准看護師、保健師、助産師が必要です。必要人員を確保できないと指定基準を満たせなくなるため、ステーションがつぶれることにつながります。

前述したように、訪問看護ステーションの需要は高まっているため、訪問看護師が働く現場は多くあります。そのため、労働環境が良くなければ、より良い職場を求めて離職されてしまうことも往々にしてあります。離職が続いてしまった結果、人員基準が満たせなくなり、休止や廃業となってしまうケースもあります。

その他要因

ここまで、計画的要因・人的要因と訪問看護ステーションが廃業してしまう要因について述べてきました。計画的要因・人的要因が訪問看護ステーションの廃業の主な要因ですが、その他の要因として法令遵守ができていないことによる廃業も少なからずあります。法令遵守ができないケースは一体どのような事を指しているのか詳しく見ていきましょう。

法令遵守

訪問看護ステーションを開業するには人員基準、設備基準、運営基準が設けられています。

人員基準は前述した通り保健師・助産師・看護師・准看護師の人数が常勤換算で2.5人以上必要であること。設備基準は事務所・相談室・独立洗面台・鍵付きの書庫・防火対策が必要であること。運営基準は介護保険法に定められている基準に沿った適切な運営ができること。これら3つの基準を満たしていることが必要です。これらが満たされていない場合、登録の取り消しになる場合もあります。

また、上記以外にも意図しない不正請求や虚偽報告などに注意しましょう。不正請求だけではすぐに業務停止や指定取り消しなどにはなりません。

しかし、不正請求が繰り返し行われているなど、監査の結果悪質とみなさた場合は行政処分の対象となります。また、新聞やニュースなどで報道される可能性もあり、訪問看護ステーションへの信頼性も損なわれてしまうことになりかねません。

その他、労働基準法や個人情報保護法など一般的な法律も遵守し正しい訪問看護ステーション運営が求められます。

確認しておこう!訪問看護ステーションを運営していくために必要なこと

訪問看護ステーションが廃業になってしまう理由として、計画的要因と人的要因、その他要因の3つに分けて説明しました。これらを踏まえて、訪問看護ステーションを運営するためには何が必要になるのか5つに分けて解説していきます。

経営に関する知識を身につける

まずは、経営に関する知識を身につけることが重要です。特に、経営者が看護師等の医療者の場合は経営に関する知識が豊富ではありません。そのため、まずは経営に関することをしっかり学びましょう。また、資金がなければ事業は成り立ちません。

目先の運営だけではなく、2~3年先を見据えた資金繰りを計画しましょう。事業を継続的に行えるような計画を立案できなければ、融資を受けることが難しくなります。計画を立てる際に気をつけなければならないことは、月の売上は翌月以降に支払われるという点です。その月の売上だけで判断するのではなく、それが手元に支払われるまでの視点で見なければなりません。資金調達に関してはこちらの記事を参考にしてください。

訪問看護ステーションを開業したい、事業拡大したい経営者の方へ!知っておきたい5つの資金調達

人脈を広げる

人脈作りも重要です。人脈があると経営について学ぶ機会を得ることができます。ステーション運営をしながら、疑問点や不安を感じることもあるでしょう。そのような時に、相談できる専門家がいると安心できます。さらに、病院や居宅介護支援事業所等と人脈を結ぶことで、利用者の確保にもつながるでしょう。利用者を確保できなければ、売上を伸ばすことはできません。ぜひ、地域の医療・介護関係者ともつながりを持っておきましょう。

働きやすい環境をつくる

訪問看護を運営する上では訪問看護師の確保が必要です。そのため、入職したスタッフが退職しないよう働きやすい環境をつくることが大切です。様々なライフスタイルに合わせた職場環境をつくれるよう直行直帰や時短勤務、フレックス制度などを取り入れるのも良いでしょう。

また、離職理由の中には人間関係もあります。勤務条件だけでなく、スタッフ同士がコミュニケーションを取りやすいよう全体のカンファレンスを開いたり、相談がしやすいようメンター制度を取り入れたり、定期的に面談を行うなども働きやすい環境づくりには必要でしょう。

システムの導入

訪問看護システムを導入することで、書類作業を削減し効率化が期待できます。訪問看護は主に訪問看護と記録に業務内容が分かれて、記録業務を簡単にすることで、訪問看護に専念することができます。また、記録業務がすぐに終われば、その分休憩もできます。記録のために残業することも少なくなり、プライベートの時間を創る事にもつながります。

ノンコア業務のアウトソーシング

利用者や関連機関との電話対応など細かな事務作業はステーション内で対応が必要になります。しかし、ステーションスタッフ以外でも行える業務(書類確認作業・レセプト作業)をアウトソーシングすることで看護業務や経営管理、営業活動など本来の業務に専念する『時間』を創ることができます。 

安定したステーション運営に訪問看護専用電子カルテ『iBow』

訪問看護ステーションがつぶれる理由とは?安定した運営を目指すために必要なこと

ステーション運営を継続していくためには、安定した収益と離職をしない職場づくりが大切です。そこでおすすめしたいのが訪問看護専用電子カルテ『iBow』です。iBowでは開業前からその先の訪問看護の毎日をトータルでサポートします!そのため、iBowをご利用の新規開業ステーションと全国の新規開業ステーションの事業継続状況を比較すると、iBowご利用ステーションが3.6倍優れた結果となりました。(廃業する割合が少ない)

※厚生労働省 介護サービス情報公表システムに基づく推計。2020年度に開設した訪問看護ステーションのうち、2022年1月時点で事業を継続している割合

 

事業継続に活用できる理由1

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訪問看護の場合、売上は利用者への訪問によって生まれます。そのため、訪問件数を増やすことが売上につながります。訪問看護では訪問以外にも日々の記録や月末月初の書類作成があります。iBowはユーザーインターフェイスにとことんこだわっているため、システムが苦手と感じる方にも簡単に使うことができます。訪問先でも記入できるため、事務所での作業時間の短縮になります。また、記録書のテンプレート使用により記録のスタイルが統一され、見やすくなるのもメリットです。タブレット端末に、パソコンと同じ画面を表示させる機能もあるため、移動中のちょっとした時間でも利用者の情報を確認できます。
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事業継続に活用できる理由2

離職をしない職場づくりにiBow

現在はテレワークを推奨している企業も多くあります。 また、テレワーク以外にも保育園のお迎えや、介護や家事の時間を確保するために勤務時に中抜けの時間を設けるなどワークライフバランスを実現するために柔軟な働き方が推奨されています。iBowは事務所以外の場所で記録書の作成ができるため、介護や家事の後などに自宅で記録書の作成を行うことも可能です。また、iBowレセプトはレセプト請求の実績確定もiPadで行うことができるので訪問スタッフだけでなく、事務員のテレワークも可能です。

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まとめ

今回の記事では、訪問看護ステーションが廃業する理由やその予防策についてお伝えしました。これから需要が高まるであろう訪問看護ステーションですが、廃業するリスクが大きいのも現状です。安定したステーション運営を行い、利用者へ訪問看護の提供を継続するためにも、多角的な視点から事業全体を考えていくようにしましょう。 

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