訪問看護の労務管理7~従業員が退職する時の手続きってどうするの?覚えておきたい会社側の退職手続き~

訪問看護の労務管理7~従業員が退職する時の手続きってどうするの?覚えておきたい会社側の退職手続き~

前回の記事では従業員に支払う給与の基本的な計算方法について解説しました。
>前回記事 訪問看護の労務管理6~給与計算ってどうやるの?押さえておきたい給与の計算方法と注意点~
お金の話になり、会社を運営するイメージがさらに膨らんできたのではないでしょうか。

今回は、訪問看護の労務管理シリーズの締めくくりとして「会社側の退職手続き」について解説します。どんな形であれ、従業員が退職する時は必ず訪れます。従業員が退職する際、会社側は何をすればよいのでしょうか。はじめて退職手続きを行う場合、各種保険に関する手続きや提出書類が分からないという方も多いでしょう。いざという時に備えて事前にやるべき内容を確認しておきましょう。

目次

経営者が知っておくべき!従業員の退職時に会社側が行う手続き

従業員が退職するとなった時、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・住民税・源泉所得税など各種の手続きを会社側で行う必要があります。期限付きのものもあるので漏れのないようにしっかりと行いましょう。

 

健康保険、厚生年金保険資格喪失の手続き
退職者が加入している健康保険、厚生年金の「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」を所轄の年金事務所または日本年金機構へ提出します。添付書類として健康保険被保険者証(本人及び扶養家族分)も必要となります。提出方法としては、各事務所の窓口での提出、電子申請、郵送での提出も可能ですが、提出期限が退職した日の翌日から5日以内となっているので遅れないようにしましょう。
また、健康保険には任意継続制度があるので退職日以降も社会保険を継続したいという希望があるか退職者本人に確認しましょう。任意継続を希望する場合は退職者本人が「任意継続被保険者資格取得届」を所轄の健康保険組合か年金事務所へ提出する必要があることを退職者に案内してください。

 

・雇用保険資格喪失の手続き
所轄のハローワークへ「雇用保険被保険者離職証明書」と「雇用保険被保険者資格喪失書」を提出します。雇用保険被保険者離職証明書の賃金支払い状況は、12カ月分を記入するのが原則です。対象は離職の日以前2年間に賃金支払い基礎日が11日以上の月です。提出方法は窓口での提出、郵送や電子申請がありますが、提出期限は退職した日の翌日から10日以内となっています。記録を遡って確認する作業が必要になりますので早めに着手しましょう。

 

・住民税の手続き
退職後、退職者が住んでいる市区町村に給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届」をすみやかに提出します。在職中の住民税は給与から計算して会社が市区町村に納付する特別徴収が原則です。しかし、従業員が退職すると特別徴収できなくなるため届出が必要です。提出方法は、各事務所の窓口での提出、もしくは郵送ですが前年中に転居している場合は転居前の市区町村と転居後の市区町村、2か所に提出しなければならないので、注意が必要です。

 

・源泉徴収票の発行
退職者の当年1月1日から最終支払給与までの額で源泉徴収票を発行します。これは退職者本人と退職者が住んでいる市区町村へ提出します。市区町村への提出期限は翌年1月末までとなっており、退職者の年末調整で必要になるものですので発行を怠らないようにしましょう。

従業員の退職前に必ず確認!従業員に提出してもらう書類

従業員が退職するときは慌しくなることが多いので、以下のものは提出してもらうことを忘れないように注意しましょう。

 

・退職届
雇用保険の届出書類に退職理由を記載するため、従業員の退職意思を明確に書面で確認することが大切です。似た書類として「退職願」がありますが、こちらは従業員が会社に対して退職をお願いする書類であり、退職願を出した時点ではお願いをしているにすぎず、労働契約が解約されることはありません。会社の承諾を得る前であれば、撤回することもできます。
一方、退職届は会社が受理した時点で退職が決まるため、より厳格な書類です。提出から一定期間が経過すれば退職できることとなり、撤回はできません。民法上は退職する14日前までに意思表示すればとされているため、就業規則に「1カ月以上前に申し出る」と記載してあっても民法上の日数が優先されます。

 

・退職者本人と被扶養者いた場合のみ)の健康保険証
健康保険証は健康保険、厚生年金保険資格喪失の手続きで提出するため、退職時には退職者と退職者の被扶養者が持っている健康保険証を会社に提出してもらう必要があります。退職者が退職日までに通院する予定がある場合などは郵送で対応すると良いでしょう。

書類以外も忘れずに!退職したときに従業員から回収するもの

手続きに必要なもの以外でも退職時に回収するべきものがあります。以下のものが一般的な例ですが、会社の事情に合わせて事前に整理しておくことをおすすめします。

 

・名刺・社員証・設備の鍵
会社の従業員であることを証明するものは、退職時にすべて返却します。社員証や設備の鍵はセキュリティの観点から必ず回収が必要です。合鍵などがないかどうかも確認しておきましょう。また、退職者が業務の中で取得した社外の名刺も会社の情報資産であるため回収しましょう。

 

・機密資料
個人管理の営業資料や個人情報など機密資料に当たるものも回収しておきましょう。パソコンの中のデータなどは数も多くなりがちなので時間をかけて確認しましょう。

 

・貸与品
会社から貸与している制服や、備品、携帯電話などは会社の資産ですので回収しましょう。数が多いと返却時の確認に手間がかかるため、日頃からリストなどを作成しておくことをおすすめします。

まとめ

今回は、従業員が退職するときの手続きや、退職者に提出してもらう書類、退職時に回収するものについてお伝えしました。退職手続きは従業員が在籍している以上いつか必ず行う作業です。退職手続きをしたことがない経営者の方は今後手続きを行う際に今回の記事を参考にしてみてください。

 

これまで、全7回にわたり訪問看護の労務管理について解説してきました。従業員が働きやすい環境づくりのためにも労務管理の定期的な見直しは必要です。事業の拡大に合わせて気になるポイントも変わってくると思います。iBowお役立ち情報では、今後も役立つ情報をお伝えしていきます。

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