訪問看護の看護強化体制加算とは?【2024年度報酬改定対応】

「収益改善を目指して看護体制強化加算を算定したい」「算定要件がわかりにくい…」「届出はどうするの? 」こういったお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事では、2024年度の介護報酬改定を踏まえながら、看護体制強化加算の経営に直結する実務のポイントをわかりやすく解説します。ぜひ最後まで読んで、安定したステーション運営に役立ててください。
そもそも看護強化体制加算とは?
看護強化体制加算は2015年度の介護報酬改定において創設され、2018年度には区分(Ⅰ)が新設されました。2024年度改定では変更なく、基本的な枠組みは継続されています。この加算は、以下のような訪問看護ステーションの体制整備を評価するものです。
• 医療ニーズの高い利用者への対応
• 緊急時対応体制の確保
• ターミナルケア提供体制の整備
• 地域における人材育成への貢献
介護保険支給限度基準額に含まれるこの加算の単位数は以下のとおりです。
サービス区分 | 加算区分 | 単位数 |
訪問看護 | 看護強化体制(Ⅰ) | 550単位/月 |
看護強化体制(Ⅱ) | 200単位/月 | |
介護予防訪問看護 | 100単位/月 |
訪問看護の看護強化体制加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の算定要件
介護体制強化加算は、算定要件を満たしているとして都道府県知事に届け出た場合に、月1回加算できます。看護体制強化加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、介護予防の算定要件はほとんど共通です。共通する算定要件は以下のとおりです。
• 算定日が属する月の前6月間において、緊急時訪問看護加算を算定した実利用者÷実利用者総数が50%以上 • 算定日が属する月の前6月間において、特別管理加算を算定した実利用者÷実利用者総数が20%以上 • (介護予防)訪問看護の提供にあたる従業者の総数に占める看護職員の割合が6割以上 • 医療機関と連携のもと、看護職員の出向や研修派遣などの相互人材交流を通じて、在宅療養支援能力の向上を支援し、地域の訪問看護人材の確保・育成に寄与する取り組みを実施していることが望ましい
【留意事項】 |
看護体制強化加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは?
看護体制強化加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは、算定日が属する月の前12月間におけるターミナルケア加算の算定実績です。以下の表で具体的な違いを示します。
看護強化体制加算(Ⅰ)、(Ⅱ)の違い | ターミナルケア加算算定者数 |
看護体制強化加算(Ⅰ) | 5名以上 |
看護体制強化加算(Ⅱ) | 1名以上 |
※介護予防の看護体制強化加算はⅠ・Ⅱの区別はなく、「看護体制強化加算」になります。
★ポイント
緊急時訪問看護加算、特別管理加算、ターミナルケア加算の実績者数については、継続的に所定の基準を維持し、割合や人数は台帳などに毎月記録しましょう。 |
看護体制強化加算のQ&A
実務における疑問点について、具体的に解説します。
Q1:届出時期と実績計算について
質問:7月から算定を開始したい場合、いつまでに何の実績を届け出る必要がありますか? |
答え:7月から算定を開始する場合、6月15日までに届出書を提出する必要があります。実績としては、1月から6月までの6ヶ月間における特別管理加算と緊急時訪問看護加算の算定実績が求められます。このとき、1月から5月までは実際の実績値で計算しますが、6月分については見込み値での計算が可能です。ただし、6月の見込み値で届出を行った後、実際の結果が要件を満たさなくなった場合は、速やかに届出を行う必要があります。 |
Q2:利用者数のカウント方法について
質問:利用者数のカウントについて、以下のケースではどのように計算すればよいでしょうか? • 1月から6月まで継続して利用している利用者A • 1月のみ利用して終了した利用者B • 途中から利用を開始した利用者C |
答え:利用期間の長短にかかわらず、各利用者を1人としてカウントします。具体例として、7月に看護体制強化加算を算定する場合の計算方法は以下のとおりです。利用者Aは6ヶ月間継続して利用、利用者Bは1月のみ特別管理加算(I)を算定、利用者Cは途中から利用を開始して特別管理加算(II)を算定したケースでは、
1. 前6ヶ月間の実利用者の総数は3人となります。 このように、利用期間の長さや利用回数に関係なく、対象期間内に1回でも利用があれば1人としてカウントします。なお、同一利用者が複数回算定していても重複してカウントすることはありません。 |
Q3:人材育成の取り組みについて
質問:算定要件の「医療機関と連携のもと、看護職員の出向や研修派遣などの相互人材交流を通じて在宅療養支援能力の向上を支援し、地域の訪問看護人材の確保・育成に寄与する取り組み」とは、具体的にどのような取り組みを指すのでしょうか? |
答え:この要件は、看護体制強化加算を届け出る事業所に対して、地域の訪問看護人材の確保・育成への貢献を期待するものです。具体的な取り組みには以下のようなものが挙げられます。 • ステーションと医療機関の訪問看護事業所間での相互研修の実施 • 実習生の受け入れ • 地域の医療・介護人材育成のための取り組み など重要なのは、各地域の状況に合わせて、実効性のある取り組みを選択し実施することです。 |
訪問看護における看護体制強化加算の届け出方法
加算の算定開始に必要な届出について説明します。
届出に必要な書類
算定開始には以下の書類を準備する必要があります。
1.看護体制強化加算に係る届出書
・緊急時訪問看護加算の算定実績
・特別管理加算の算定実績
・ターミナルケア加算の算定実績
・看護職員の割合
2.そのほか都道府県が定める必要書類
※必要書類は都道府県によって異なります。詳細は各都道府県のホームページをご確認いただくか、所管の窓口にお問い合わせください。
届出先
指定権者である各所管窓口(各福祉事務所・各市町村)に届出を行います。なお、各都道府県において、電子申請・届出システムでの受付が始まっているところもあります。具体的な申請方法については、所在地の各窓口にご確認ください。
提出期限
加算の算定を開始する月の前月15日までに必ず届出を完了させましょう。
iBowなら算定要件の算出もラクラク
iBowなら、登録している利用者の情報や日々の記録から算定要件を簡単に算出できます!(Ⅰ)、(Ⅱ)それぞれの算定要件を漏れなく提示し、どの要件を満たしているのか。もしくはあとどれくらい足りないのかを一覧表で出力することができます。
iBowの「看護体制強化加算(Ⅰ)届出資料」出力画面(2025年1月17日時点)
このように、必要な情報や数字をすぐに参照できることはICT化のメリットの1つです。訪問看護専用電子カルテ「iBow」は、訪問看護の現場のみなさまのお声をもとに開発された電子カルテです。「ICT化」や「システム」と聞くと難しいイメージがありますが、iBowは本当に簡単に操作ができるのが魅力です!まずは一度、実際にiBowに触れて、多彩な便利機能を体験してみてください!
まとめ
訪問看護の現場では、適切な加算算定が経営の安定性に直結します。看護体制強化加算の算定には、6ヶ月間の緊急時訪問看護加算や特別管理加算の実績管理が欠かせません。また、ターミナルケア加算については12ヶ月間の実績管理が必要です。こうした取り組みは、サービスの質向上につながります。
本記事の情報を参考に、自ステーションの体制を見直し、要件を満たしているか確認しましょう。明日からでも始められる体制づくりを通じて、収益の安定化と質の高いケア提供の両立を目指しましょう。
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