訪問看護の特別管理加算とは?医療保険・介護保険の各算定要件を基に対象者・加算額を解説!
特別管理加算とは、医療的な管理などの特別な管理が必要な利用者に対して、計画的な管理を行うために用いられる加算です。厚生労働省が定める基準に適し、特別管理加算を算定する要件を満たした訪問看護事業所が対象となっています。
2021年度の介護報酬改定では、訪問看護に関する特別管理加算の算定要件や単位数について変更はありません。ただし、看護体制強化加算の算定要件において割合が緩和されました。訪問看護ステーション等を運営する上で、どのような算定要件があり特別管理加算の加算・減算の内容を把握すること、適切な請求を行うことは重要です。ここでは、特別管理加算の算定要件や対象者、算定額、算定する場合の注意点などを詳しく解説します。
特別管理加算とは
特別管理加算とは、医療的な管理が必要な利用者に対して、計画的に管理が行われている場合に、月1回算定する加算です。特別管理加算は、介護保険と介護予防、医療保険において加算されますが、それぞれの加算要件が異なります。ここでは、特別管理加算の分類や算定状況について解説します。
特別管理加算の分類
特別管理加算は、対象となる利用者の状態に応じて、「特別管理加算Ⅰ」と「特別管理加算Ⅱ」に分類されています。対象となる事業所・サービスは、以下のとおりです。
- 訪問看護(医療保険、介護保険)
- 看護小規模多機能型居宅介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
特別管理加算の算定状況
特別管理加算が算定できる事業所は、必要な届け出を提出し、厚生労働省が定める基準に満たした事業所のみが対象となります。これらの要件を満たし、特別管理加算を算定している事業所は、年々減少している現状があります。特に、2016年は対象となる事業所の20%以下のみ、算定しているという状況が厚生労働省から報告されています。
また、対象者の介護度においても算定状況が報告されています。要介護3以上の中等度~重症の利用者のうち、70%程度の算定率となっています。
【介護保険】特別管理加算とは?
特別管理加算の算定要件
特別管理加算は、特別な管理を必要とする利用者から看護に関する意見を求められて場合に、常時対応できる体制や計画的な管理を実施できる体制にあるものとして地方厚生(支)局支局長に届けることが必要です。利用者に対して、訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合に月1回限り加算できます。利用者の状態によって「特別管理加算Ⅰ」と「特別管理加算Ⅱ」に分類されます。
※理学療法士のリハビリテーションを中心とした訪問看護では当該管理とは言えないので算定不可
※在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態:末期ではないが持続注入器による化学療法等を受けている状態
※在宅持続陽圧呼吸療法指導管理では睡眠時無呼吸症候群(SAS)または慢性心不全患者に対するASVやCPAPは看護保険給付となる。「在宅人工呼吸指導管理料」「人工呼吸器加算2」を算定している場合は人工呼吸器に含まれるので医療保険の訪問看護となる。
※経管栄養、中心静脈栄養は特別管理(Ⅰ)に算定できる
介護保険の特別管理加算Ⅰの対象者・加算額
介護保険における特別管理加算Ⅰの対象者は、以下のとおりです。
- 在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態
- 在宅気管切開患者指導管理を受けている状態
- 気管カニューレを使用している状態
- 留置カテーテルを使用している状態
加算額・単位は、「1回500単位/月」です。
介護保険の特別管理加算Ⅱの対象者・加算額
介護保険における特別管理加算Ⅱの対象者は、以下のとおりです。
- 在宅自己腹膜灌流指導管理
- 在宅血液透析指導管理
- 在宅酸素療法指導管理
- 在宅中心静脈栄養法指導管理
- 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
- 在宅自己導尿指導管理
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
- 在宅自己疼痛管理指導管理
- 在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態
- 人工肛門又は人工膀胱を留置している状態
- 真皮を越える褥瘡の状態(MPUAP分類Ⅲ度またはⅣ度、DESIGN分類D3、D4、D5)
- 点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態
加算額・単位は、「250単位/月」です。
【介護予防】特別管理加算とは?
介護予防の特別管理加算Ⅰの対象者・加算額
介護予防における特別管理加算Ⅰの対象者は、以下のとおりです。
- 在宅悪性腫瘍患者指導管理を受けている状態
- 在宅機関切開患者指導管理を受けている状態
- 気管カニューレを使用している状態
- 留置カテーテルを使用している状態
加算額・単位は、「500単位/月」です。
介護予防の特別管理加算Ⅱの対象者・加算額
介護予防における特別管理加算Ⅱの対象者は、以下のとおりです。
- 在宅自己腹膜灌流指導管理
- 在宅血液透析指導管理
- 在宅酸素療法指導管理
- 在宅中心静脈栄養法指導管理
- 在宅成分栄養経管栄養指導管理
- 在宅自己導尿指導管理
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
- 在宅自己疼痛管理指導管理
- 在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態、人工肛門又は人工膀胱を留置している状態
- 真皮を超える褥瘡の状態(MPUAP分類Ⅲ度またはⅣ度、DESIGN分類D3、D4、D5)
- 点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態
加算額・単位は、「250単位/月」です。
【医療保険】特別管理加算とは?
特別管理加算の算定要件
特別管理加算は、特別な管理を必要とする利用者(特掲診療料の施設基準等・別表8に掲げるもの)から看護に関する意見を求められて場合に、常時対応できる体制や計画的な管理を実施できる体制にあるものとして地方厚生(支)局支局長に届けることが必要です。利用者に対して、訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合に月1回限り加算できます。
特別な管理のうち重症度等の高い場合
以下の場合、加算額は「5,000円/月」です。
- 在宅悪性腫瘍患者指導管理を受けている状態
- 在宅機関切開患者指導管理を受けている状態
- 気管カニューレを使用している状態
- 留置カテーテルを使用している状態
特別な管理を要する場合
以下の場合、加算額は「1回2,500円/月」です。
-
- 在宅自己腹膜灌流指導管理
- 在宅血液透析指導管理
- 在宅酸素療法指導管理
- 在宅中心静脈栄養法指導管理
- 在宅成分栄養経管栄養指導管理
- 在宅自己導尿指導管理
- 在宅人工呼吸指導管理
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
- 在宅自己疼痛管理指導管理
- 在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態
- 人工肛門又は人工膀胱を留置している状態
- 真皮を越える褥瘡の状態(MPUAP分類Ⅲ度またはⅣ度、DESIGN分類D3、D4、D5)
- 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している
- 新型コロナウイルス感染症のご利用者(感染が疑われる者を含む)に対する訪問看護を実施する場合
※新型コロナウイルス感染症のご利用者(感染が疑われる者を含む)に対する訪問看護を実施する場合について、当該ご利用者の状況を主治医に報告し、主治医から感染予防の必要性の指示を受けた上で、必要な感染予防策を講じて訪問看護を行った場合は、別表8に該当しないご利用者でも特別管理加算(2,500円)を算定できます。(特別管理加算の届出を行っていない事業所でも算定可能)
また、すでに特別管理加算の算定要件を満たしているご利用者の場合は、計2回算定できます。すでに算定している特別管理加算が5,000円の場合は5,000円と2,500円、2,500円の場合は2,500円を2回算定します。なお、算定にあたり、記録書Ⅱに主治医の指示内容及び実施した感染予防策について記録を残し、訪問看護療養費明細書の心身の状態に新型コロナウイルス感染症の対応である旨を記載する必要があります。
特別管理加算に必要な提出書類
特別管理加算は、「緊急時訪問看護加算・特別管理体制・ターミナルケア体制に関わる届出書」といった、必要な書類を提出することで訪問看護ステーションは加算を算定できます。この中でも、特別管理加算に関する記載内容については以下にある必要な届出内容として「有・無」にチェックをつけます。
- 24時間常時連絡できる体制を整備している
- 当該加算に対応可能な職員体制・勤務体制を整備している
- 病状の変化、医療器具に係る取扱い等において医療機関等との密接な連携体制を整備している
特別管理加算を算定する上での注意点
特別管理加算は、医療保険と介護保険(予防)の両方で加算できるものですが、算定する上でいくつかの注意点があります。まずは、医療保険と介護保険の両方において、同時に算定できないということです。その他にも、次の注意点があるため、確認しておきましょう。
- 月の途中で、介護保険/医療保険が変更になった場合でも両方には請求できません。
- 介護保険では、複数のステーションから訪問看護を受けている場合でも、それぞれで請求することができません。どちらのステーションで請求するのか、事業所間で合議する必要があります。
- 医療保険では、複数のステーションが関わっている場合、すべてのステーションで算定可能です。
- 「特別管理加算Ⅰ」と「特別管理加算Ⅱ」は、どちらか一方しか算定できません。
- 留置カテーテルなどよく膀胱留置カテーテルだけをイメージしてしまうことが多いようですが、これは経鼻経管栄養チューブ、胃ろう、腹膜留置カテーテルなどもさします。ただし、これら留置カテーテルを挿入されていれば、だれでも算定できるわけではなく、ここでは排液の性状や量の観察、水分量の調整、薬剤注入といった計画の元管理をしていなければ算定することはできません。
また、利用者の記録において注意しておくことがあります。以下のとおりです。
- 「真皮を越える褥瘡」の利用者においては、1週間に1回以上、褥瘡の状態の観察・アセスメント・評価を行い、褥瘡の発声部位と実施したケア内容を記録に残すこと
- 「在宅患者訪問点滴注射管理指導料の算定」の利用者においては、点滴注射が終了した場合、その他必要な場合、主治医に速やかに利用者の状態を報告し、訪問看護記録に在宅患者訪問点滴注射指示書を添付し、点滴注射の実施内容を記録に残すこと
特別管理加算のQ&A
ここでは、厚生労働省ホームページから、特別管理加算におけるQ&Aをいくつか引用しました。ぜひ参考にしてください。
Q&A①
質問 「真皮を超える褥瘡の状態にある者」の特別管理加算の算定要件として「定期的に褥瘡の状態の観察・アセスメント・評価を行い~(略)~実施したケアについて訪問看護記録書に記録すること」とあるが、記録について具体的な様式は定められているのか。 |
答え:様式は定めていない。
Q&A②
質問 特別管理加算の対象者のうち「ドレーンチューブ又は留置カテーテルを使用している状態」とされているが、流動食を経鼻的に注入している者について算定できるか。 |
答え:算定できる。
Q&A③
質問 「点滴注射を週3回以上行う必要があると認められる状態」として、特別管理加算を算定する場合の医師の指示は在宅患者訪問点滴注射指示書であることが必要か。 |
答え:在宅患者訪問点滴注射指示書である必要はなく、医師の指示があることがわかれば通常の訪問看護指示書その他の様式であっても差し支えない。ただし、点滴注射の指示については7日毎に指示を受ける必要がある。
こちらに引用した他にも、特別管理加算における質問が多数あります。一度、目を通しておくことをおすすめします。> 厚生労働省「介護サービス関係Q&A集」
レセプト請求もラクラク!訪問看護専用電子カルテ『iBow』&iBowレセプト
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訪問看護ステーションにおいて、医療的な管理などの特別管理が必要な利用者に対して、計画的に管理が行われます。そこで加算されるのが、この特別管理加算です。特別管理加算には算定要件や留意点などがあり、条件を満たしていることが重要です。ただ、利用者一人ひとりの状況を確認し、確実に特別管理加算を行うことは大変でしょう。
iBowでは利用者情報に「特別管理加算」を算定する旨を登録しておけば、実績として自動的に特別管理加算が登録されるようになります。もちろん、月1回しか登録できないよう自動的に回数制限チェックがかかるようになっているので加算の取漏れや入力間違いを防ぎます。
まとめ
今回は、特別管理加算の算定要件や対象者、算定額、算定する場合の注意点についてお伝えしました。医療保険と介護保険での算定要件の違いなどもありますが、算定要件を満たし、訪問看護記録をしっかり残し、適切に運営していければ大きな加算となります。
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